【『民事保全法』逐条解説】第二章 保全命令に関する手続 第五節 保全抗告
(保全抗告)
第四十一条 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(第三十三条(前条第一項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から二週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。
※抗告 日本の司法制度における不服申立ての一種であり、決定又は命令に対して、その決定又は命令
をした裁判所(原裁判所)の上級裁判所(地方裁判所や家庭裁判所でいえば、原則として高等裁判所
が上級裁判所である。
※(原状回復の裁判) 第三十三条 仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しく
は金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより
前条第一項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若し
くは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の
返還を命ずることがでできる。
※保全抗告 保全命令に対する不服申立てには,発令裁判所が担当する保全異議と保全取消しがあり,
その決定に対する不服申立てとして保全抗告があります。
※抗告裁判所 抗告を審理する上級裁判所。簡易裁判所の決定・命令については管轄地方裁判所、地方裁判所の決定・命令については管轄高等裁判所。
2 原裁判所(原審を行った裁判所)は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。
3 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
4 第十六条本文(保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。)、第十七条(保全命令は、当事者に送達しなければならない。)並びに第三十二条第二項及び第三項の規定(裁判所は、前項の決定において、相当と認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第十四条第一項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨を定めることができる。裁判所は、第一項の規定による保全命令を取り消す決定について、債務者が担保を立てることを条件とすることができる。)は保全抗告についての決定について、第二十七条第一項(保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第三項の規定(裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第一項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。)による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。)、第四項及び第五項(第一項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。第十五条の規定(保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。)は、第一項の規定による裁判について準用する。)、第二十九条(裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。)、第三十一条(裁判所は、審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。)並びに第三十三条の規定(仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第一項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若しくは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の返還を命ずることができる。)は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法第三百四十九条(即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができる。) の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
5 前項において準用する第二十七条第一項の規定(前掲)による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。
(保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判)
第四十二条 保全命令を取り消す決定に対して保全抗告があった場合において、原決定の取消しの原因となることが明らかな事情及びその命令の取消しにより償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、保全抗告についての裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずることができる。
2 第十五条(前掲)、第二十七条第四項及び前条第五項の規定(前掲)は、前項の規定による裁判について準用する。
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