羽花山人日記

徒然なるままに

耕さない

2022-09-17 20:33:49 | 日記

耕さない

今日の朝日新聞「グローブ」欄に,不耕起栽培が特集されていた。

不耕起栽培とは,文字通り土を耕起しないで作物を栽培する方法である。わたしが1981年にパラグアイに行った時は,ちょうどこの栽培法がブラジルから紹介されて,ごく一部で試行されていた。同行した元農業試験場長の方は,1万年続いた耕起による農業を否定するのかと,頭から相手にしなかった。

2001年の2回目のパラグアイ赴任の時は,不耕起栽培がすでにかなりの部分を占め,さらに普及される段階であった。

具体的には,前作の残渣のある耕地にスリットを作り,そこに種子と肥料を落とし,覆土するのが不耕起栽培で,そのためのアタッチメントをつけたトラクターを1回通すだけで,播き付けや植え付けが完了する。耕起し,砕土する手間が省かれる。

農業とは,草原や森林を切り拓いて,その場所を作物に独占させるという,ある意味で,人類史上もっとも自然生態系を改変してきた営為である。その鍵となっているのが耕起で,土をひっくり返すことによって作物以外の植物の侵入を阻止している。農業すなわち耕すことと考えてきた人々にとって,先の農業試験場長さんのように,不耕起栽培がとんでもないことと映ったのは当然である。

しかし,実際に不耕起栽培と従来の栽培方法を比較すると,決して収量的に劣るものでないことが実証され,1990年代にアメリカで普及が始まり,それがブラジルを通ってパラグアイに伝えられていたのである。

わたしがこの不耕起栽培の効果を顕著に見たのは,土壌浸食の防止である。1981年に赴任した時には,作期の中間に畑が耕起されて裸地になっているときの降雨で,パラナ川の水が流失した土で真っ赤に染まっていたが,2001年にはその現象が全く見られなかった。

そのほかに,この耕法のメリットは,トラクターを動かす回数が減ることによるコストの削減である。

最大の問題は,雑草対策である。耕起がもたらす大きな効果は除草である。不耕起栽培を可能にした大きな要因は,除草剤である。播種直前または直後に除草剤をまいて芽生えている雑草を殺し,あとは作物が茂ることによって雑草の生育を抑える。さらに,遺伝子組み換えによる除草剤抵抗性品種の登場が,不耕起栽培に大きな武器を与えることになった。

現在,南北アメリカやフランスでは,数十パーセントに上るかなりの耕地で不耕起栽培が行われているようだ。しかし,日本では試験栽培や篤志家による実践・普及が行われているが,微々たるものである。

実は,日本には福岡正信さんという,世界に先駆けて不耕起栽培を実践した農民がいたのだが,この方の思想性や哲学は,現在広まりつつあるものとはかなり隔たりがある。

「グローブ」では,二酸化炭素の土壌からの放出の削減や,土壌生態系の改善といった不耕起栽培の効果が,紹介されていた。

不耕起栽培は,焼き畑農業によるそれとは異なり,耕起を繰り返してきた耕地の上に成立している。いうならば,従来の農業の自己否定である。この農法が失われつつある耕地を蘇らせる救世主になるかどうか,注目したい。

不耕起栽培によるコムギ畑。2002年パラグアイにて撮影。

蛇足だが,この記事のおわりに,二人の方のコメントが載っている。一人は京都大学准教授で農学者の藤原辰史さん,もう一人は東京大学名誉教授で解剖学者にしてアマチュア昆虫学者の養老孟司さん。事実に即した思考の上でのコメントと,適当なつまみ食いで感じだけでしゃべるコメントとの差が明らかであって面白い。

 

ソバの花

9月16日阿見町にて撮影

ソバの花にはめしべが長くておしべが短い長花柱花と,めしべが短くておしべが長い短花柱花があり,この異型の花の間の受粉が促進される仕組みとなっている。こうして,ソバの集団は多様性が保たれている。

 

STOP WAR!

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

追い込み

2022-09-17 20:33:49 | 日記

追い込み

台風襲来を前に収穫を急ぐ。この田んぼ,出来過ぎで稲が倒れてる。豊年万作大いに結構。阿見町にて,カミさんの友人O・M夫人撮影。

 

STOP WAR!

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする