【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利】
憲法第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
以下に、人権侵害があった場合に、人権侵害を受けたと訴える者の主張が、公共の福祉に反するものか如何かということについて裁判所が実際に適用してきた審査基準や学説としての解釈論を掲げてみる。
1.基本的人権と公共の福祉との関係一般(基本的人権の保障とその限界)
①公共の福祉の概念と機能
「公共の福祉」とは、社会一般に共通する幸福や利益。個人の利益や権利に対立ないしは矛盾する場合があり、相互の調和が問題とされる。 公共の福祉の概念は、法文上明らかにされていない。公共の福祉は国家権力に都合よく解釈されるものであってはならず、「公共の福祉」とは、社会全体睨んでの社会の構成員に等しくもたらされるべき幸福と解釈されなければならないのだ。つまりこの条項での國民の権利が公共の福祉に反するものであるかの判断は、社会を構成する全ての人々の幸福の障害となるものが許され無いのであり、判例に散見されるように国家権力の施策の障害となるかを前面に出して判定されるものでは無いのである。
②利益衡量論
「利益衡量」とは、法律の合理的な解釈のために、当事者や利害関係人の利益その他の公益などを比較すること。 社会を構成する絶対多数の幸福と人権を主張する者の比較し、どちらを優先すべきかが判定されなければならない。
③ダブルスタンダードと合憲性判断基準の種類及びその適用範囲
・合理性の基準 合理性の基準とは、法律の目的・手段が著しく不合理でない限り合憲とする基準である。明白性の原則と対比される。法律の適用の可否を判断するに当たり、一般人を基準する。また、立法府には間違いがないという推定がなされる。経済的自由としての職業選択の自由の規制に関する違憲審査基準は、先ず、ダブルスタンダードの理論から精神的自由の規制を審査するときよりも緩やかな審査基準を使う事になる。つまり、立法は合憲と推定されるが、同時に一般人の判断とに上の推定が矛盾があるかどうかの審査基準を言うのである。
・明白の基準 規制が立法裁量の限界を超えて、著しく不合理であることが明白な場合に限って、その規制を違憲とする 。
・合憲性推定の原則 法律は立法権をもつ国会によって合憲と判断されたうえで制定されるものであり、一般に合憲の推定を受けるとする原則
・合憲性推定排除の原則 表現の自由は保障されることが憲法第21条第1項で明文化されている。従って表現の自由を押さえ込むような規制は合憲性の推定を排除されるとする。
・挙証責任転換の理論 通常、訴えた者に挙証責任があるのであるが、憲法で保障する基本的人権の侵害があったか如何かの挙証責任は侵害をしたとされる者に転換する。
・事前抑制禁止の原則 表現行為が未だ具体化されてい無いにも拘わらず、事前に公権力が何らかの抑制をしたり、現実には何ら障害も予測され無いのに通行の障害になるなどの理由で演説などすることに対して道路使用を許可し無いことを禁止する。
・より制限的でない他の選びうる手段の基準(LRA) 立法目的が重要で、立法目的を達成するための規制の程度のより少ない手段が存在するか如何かを具体的に検討する基準。
・過度に広汎な規制の故に無効の理論 精神的自由の制約に対する合憲性判定基準で形式的基準として適用される。 過度に広汎な規制の故に無効の理論とは、人権規制がその必要性を超えて過度に広汎である場合には、それ自体で違憲になるという理論である。
この理論は、規制手段が目的と無関係であること、または規制手段が目的達成のために不合理であることが文面上明らかな場合に適用される。ただし、実際にはこのような場合は少なく、実体審査に委ねられることになる。
・漠然性の故に無効の理論(明確性の原則) 精神的自由を規制する立法は明確でなければならず、不明確な法令は違憲無効とする理論である。
・明白かつ現在の危険の原則 1.実質的害悪を引き起こすことが明白であること、 2.実質的害悪が重大で、時間的に切迫していること、 3.当該規制手段が害悪を避けるのに必要不可欠であることの3要件を要素する基準である。 表現の内容を直接に規制する法律に対して用いる基準。
・必要最小限度の原則 人権を押さえ込むような抑制は必要最小限にされなければなら無い。
・危険の漠然性の理論 人公共の福祉への侵害を抑制する為のものとは言え、その為に規定が広汎に亙り漠然としたものであってはなら無い。
★次回も憲法第13条の続きを掲載する。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます