移民は日本を救う
不完全な膜(半透膜)で隔てられた濃度の異なる溶液は,濃度が等しくなるまで溶媒や溶質が膜を通過して移動する。国境は半透膜で,人,物,金などが通過する。高い賃金を求めて南から北へ人は移動し,安価な土地や労働力を求めて北から南へ投資が行われる。最終的には世界は均一になる。そんなことを時々夢想する。
今日の朝日新聞13面に,『「移民国家』になる日本』と題する,社会人口学者の是川夕さんへのインタビュー記事が載っていた。大変勉強になった。
先ず,是川さんのあげる数字に驚いた。日本では毎年3万人以上の外国人が永住者となっていて,現在は在留外国人の3割,80万人超が永住資格を持っているとのことである。小学校入学前の子供では,『移民的背景を持つ人』は,2015年で5.8%,2030年には10人に1人になると推計され,1クラスに2,3人は外国ルーツを持つ友達がいることになるという。永住者の賃金水準や専門職に就く割合は日本人とほぼ同じで,移民は緩やかに社会統合されている,と是川さんは考えている。
各種の調査によれば,アジアにおいて日本は憧れの国で,日本は産油国を除いてアジア域内で最も多くの人を集める国だということが証明されているという。多くの外国人労働者が,働くための在留資格という正面玄関ではなく,技能実習制度や留学生のアルバイトなどの裏口から入ってくるという,歪んだ制度が人権侵害などの問題をおこしているのは確かだが,ほかに大事な視点があると,是川さんは指摘する。外国人労働者を『騙されて日本で働いている可哀そうな人たち』とか,『差別され貧困に苦しむ人たち』という目で見ると「国境を越える熱量とダイナミズム」を理解できないという。
そして,『移民は日本を救う』と主張している。
以前ブログに書いたが,『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンド は,その著書『危機と人類 上・下』(日本経済出版社 2019年)の中で,日本の将来的な危機の一つとして社会の高齢化をあげ,移民の受け入れがその解決策だと提言している。
国威や国力は,民族や人種のものではない。そのことはすでにスポーツの世界で証明されている。
国 境
ブラジルとパラグアイの間に架かる「友情の橋」。左がブラジル,右がパラグアイ。(2001年撮影)