ふくまる
近くのスーパーの特売で,カミさんが買ってきた。茨城県が育成した米品種である。
茨城県は新潟,北海道,秋田に次ぐ,全国第4位の米生産県であるにもかかわらず,県独自の特Aクラスで全国展開する米の品種がない。
青森の「青天の霹靂」,秋田の「あきたこまち」,山形の「つや姫」,「はえぬき」,宮城の「ひとめぼれ」と,東北各県はそれぞれ著名な品種育成を誇っている。最近は隣接する埼玉県は「彩のかがやき」,千葉県は「ふさこがね」と有望品種を売り出している。
「コシヒカリ」や「あきたこまち」に頼らずに,県独自の品種で茨城米をというのが,関係者の悲願であった。1996年に,満を持して発表した「ゆめひたち」はブランド化には達することができず,県は「一番星」と並んで,2014年品種登録した「ふくまる」に力を入れている。
「ふくまる」の売りは,粒がやや大きく,ふっくらときれいに炊き上がり,冷めても粘り気が落ちないこととされている。「ふくまる」のネーミングは,その特徴から来ているらしい。早速炊いて賞味したが,なかなかのものである。これからゆっくり楽しもう。
瀬戸内寂聴さん
瀬戸内寂聴さんが亡くなった。享年99歳,白寿である。
瀬戸内さんの著書は,単行本で読んだことがない。晴美時代に書いた中編を,文芸誌で2,3読んだが,自らの不倫体験をポルノ的な筆致で描いていて,どうも好きになれなかった。マスコミに流れる風評から,たくさんの煩悩と業を背負った人のように想像し,得度して仏門に入った話を聞いた時は,その救いを仏に求めるのかと感じた。しかし,彼女を追想する記事やテレビ番組を見ると,なかなかそんなものではなく,煩悩と業を仏のフィルターを通過させて僧衣の中に貯め込み,それを発散して多くの人を魅了していたように思える。常人の尺度では測れない方である。
傑出した人が,また一人いなくなった。ご冥福をお祈りする。