逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

なぜ続くスペースシャトルの愚行

2008年03月12日 | アポロ11号・宇宙開発

昨日11日、無事日本人宇宙飛行士・土井隆雄さん(53)を乗せた米スペースシャトル「エンデバー」の打ち上げが成功。
国際宇宙ステーション(ISS)に設置する日本実験棟「きぼう」を搭載した米スペースシャトルは、ケネディ宇宙センターから打ち上げられた。帰還は26日午後(同27日午前)の予定。

何はともあれ無事の打ち上げを皆様と喜びたい。 
後は、恥も外聞も無く、神でも仏でも鰯の頭でも何でも良いから、何事も無く全員が、ケネディ宇宙センターに無事帰還する出来ることを祈らずには居られない。

スペースシャトルとは、アポロ計画の後を継いだ、人類の夢、偉大なアメリカを具現する象徴的存在で、面子の塊のような代物。

しかし、夢の現実とは大違いで、シャトルには信じられないような、身の毛もよだつ恐ろしい実績と、歴史が有る。
建造された五機中二機が空中爆発して、現在は3機。
機体が空中分解して機体が失われる確率は40%にも達している。
今回はまだ無事帰還していないので二分の一成功だが、それを入れても120回程度の飛行で二回の爆発事故では事故率は、60回飛べば一回は生還できない恐るべき確率。

スペースシャトル事故が単なる宇宙の不幸な事故の一つで済むなら、宇宙飛行士には気の毒だが、なにも私が心配するほどのことではない。
これまでの事故の例では悲劇は、其れだけでは、済まなかった。



一回目の悲劇。
みんなの目の前で自惚れの塊り、自慢の玩具(チャレンジャー号)が爆発。
すると、傷ついた面子回復の為に、衆人環視のなかで暴力を揮う(リビアのトリポリを巡航ミサイルで空爆して、カダフィ暗殺を目論む)



二回目の悲劇。
普通この様な無様な真似は繰り返す訳には行かない。
原因は、発射時の個体燃料補助ロケットの不備であるとして完全に問題解決。?
しかし、今度は絶対安全と公言していたコロンビア号が、またも大気圏再突入時に空中分解して、アメリカ南部一帯に部品の雨を降らしてしまった。(アメリカの面子が丸つぶれ)

すると、中東を知っている全ての識者が、絶対に失敗すると断言する『イラク戦争』に突入する。(バクダット空爆、宣戦布告なしの地上軍の進攻)
中東専門家ほど、アメリカが始めた、イラク戦争の目的が判らないそうです。

巨大な自尊心が、異様に壊れやすく出来ている、筋肉自慢のマッチョ男が一般大衆の目の前で大恥をかく。
すると、当然マジ切れ。傷ついた自尊心を回復する為に、自分より弱い(絶対に勝てる)女子供に対して、公衆の面前で暴力を揮う、乱暴狼藉。
壊れやすいガラスの自尊心を持った、超タカビーでマッチョなDV男、アメリカ合衆国。



三回目の悲劇。
イラン先制攻撃に反対していた、米国中央軍司令官(海軍大将)が辞任に追い込まれた模様。
米国による、イランへの先制攻撃に強く反対していたウィリアム・ファロン(William Fallon)海軍大将が、ブッシュ大統領との意見の相違から辞任をする。
ファロン司令官は、一年前に中央軍司令官に就任したばかりの辞任劇であった。
ブッシュ大統領は「諫言の士」を退けて、イラン先制攻撃を実行する腹を固めたのかもしれない。

今現在地球の周りを飛行しているエンデバーが、帰還時に安全に生還できなければ、間違いなく、イランへの先制攻撃をアメリカ軍は実行するでしょう。
そして、中東全域を巻き込んだ対テロ最終戦争に、全人類は否応無く巻き込まれる。





『20世紀の間違いを21世紀まで持ち越したスペースシャトルの愚かさ。』

『安全性』

コロンビア事故の直前までスペースシャトルは100万回に一回の事故率で、航空機の安全など問題にもならない数字と説明していた。
NASAはスペースシャトルの飛行で,搭乗員の命を脅かす深刻な事態が発生する確率を,チャレンジャー事故の時点で,400ないし500回に1回程度であると見積もっていた。
実際にはこの時、113回の飛行で2回の致命的事故を起こし,この時点での成功率は98.2%、、57回に1回以上の致命的事故発生率だった。


