魂魄の狐神

天道の真髄は如何に?

法律考第十二回 物 その1

2007-11-19 13:32:15 | 憲法考

序説 物の概念

 とは何か?有体物を言う(民法85条)。然るに、有体物とは?これに対する定義は様々あるが、要は、触れてその存在が実感出来るものである。法律上、物は動産と不動産に分けられる。また、主物と従物という概念による分け方もある。これらについては後ほど説明する。物は人が働きかける権利の対象(客体)になる。では、権利とは?人が何らかの利益を受けられる為の資格とでも言っておこう。権利には物権と債権と言う法上の概念がある。物権は物を介して得られる物を対象とする利益に対する権利、債権は人を介して得られる物を対象とする利益に対する権利と解釈できる。実質的利益を受ける対象となるものを権利の客体と言い、これ等によって齎される利益は、物を対象にしたものとは限らない。例えば、親族権や人格権等も挙げられる。

 以上のように、人の権利の対象となるものは物とは限らないが、改めて、この物が有体物という以外の法律学定義を考察してみよう。上に述べたように権利の客体は有体物に限ったものではない。例えば、電気は有体物とは言い切れないが、刑法上は窃盗罪が成立つ。逆に、非人格権としての死体の所有権が問題とされたことがある。死体も有体物に違いないが、この所有権が主張される源泉は決して死体そのものにあるのではなく、死者に対する畏敬の思いから発する人格権的な側面から生じたものである。

 権利の対象となる物には、欠かせない要件がある。先ず、様々な取引の対象となりえるものでなければなら無いので、人が手元に置くことが出来るものでなければなら無い。それと共に、物として対象の範囲が限定されている必要もある。ありていに言えば、他のものと峻別できるもので無ければなら無いのだ。

 物に対する権利、つまり、物権の対象となる客体は他と峻別でき独立したものでなけばならず、また、物の一部の上には独立した物権は成立たない。逆に、原則として複数の物の上には一つの物権が成立つことも無いのだ。しかし、米は多くの米粒からなるものであるが、一俵の米は取引の対象となるように本来分別可能な集合物も何らかの形で個別化できれば、独立した一個のものとして成立する。

 土地は地続きのもので連続した広がりを持つが、登記で一筆の土地として分けられ、取引の対象としては一筆を単位としてなされるのだ。建物も法律で特別の規定が無い限り、原則として一棟の建物を単位として取引されたり、登記されたりすることは出来無い。立木や農作物は、無論取引の対象にされるのだが、これ等を個別・独立のものと認めるような登記は無いが、立て札等を立てるなど一定の明認方法によって一つの独立した個別の物件として取引の対象とすることができる。

 あくまでも取引の概念として認められるものとして、そけぞれが個別・独立に存在するのだが、それら複数のものを一纏めにして一つのものとして取引の対象とされたものを集合物という。これは前述した米の概念とは異なる。ただし、集合物と認められる為には、一定の要件がいるのだ。一つは、集合物の価値は、個別の複数のものの価値が集積されたものに留まらず、集合物としての新しい価値が生み出されたもので無ければなら無い。二つ目は、物権として特定できることが原則となる。更には、公の機関が広く一般に知らせることができる「公示の原則」に適合していることが求められる。例として、包括的に企業の有する財産を担保とする企業担保制度などがある。


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