時効の効力
時効の遡及効
時効が完成されて援用されると、消滅時効の場合は権利は消滅し、取得時効の場合には権利が取得されることになります。取得時効の場合には、その反射として相受け容れられ無い権利は消滅しますが、以上の効果は時効の進行の発生した時点まで辿って効果が生じることになります(民法第144条)。
例えば、消費貸借が消滅時効の完成し援用した場合、その効果はその消費貸借の弁済期に辿ることになる。したがって、弁済期以降の利息は支払わ無くとも良いと言うことになります。
土地に取得時効が完成し援用された場合には、その土地から生じた果実や損害賠償の問題は如何なるのか?各自考えて貰いたい。
時効の援用
時効の援用とは、時効の利益を受けると言う意思表示をすることです。援用をすると権利の得喪が生じると考えられます。援用の方法は裁判上のものでなければならないのか?
民法第145条では援用権者を当事者としている。この当事者の範囲は?判例の立場は時効を援用することによって「直接利益を受ける者」としている。では、当事者?である債務者の債務の担保として自分の土地を抵当に入れた「物上保証人」は、判例で言う「直接利益を受ける者」に相当するのか?これを肯定した判例があります(最判昭和42年10月27日民集21巻2,120頁)。それでは、上の「物上保証人」が第三者にその土地を譲渡していた場合には、その第三者も果たして「直接利益を受ける者」として扱われるのであろうか?
前述の「物上保証人」が時効を援用した場合には、その人自身の負担は免れますが、つまり、抵当権は無くなりますが、債務者が債務を免れることは無いのです。これを援用の相対効と言います。ただ、「連帯債務」については特別の規定があります(民法第439条)。
援用の時期
このことは屡裁判上で問題になります。第一審で援用し無くとも、第二審で援用は出来ますが、上告審で援用することは出来無い(大判大正12年3月26日民集2巻182頁)。学説もこの判例と同じ立場に立つ。時効に掛かった権利が援用され無い儘確定した後に、別訴で援用することが出来無いとされている。
時効の利益の放棄
①時効の利益の放棄の意義
時効の利益は、時効完成前には放棄することは出来無い(民法146条)。
②時効完成後の債務の承認
時効の完成は「知ら無かった」とは言え無いと言うのが判例の立場である。そうで無ければ民法146条は有名無実となってしまいます。
上とは違った論拠としては、いったん債務を承認した以上、後になって時効を援用することは「信義則」に反するとした(最判大法廷昭和41年4月20日民集20巻702頁)。この判示は「時効の利益の放棄」と言うものより、「時効の援用権の失効」と考えたものである。
この「時効の利益の放棄」の効力は、「時効の援用」と同じく、相対的なものである。
債務の承認があった場合と雖も、「消滅時効」は改めて進行することになる。
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