『経済性』

当初1回の運行コストは30億円とされていたが,実際には500億円を超え,コロンビア事故からの復帰以降は、800億円を超えるものと見られている。
因みに使い捨てロケットは一回80億円以下程度で済む。

当初の運行回数は年間50回を考えていたが,実際には最大でもチャレンジャー爆発事故前年の年9回で、平均では年2回程度。
当初目標と達成した実績を比べれば,スペースシャトルは明らかに大失敗作だ。

 

『設計上の問題点』

設計を見ていくならば,スペースシャトルは失敗すべく設計されていたことが分かる。

1)再突入時の最後の15分にしか役立たない「巨大な主翼』(大きく突出している為に弱点ともなる)を、軌道上まで持ち上げる矛盾。

2)200気圧もの高圧燃焼を行う主エンジンを再利用することの無理。
新品より、リサイクルの方が高くつく場合が有るのは、ペットボトルや再生紙のような失敗例に事欠かない。

3)人間と貨物を同時に打ち上げる無茶苦茶。
これでは如何しても採算面での貨物輸送のコストアップは避けられない。

4)打上げ初期の固体ロケットブースター燃焼時には脱出が不可能という人命軽視。
最初のコロンビア事故で証明されたが、以後も改良されなかった。

5)再突入時に高温となる機体下面に前脚,主脚,液体酸素・液体水素配管の接続口 と,5カ所もの穴を開ける愚劣な発想。
スペースシャトルが、初めからロケットと航空機のキメラのような複合物で、両者の悪い面が合わさった結果生じた、企画段階での失敗例。

6)機体とエンジンは再利用,タンクは使い捨て,固体ロケットブースターは海上回収という、無駄に複雑なシステム。
構造が簡単なほど故障が少ないが、スペースシャトルはその理念の真逆。

7)機体を再使用する考え方の為に、重量比で70%ものスペースシャトル本体を無駄に宇宙空間まで持ち上げて、また持ち帰る愚行。

どこを取っても成功する要素が、最初から全くない完全な失敗作だった。

 

『騙し続けるアメリカ』

アメリカはそのスペースシャトルを,「新たな宇宙時代を拓く輸送システム」として世界中に宣伝した。
世界はアメリカの宣伝にだまされた。アメリカ自身も自らをだました。
今もだまし続けている。
NASAのホームページにはどこにも「シャトルは失敗作だった」とは書いていない。

1984年から計画検討が始まった国際宇宙ステーション(ISS)は,24年後の今も完成していない。
計画時には最新の考え方だったが、完成までに30年の歳月を無駄に浪費すれば、世の中の方が変わってくるのは致し方ないところ。

日本の諫早湾の干拓の愚行の、国際宇宙版がISSだとの噂も有る。

現在も、未完成のISSを支えているのは,ロシアの「ソユーズ」有人宇宙船と「プログレス」貨物輸送船,そしてそれらを打ち上げる「ソユーズ」ロケットだ。
冷戦時代の敵が,ISSの命をつないでいる。




『スペースシャトルの悪夢と残された課題』

(1)なぜアメリカはスペースシャトルのようなシステムの開発に乗り出してしまったのか。

(2)なぜそれを新時代を拓く画期的システムと宣伝し,チャレンジャー事故以降も態度を変えなかったのか。

(3)なぜ,世界中はアメリカの宣伝にだまされたのか。

(4)真実を見抜くにあたって我々には何が足りなかったのか。

(5)無批判にスペースシャトルを信じた結果,我々は何を間違い,何を失ったのか。

(6)スペースシャトルが大失敗作と誰の目にも明らかになった今,我々はどのようにして未来への計画を取り戻し,宇宙を目指す動きを立て直すべきか。

現在、騙された私達みんなが、真剣に反省する時に来ていることだけは確からしい。

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11 コメント

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ソ連の技術者がこだわったのは (kaetzchen)
2008-03-12 20:38:06
とにかく,ひたすら頑丈な機体を作る,この一点です.品質管理工学ではアメリカに一歩遅れていたものの,無人ロケットや動物ロケットなどでの実験で失敗に忠実に学んだことが,ソ連製ロケットの安全性を抜群にしている.

