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男性の年代別年収はどうなっているのか
「この価値観」のもとでは婚姻の有無は男性の年収と強い関係がある
男性・女性の平均年収は民間給与実態統計(国税庁)をみればすぐに分かる。前々回は年収階級別の男女それぞれの人数を見たが、年齢階級別の平均年収も同じ統計にある。
民間給与実態調査で言う給与とは年間収入のことである。源泉徴収を受けている人のみであり一年以上勤務している人が対象だ。単位は千円。5000のところに横線が引いてあるが、これは年収500万円ラインである。
前回、男性年収500万円が結婚の境界線だという趣旨のことを書いたが、上図のように男性30歳代前半の平均年収はほぼ500万円である。
ここに「平均」の魔法が隠れている。750と250の平均は500だ。同一年齢なら同一年収ということはない。ではどれくらい「分散」しているのだろうか。どれくらい「格差」があるのだろうか。
民間給与実態調査は年収の分散についてのデータがない。しかし同一年令の賃金がどのように分散しているのか、どれくらい格差があるのかを調べるには「賃金構造基本統計(賃金センサス)」がある。ただし「所定内賃金」なので年収に換算するには何倍かしなければならない。何倍だろうか?この何倍を決めるのが毎月勤労統計である。
毎月勤労統計は所定内賃金・残業代等・一時金の調査結果が載っており、それによると年収は所定内賃金の17倍程度である。ここでは年収=所定内賃金×17として以下の論考をすすめる。もちろん大雑把な推論に過ぎない。素人だからできることだ。
ここで分位数という言葉が出てくる。例えば四分位数とはデータを小さい順に並び替えたときに、データの数で4等分した時の区切り値のことだ。十分位数とは十等分したときの区切り値である。同一年令の人が100人いたとして所定内賃金の第一十分位数が20万円だとすると10人の所定内賃金はこれ以下だということである。エクセルのパーセンタイル関数なら知っているという人もいよう。
賃金センサスの所定内賃金の特性値を17倍して年収の特性としたものが以下のグラフである。単位は万円となっている。
先ほどは所定内賃金の17倍を推定年収としたが、所定内賃金が低いほど倍率が低いことは推定できるので第1十分位数の12倍も参考として上げた。
さらに、表としたものが以下であり、推定年収500万円以上を太枠で囲ってある。
今や結婚は贅沢になった
「この価値観」(男性生計中心者-専業主婦モデル)は現実には成立しないものとなっている。
男性の30代前半の50%強は年収500万円以下。下位10%は300万円に届いていない可能性が高い。
下位25%は一生500万円に届かず、下位10%は一生300万円に届かない可能性も十分にある。中位(ちょうど真ん中)の年収でも「この価値観」を実現するのは相当難しいだろう。
これを「日本の貧困」と言わずして何というのか?
では、二人では働けばいいじゃないか、という議論もあろう。次回これについて考えてみる。