法人の設立
法人には一定の制限の下に人(自然人)と共に私権が与えられる。法人か如何かを見分けられ無いならば、思わぬ損害を与えられる人も出て来よう。しかも、法人は生まれながらに私権を享有する自然人とは違い、その資格は法で与えられるものであるのだ(民法第33条)。私益を目的とせず何らかの形で世の中に役立たせることを目的で設立される法人を公益法人と言う。公益法人を設立させるには主務官庁(都道府県公益認定機関)の許可を受けなければなら無い(民法第34条)。公益法人には社団法人と財団法人があり、この種別は後に明らかにするが勝手に使われては混乱が生じてしまうので、公益法人で無い団体がこれ等と間違えられそうな名前をつけてはなら無いことにしている(民法第35条)。外国法人とは外国に本拠地を置き、日本でも活動しようとする法人のことを言います。外国法人を日本の法人と同様な認め方をするわけには行きません。行政庁による管理監督が行き届き難いからです。外国法人の成立を、政府や地方公共団体のような行政機関や、一般企業、そして法律や条約で特別に認許された外国法人に限って認められると言うことにしています(民法第36条1項)。 外国法人が一旦認可されると日本の法人と同様な私権が与えられるのですが、外国人が享有出来無い権利(民法第36条1項)やおよび法律または条約によって制限されている権利については、私権を有し無いと言う限定があります(民法第36条2項)。
?社団法人・・・人が集団として活動する時の能力を信じて認められた法人。社団法人は定款と呼ばれる目的・組織・業務などを定めた根源的規則を作製しなければなりません。その内容は①目的、②名称、③事務所の所在地、④資産に関する規定、⑤理事の任免に関する事項、⑥社員の資格の得喪に関する規定を最低事項として任意の決め事も定められるのだ。任意の決め事も法的手続きの対象とされます(民法第37条)。此処での社員とは従業員のことでは無く、法人の構成員のことを言います。定款の変更は社員の三分の二以上の賛成が無ければなされないのですが、社団の憲法である定款でその妥当な割合を決めておくことも出来ます(民法第38条1項)。定款は公示されるものであり、監督官庁の管理監督の諮詢の対象ともなることから、その変更は主務官庁の認可を受けなければなりません(民法第38条2項)。
?財団法人・・・一定の目的のために結合された財産の集合を社会に役立てようと一定の目的を持って結成された法人。財団法人にもその設立時に作らなければなら無いものとして寄付行為と言うものがあります。その内容は①目的、②名称、③事務所の所在地、④資産に関する規定、⑤理事の任免に関する事項であり、任意の事項を付け加えることが出来ることも定款と同じです(民法第39条)。財団法人の目的や資産管理の規定は財団の根幹を成す重要規定なので、これらが欠けていれば財団法人を成立させるわけには行きませんが、設立者の過失によって名称、所在地、理事に関する事項が寄付行為の規定に欠けていたとしても利害関係人や検察官からの請求で裁判所がそれらの補充が出来るとした(民法第40条)。財団法人は財産の財団化されたものの運営を通じて活動することを認められた団体であり、この財団の設立は財産の寄付無しにはなされないのである。そこで、生前の処分での寄付行為については贈与の規定に反するような処分以外には贈与の規定が適用されることになるのです(民法第41条1項)。しかし、贈与の規定を適用することになれば、寄付した財産に瑕疵があった場合に提供者が悪意で瑕疵を黙っていた場合は責任を負うことになります(民法第551条1項)。遺言で寄付行為を行う場合、総ての財産を寄付するなどと言うことであれば、相続人は路頭に迷ってしまいかねないこともあり得る。そこで、遺族に一定割合の財産を遺留分(民法第1028条1、2項)。として残しておくためにも、このような場合には遺贈の規定を適用することにされたのだ(民法第41条2項)。
?法人の能力責任・・・法人の目的や権限を公示することが相手方の保護に繋がることから定款や寄付行為の存在価値があるとも言える。誰が、法人の活動や運営に権限や責任があるのか、法人自身の権利や義務の範囲は如何なるものなのかを知ることで、法人との付き合いが出来るのです。そこで、法人は定款や寄付行為で決められた範囲内で運営や活動の権利を得、義務を負うとされている(民法第43条)。しかし、この規定は営利法人の場合は緩やかに解されることになっています。また、この条文に反する行動をしたからと行って、直ちにその行為が無効となるとは限りません。法人の運営や活動は理事や仮理事、特別代理人、清算人などが代表してなされる。これ等の者が彼らの職務とされることで他人に損害を与えることがあれば、法人自身がその責任を負うとされている(民法第44条1項)。勿論、代表行為をした理事なども法人と連帯して責任を負う。法人が定款に定められた目的を逸脱した行為をして他人に損害を与えた時は、その逸脱行為をすることを議決した社員及び理事やその逸脱行為をした理事その他の代理人は連帯してその損害を賠償する責任を負うのだ(民法第44条2項)。