また,アメリカの場合,ロケット発射場が2つとも台風の通り道にあるため,気象条件によってロケットの発射日時がずれることが多くなることも欠点として言えるだろう.ソ連の場合はカザフスタンの砂漠の中.砂嵐が少ないところをわざと選んで発射場にしてるから,全天候型でかつエンジンが巨大で排出口が円形に並んでいる安定なロケットを打ち上げられる.

アメリカのサターン型ロケットはえんぴつ型だから発射台が自動的に倒れる仕組みにしないと正常に打ち上げられないのだ.それで,ソ連のロケットを真似て,スペースシャトルはエンジンをたくさん積んだ設計にしている.ところがヘンに「リサイクル」思想で切り離したりするから,打ち上げ中の姿勢制御が必要になってしまう欠点も出てしまう.

こうして考えてみると,宇宙ステーションを運ぶために特化された宇宙船と人間を運ぶための宇宙船とに特化させたソ連の技術は,今になってみれば最新式の品質管理がなされていたと言えるのではないだろうか.宇宙船を打ち上げるのはショーではない,国家の予算をぶち込んで行う事業であるという概念が NASA にはないんじゃないかしらん.
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三公社五現業 (kaetzchen)
2008-03-12 20:49:17
という言葉を40歳以上の人は小学校で何回も覚えさせられたに違いない.三公社というのは電電公社・郵政公社・専売公社である.つまり,国によって「民営化」され,組合も解体させられてしまった国有企業である.この三公社の組合は旧社会党の支持母体だったため,見事に社民党は得票数が落ち,一部は民主党へ流れていった.

NASA もある意味ではこれと同じことが言える.本来国有企業だったはずの NASA が商売のために民営化され,国家のためにショーを打つ,芝居を打つ如何様師となってしまった典型なのではないだろうか.国鉄がJRになってから非常に多くなった事故にも同じことが言える.
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おっとミスった(笑) (kaetzchen)
2008-03-12 20:53:12
三公社は日本国有鉄道・日本専売公社・日本電電公社でしたね(笑)

ついでに五現業が郵便・国有林野・印刷・造幣・アルコール専売でしたわ.

人間の記憶力って,意外といい加減なもんだな.中学入試の時にはすらすら出て来たのに.(+_+)☆\ばき!(--;)
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携帯電話機のフインランドのノキア (ブログ主)
2008-03-13 09:24:49
時代遅れと思われていた、旧ソ連の技術が、最新鋭の夢のスペースシャトルより、今でも役に立っている。

新しい最新技術が何でも良いとは限らない。
最新鋭の色々な機能が付いていて、何でもできる日本製の高性能携帯電話機は、海外では全く売れない。
世界シェアでは丈夫で長持ちして価格が半分のNokiaが40%以上の断トツの一位。

スペースシャトルとは政治家の頭の中だけに有る夢の実現だが、何しろ欲張りすぎて大失敗した典型例。
規模は小さいが、東京の石原慎太郎の新銀行騒ぎと良く似ている。
『アイデア倒れの、アホ企画。』
失敗を認めないから、いくらでも恥かくし、損害も膨らむ。


人間あんまり欲張らず、あれもこれのではなく、これだけはと、一つでも良いから頑張るのがよい。
人でも、何でもできる万能人間はレオナルド・ダ・ヴィンチぐらいで、大概は器用貧乏で大成しないみたいですよ。
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確かに器用貧乏かも(笑) (kaetzchen)
2008-03-13 14:49:17
先日,メガネ屋で第一外国語は何を選択されました?なんて話になって,ロシア語ですと言うと,普通はフランス語かドイツ語でしょうと返され,いえドイツ語は受験で使ったんですよと笑うと,何だこの人はという目で見られました(笑) 実はNHKのラジオ講座で初級はさらっていたので優が取れたというとますます変人扱い.高校時代は受験勉強はされなかったのですかと言われると,親の建築設計事務所の手伝いで姉歯してましたから,ドイツ語だけしましたというと,あっけに取られました(笑)

そしてメガネ屋の店員曰く,私も英会話なんかがぺらぺらできたら良いと思ってるんですよと.そこで一言アドバイス,仕事で英語を使ってますか? 使ってなければ必要のない言語は忘れてしまいますよと言うと,なるほどと納得されました(笑)

確かに教科書は英語で,レポートも英語で,留学先も英語圏だったから,TOEIC は 800 over してるけど,私から見るとそれが何だって気がしたりします.つまり TOEIC や英検のために受験勉強するのは時間の無駄.人から見ると万能人間とか聖徳太子と言われる私でも,器用貧乏ということだけは自覚してます(笑)
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スズキの軽自動車がバカ売れ (kaetzchen)
2008-03-13 15:03:17
中国やインドや中東諸国で,中産階級が段々と増えたおかげで,いま 100万前後で買えるスズキやダイハツの軽自動車がバカ売れしているんだそうです.

