経営法務研究室2023

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交通事故 物損事故 車両 評価損 の最近の判例

2012-04-20 | その他
 昨日弁護士会図書館にて、交通事故判例速報(交通春秋社)発行(NO548)に、評価損に関する記事が載っていました。

 交通事故の情報は、経営者の方にとって、直接関係ありませんが、傾向としては、皆様高級な車を利用されていることが多く、事故に遭うことも少なくないので、簡単にご紹介いたします。

 評価損とは、車が事故に巻き込まれて、修理代は弁償してもらったとしても、いわゆる事故車となると、市場価値が下がるため、その賠償の問題となるところの損害項目です。

 この評価損については、車が修理されても、完全に元通りではない以上、請求できないのですかというご質問が良くあります。

 その最近の判例をまとめたものが、上記雑誌に載っていました。
 
 
 それによれば、


 判例の傾向としては、評価損を認めているものと認めていないものがあり、いまだ固まっていないというとのことである。評価損の認定をする明確な基準もないようです。


 だとすると、とりあえず把握するべきは、認定された各判例の中身の事情ということになります。


 概ね、どの判例も、車種、初年度登録からの期間、走行距離、損傷の部位・程度等を総合的にみて評価損が発生するかどうかを判断していますが、認められているケースでも、だいたい修理代の約20%程度でした。


ちなみに、

評価損が認められた例は、

平成22年5月11日神戸地裁
 車種   トヨタエスティマ
 期間   初年度登録から23か月
 走行距離 9938キロ
 修理費  約125万円
 損傷部位 骨格にあたる部分にあり
 
 結論 修理費用の20%

平成22年10月14日東京地裁
 車種   ????
 期間   初年度登録から22か月
 走行距離 約1万キロ
 修理費  ?????
 損傷部位 (よくわらないが、)リアクロメンバ交換・修理、リアサイドメンバASSY修理等
 
 結論 修理費用の25%

平成22年12月8日東京地裁
 車種   BMW
 期間   初年度登録から約12か月
 走行距離 約2万キロ
 修理費  約214万円
 損傷部位 左フロントフェンダー付近からリアフェンダー付近に至る広い範囲での損傷
 
 結論 修理費用の約20%


平成23年2月16日東京地裁
 車種   BMW
 期間   初年度登録から約36月
 走行距離 約2万6000キロ
 修理費  約190万円
 損傷部位 左フロントバンパーから左リアバンパーに至る広い範囲での損傷
 
 結論 修理費用の約20%


でした。



なお、BMW(新車価格約760万円)は、判旨で高級車であると言及されており、対して、エスティマ(新車価格約320万円)は、「付加価値の高い高級車の部類に属するものとまでは言いがたい」とされていました。

個人的には、エスティマは一昔の車とはいえ、高級の部類には属してほしいとは思う車だとは思うのですが・・・



一方否定された判例は

平成23年2月22日東京地裁
 車種   アウディS6
 期間   初年度登録から約38か月
 走行距離 ????
 修理費  約16万円
 損傷部位 構造や性能に影響を及ぼす損傷はない
 
 結論 否定


平成23年8月19日名古屋地裁
 車種   レクサス
 期間   初年度登録から約36か月
 走行距離 ???
 修理費  ???
 損傷部位 ???
 
 結論 否定


平成23年9月20日名古屋地裁
 車種   アウディ
 期間   初年度登録から約12か月
 走行距離 約1万5000キロ
 修理費  約200万円
 損傷部位 左フロントフェンダー付近からリアフェンダー付近に至る広い範囲での損傷

 特殊な認定 乗りつぶすことが予定されていた

 結論 否定

などがありました。ほかにもありましたが、一部だけです。


否定されたケースをみると、初年度登録から3年たっているほか、修理費が低額であったりでする。11万キロは乗りすぎであろうと思われ、そのあたりで判断されているようでした。


 ここで、注目したい点は、「乗りつぶすことが予定されている」との認定です。要するに、転売しなければ、評価損は現実化しないので、「乗りつぶす予定」の人には、認める必要はないという発想であり、裁判では、「乗りつぶす予定である」とは言ってはいけない一言でだったということである。

 もっとも、評価損には諸説あり、必ず売却予定を要求するかどうかを求めないという考えもありますが・・・・一応気をつけましょうということには変わらない。


 あとおまけですが、レクサスの評価損、否定裁判例は、判決の理由の言い回しのなかに「レクサスとはいえ」というフレーズがありました。

 一般的には、レクサスは高級車とはいわれているが、レクサスにも新車価格350万円ほどのCTというモデルもある。ただ裁判所では、レクサスは、当然、高級車であるとの認識のような言い回しをされている点は、興味深かったです。

 ちなみに、アウディは「ドイツの高級車」という言い回しがなされていました。


 車好きの裁判であれば、もっと詳細な認定をするのかもしれませんが・・・


 念のため、私は車はそれほど興味があるというわけではないです。