?法人の登記・・・法人には社会的責任があり、特に、公益法人はそもそも社会的貢献を目指して設立されたものであるのだが、それを運用し、そこで活動する人達が何時も総て正しく判断をし行動するとは限ら無い。そこで、法人と関りを持つに至る人が、法人について様々な事を調べ、事前に法人を理解しておくことが肝要となる。また、法人にとっても、それと取引したものに対して法人自身の権利等を主張するための対抗要件ともなるのだ。そのことを実現するものとしての公示方法が法人登記があるのだ。法人はその設立の日から主たる事務所では二週間以内に、その他の所在地においては三週間以内に登記をしなければなら無い(民法第45条1項)。法人の設立登記の登記事項は①目的、②名称、③事務所の所在地、④設立が許可された日、⑤存続時期が定められた時はその存続時期、⑥資産の総額、⑦出費の方法を定めた時はその方法、⑧理事の氏名及びその住所である(民法第46条1項)。これ等の事項に変更があった時は、主たる事務所の所在地では二週間以内、その他の事務所においては三週間以内に登記を必要とする(民法第46条2項)。理事の代表権に変更があった場合には、そのことを公示しておかなければ法人と関った者とにトラブルが起きることにもなり、損害を与えかねず、また、法人自身も損失を蒙ることにもなり兼ねない。代表権の変更事項としては、①理事の職務を停止し、②その職務を代理する者を定める仮処分命令、又は③その仮処分命令を変更し、若しくは④取り消す決定があったことが挙げられる。この登記についても、主たる事務所とその他の事務所では夫々、二週間、三週間以内に登記されなければなら無い(民法第46条3項)。これらを怠ると民法第84条の3の1項1号によって罰則を受ける。法人の設立の日は主務官庁の許可を得た日で、登記をすることで設立する。法人が法人たらんと他人に主張する為には登記を必要とする(民法第45条2項)。成立後に新たに事務所を設けたときには三週間以内にその所在地で登記をすることが必要であり(民法第45条3項)、これにも罰則がある(民法第84条の3の1項)。以上、設立の登記(民法第45条1項)や各登記事項(民法第46条1項各号)に変更があった場合の変更の登記(民法第46条2項)、更には、法人の代表者の職務に関する各決定があったことの登記(民法第46条3項)の登記事項で、加えて、監督官庁の許可が必要なものの登記期間は、その許可が長く掛かる場合も多いので、その許可が届いた時点から起算する(民法第47条)。法人が主たる事務所を移転した時は二週間以内に新旧両事務所において夫々の登記をする。旧事務所については移転の登記、新事務所に対しては設立登記に記載された事項(民法第46条1項各号)の登記しなければなら無い(民法第48条1項)。法人が、事務所以外の事務所(いわゆる支社や支店)を移転した場合は、旧所在地で3週間以内に移転の登記をしたうえで、新所在地で4週間以内に設立登記の記載事項に掲げる事項(民法第46条1項各号)を登記しなければなりません。同一の登記所(法務局等)の管轄区域内で事務所を移転した場合は、その移転だけを登記すれば足りる(民法第48条3項)。これら移転に関する登記についても罰則規定がある(民法第84条の3の1項1号)。登記に関する事項の説明は手続き条項ばかりで私も覚え切れませんし、うんざりしますが、もう一つ頑張りましょう。次は外国法人の登記です。外国法人の登記と雖も、以上の日本法人の登記と粗変るところがありません。違いの一つは外国法人の自国で登記事項の変更があった場合には、その通知が到達する諸手続きが煩雑で時間が掛かる場合があるので、その変更の通達が到達した時点から登記期間を計算しなければなら無い(民法第49条1項)。外国法人が日本で事務所を開業しようとも登記が無ければ認められ無い(民法第49条2項)。これら外国法人の登記についても罰則規定があります(民法第84条の3の1項1号)。
?法人の住所・・・法人の住所は主たる事務所の所在地である(民法第50条)。
法人の住所は契約の時、重要な事項となる。これが契約書に書かれてい無いからと言って、直ぐに無効となるものでは無いが、法人の名称は町が違っただけでも同一の名称が使えるものなので、不測の事態を避ける為にも契約の相手の特定には法人の名称と共に、住所は確り抑えておかなければなら無いのだ。さて、いよいよ今回の記事での最後の説明に入ります。
?法人の財産目録・社員名簿の管理
財産目録や社員名簿を作成・管理することは法人自身の運営を行う上でも重要となり、法人と取引をする相手にとっては、取引によって思わぬ損害を避けるために欠かせ無いものともなるのです。そこで財産目録の作成は必至で、その法人の住所地である主たる事務所に備えることが義務付けられ、設立時と毎月一月から三月の間に作製しなければなら無いとされます。しかし、特別に事業年度を決めている法人は、設立時点と毎事業年度終了時点までに製作していることを義務付けているのです(民法第51条1項)。社団法人は社員名簿を備え、変更がある毎に書き換えていかなければなら無い(民法第51条2項)。これ等を怠ったり不正な記述をすると罰則規定(民法第84条の3の1項2号)が適用されます。
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