特にインドではカースト制度が崩壊して,工業地帯ができ,それこそ北京のような大気汚染が起きている所もあるそうです.当然,大金の給料を手にした人々は一生懸命に貯金をして,ボーナスを頭金にして軽自動車を買い,巨大な冷蔵庫も一緒に買って,土日にショッピングセンターへ買い出しに出るような生活に移行しつつあるのだそうです.

北京は大気汚染が激しいからマラソンに出場しないと言った陸上選手がいるそうですけど,発展途上国も段々と文明化による悪弊へと落ち込んでいくのでしょうか.
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頑張れエンデバー (waパパ (waから改名))
2008-03-13 21:30:24
ブッシュ大統領、いや、米国は国家の威信にダメージを受けたと感じると、他国を攻撃する国のようで、9.11後はアフガニスタンを、コロンビア帰還事故後もイラク攻撃です。
アカデミー賞、長編ドキュメンタリー受賞のボーリング フォア- コロンバインを監督したマイケル ムーアは「インチキな選挙で選ばれた偽者の大統領がでっち上げの理由で戦争を始め、国民を戦場に送り込んでいる」と発言したのは痛快でした。
きな臭い世界情勢から、ナショナニズムが台頭してくるのでしよう。
国内でもテロ対策法、有事立法などが成立し、9/22には第2次小泉改造内閣が成立スタートしました。
という書き出しで議案書を製作したことを思い出した。
スペースシャトル(エンデバー)が無事に帰還できることを、そしてブッシュ大統領に不幸が訪れませんようにお祈り致します。
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祈、エンデバー無事帰還。 (ブログ主)
2008-03-14 09:30:50
私は無神論者なんですが、スペースシャトルの運命と、人類の運命がリンクしているとなると、恥も外聞も無くキリストでもアラーでも仏陀でも何でも良いから、祈りたい心境ですね。

でもブッシュに不幸が訪れると、後釜はあのチェイニーですよ。
う~ん。こちらの方は何とも判断がつきかねる。
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運命がリンク?(^^;) (kaetzchen)
2008-03-14 13:01:32
うーん,「スペースシャトルの運命と、人類の運命がリンクしている」なんて言われると,それはちょっと違うでしょうと言いたくなりますよ.

スペースシャトルなんて,所詮は人体実験の宇宙船.既に減価償却を過ぎたおんぼろ,いつ爆発してもおかしくない代物です.

本来の意義はアメリカとロシアが共同開発した宇宙ステーションにある訳で,2大国が同じ図面をもとに,同じ規格の宇宙船を組み立てられたことがもっとも大切なんじゃないかなと私は思いますけどねぇ.人類の運命という言葉はこれにリンクさせるべきでは?

ネオコンのあくどさは大統領選挙が終わればどんどんマスコミに出て来ますから,今はほっておけば良いんじゃないかなと私は楽観的に見ています(笑)
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二度あることは三度ある (ブログ主)
2008-03-14 15:00:34
60回に一回は失敗する高率。
しかも失敗すると、それだけ(自己責任)ではすまない。
何しろアメリカは、壊れやすいガラスの自尊心を持った、超タカビーでマッチョなDV男とそっくり。

アメリカ合衆国の核心部分は軍産複合体(政府+軍部+CIA+企業)ですが、ご存じのように米国の軍需産業と宇宙産業は一心同体の関係。

宇宙の失敗は軍事作戦でカバーする。
慎重派のファロン中央軍司令官が辞め、イラン攻撃はやりやすくなっている。

エンデバーの無事帰還が無ければ、中東大戦争は確実に勃発する。
乗員の7人の死が、最低でも数十万人以上、最大では第三次世界大戦で数十億人の死の呼び水になる。
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