丘の上の本屋さん(映画)
息子に勧められて、Netflixで配信されているこの映画を観た。
約1時間の短編で、観終わると心が温まっている映画である。
イタリアの丘の上にある小さな村の古本屋を舞台とする物語。書棚に囲まれた部屋に机と2脚の椅子があるだけの簡素な店で、店主のリベロはかなりの年齢で、朝通ってきて店を開けると、一人でゆったりと店番をしている。
店には、隣の喫茶店のウェーターの二コラとその恋人のキアラ、ごみ箱をあさって捨てられている本を持ち込むボジャン、手元にもなくなってしまった自分の著書を探す教授といった、どこか憎めない面々が時々店に顔を出し、リベロに話しかける。
リベロは嫌な顔をせずに話を聞き、包み込むように穏やかに返事をする。訪客と交わす会話に、リベロの並々ならぬ書籍への造詣がうかがえる。
ある日、肌の色が黒く、明らかに移民の子とわかる少年が、店先に置いてある漫画を立ち読みしているのにリベロは気付く。少年の名前はエシエシ。漫画は好きだけど買うお金がないという少年に、リベロは好きな本を貸してあげるという。エシエシはミッキーマウスを借り、翌日に返しに来る。リベラは続いてピノキオを貸し与える。
このようにして、老人と少年の読書を通じての付き合いが始まる。貸し借りがあり、読後の感想のやり取りがあり、それが映画の中心の筋立てになっている。
ちなみに、エシエシが読んだ本は、上記2冊のほかに、イソップ物語、星の王子様、白鯨、密林の医師シュヴァイツァー、アンクル・トムの小屋、白い牙、ロビンソン・クルーソー、ドン・キホーテの、合計10冊である。
読後の二人の会話には、「心底本好き」の雰囲気があふれている。リベロ役のレモ・ジローネ、エシエシ役のディデー・ローレンツ・チュンブの抑えた演技が素晴らしい。本を抱えて公園のベンチに駆けていくエシエシの姿には、胸を熱くさせられる。
死期を悟ったリベロは、エシエシに『世界人権宣言』の冊子を渡し、書かれていることの大切さを言い聞かせる。
本を持って古本屋を訪れたエシエシは、「店主死亡につき閉店」の掲示を見て愕然とする。
そこに現れた二コラから、エシエシはリベロからの手紙を受け取る。公園のベンチで開いた手紙には、店にある本で欲しいものがあったらエシエシが自由に持ち出せると遺言したことが書かれていた。
時折カメラが写し出す、村から眺めた初秋の丘陵の鮮やかな光景が目を慰めてくれる。
本当にいい映画だ。
校 歌
夏の甲子園高校野球が終わった。
決勝戦は息詰まる熱戦の末、京都国際高校に軍配が上がった。
流れるハングルの優勝校校歌に、新しく吹き込む風を感じた。
STOP WAR!