大腸癌、脳梗塞、コロナ感染。
これが彼の自慢話でした。
私は訪問してリハビリを提供しています。
80代の男性は闘病録を淡々と語ってくれました。
大腸癌に罹患後ストマ(人工肛門)となり、脳梗塞で右片麻痺、コロナ感染で救急搬送されています。
話し終えた後、真顔で「今日はごめんな。なんか自慢話が多くなって」と言われました。
私は大きな声で笑ってしまいました。
年配の男性でいかにもの顔をして古傷を自慢する人はよく見かけます。
何針縫った。死ぬかと思った。得意気に話す人は珍しくありません。
しかし、本当に死ぬかもしれない病気や死ぬほど辛い闘病生活を表情も変えず自慢する人に初めて出会いました。
「こんな病気をしても今元気でいるのは運がいいからかな」
笑顔で言われました。
病気をしていなければもっと仕事をやりたかった。
退院してすぐはもう駄目だと思った。
そのような内容も出てきましたが、最終的には“運がいい”と自慢しています。
『事実などない、あるのは解釈だけだ』
これはニーチェの有名な言葉です。
起きた事実は同じでも運がいいと自慢できれば、嘆いてばかりいるより幸せは大きいように思います。
辛いど真ん中の時は解釈する余裕はないです。
しかし、辛いの後に少し余裕ができた時にどう解釈するかは自分で決められるという事ですね。