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ケイジロウ。
俺の映画好きの影響は、
映画狂いの親戚のおいさんからや。
特に、
黒澤明がダイのごひいきで、
「七人の侍」の悪口言おうもんなら、
二週間ほど、
不機嫌になるほどやった。
そんなおいさんが、
高校時代に見た映画、
「わが青春に悔いなし」は、
その感動が、
脳髄を直撃したとかいう、
訳のわからん誉めようやった。
この映画は、
戦時中に、
資産家の出ではありながらも、
社会主義の野毛と言う青年に一途に恋して、
結婚した、
女性の話し。
結婚相手は、
特高警察(戦時中の非国民を取り締まる組織)で獄死。
やけど、
この女性は、
相手の男の実家に行く。
当然、
非国民やから村八分。
それで、
人目を恐れて、
夜中の農作業。
が、
女性は、
「ウチの人は後ろめたいことはしていません」とか言って、
堂々と、
真っ昼間の農作業。
(揺れる木の葉や草に人の嘲り声をかぶせた黒澤明の演出💯‼️)
酷暑の中、
意識もうろうとしながら、
愛する男のことを思い、
「わたしは野毛の妻です。わたしは野毛と妻です」と呟きながら、
農作業する女性(演じるのは、よっぽどの映画マニアかジジイしか知らない、原節子)の姿に、
おいさんは涙した。
そんなおいさん。
高校の体育で、
町内一周マラソンがあった。
完走しない者には単位あげないと言う教師の言葉に、
泣く泣くマラソンするおいさん。
が、
マラソン苦手なおいさんは、
驚天動地にキツイ😩
しかも、
季節外れにその日は暑かった。
おいさんは、
気をそらそうと、
大好きな映画、
「わが青春に悔いなし」の、
苦しみながらも自分の信念つらぬく原節子を思い浮かべた。
「わたしは野毛の妻です。わたしは野毛の妻です」。
この言葉が心によぎった。
が、
心によぎったのはエエんやけど、
あまりのしんどさに、
この言葉を呪文のように、
口ずさんだ。
多くの町の見物人の前で、
おいさんは、
苦しみながら、
「わたしは野毛の妻です。わたしは野毛の妻です」と呟いて走ったという。
ケイジロウ、
いくら映画好きでも、
場をわきまえて行動しよう。
でないと、
こういうハズいことを経験する。