羽花山人日記

徒然なるままに

イリオモテヤマネコ

2022-07-20 21:33:16 | 日記

イリオモテヤマネコ

NHK朝のテレビ小説『ちむどんどん』が,年長の重要人物が過去を語り始めて,佳境に入っている。

わたしは,沖縄には,仕事で4回行っている。そこで触れた沖縄の方々には,本土の人たちとは違う感触の温かさを感じた。そのことは別にして,印象に残っているのは,初めて沖縄を訪れた時の出来事である。

1974年,沖縄本島から石垣島を経て,西表島の琉球大学熱帯農業研究施設(当時)を訪ねた。ちょうど1975年に開催された沖縄国際海洋博の前年とあって,イリオモテヤマネコの写真を大きく中央に据えたポスターがあちこちに貼られていた。

ところが西表島に入ると,そのポスターが全く見られなくなった。研究施設の方に聞くと,西表島民にとって,イリオモテヤマネコは憎しみの対象であるという。

西表島は,東西にそれぞれいくつかの集落はあるが,その間の行き来には手漕ぎ舟によるか,石垣島を経由するしかなく,島を縦断する道路の建設は島民の悲願であった。そして,待望の縦貫道の建設が決まり,いざ着工という1973年に,この道路建設に環境保全,特にイリオモテヤマネコ保護のクレームがつき,建設は中断となった。

島民にとって,イリオモテヤマネコは,自分たちの生活の利便性や島の発展の阻害物となった。陸揚げされた研究施設の自動車は,一夜にしてタイヤがずたずたにされたという。そして,イリオモテヤマネコは難破したオランダ船から逃げ込んだ猫だという話が,まことしやかに言われるようになった。

わたしはこの話にいささか衝撃を受けた。開発と自然保護の関係は,対象とする地域の外からの開発に対して,地域の住民が生活環境の破壊として反対するのが通常であるが,西表島の場合はこの関係が逆になっている。

イリオモテヤマネコや島の生態系の重要性が,島民の納得のいく形で説明されないかぎり,縦貫道路の工事の中止は,島民にとって敵対的措置以外何物でもないのは当然である。

わたしはここに環境問題の盲点があるように感じた。

「環境帝国主義」という言葉があるが,対象とする環境がだれにとってどのような意味をもっているかを論ぜずに,その保護だけをアプリオリに主張するのは間違いであろう。

その後,西表島縦貫道路は当初の計画から海よりに建設された。そして,イリオモテヤマネコを含む島の生態系は,貴重な観光資源になっている。

石垣島のマングローブ。1974年撮影。

 

STOP WAR!

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする