よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

日本の貧困 2 年収と婚姻の関係

2024年09月11日 | 先進国の経済学

  「男性生計中心者-専業主婦モデル」を規範としている「この価値観」は成り立つだろうか?

 下図は年収と婚姻率の関係を示している。
 


 2024年度年次経済財政報告(いわゆる経済白書)には上のようなグラフが掲載されている。グラフの元データは就業構造基本調査。元は未婚率だが筆者で婚姻率に加工した。婚姻・未婚は現在の状態のことであり、結婚したことがあるかないかではない。このデータを見る上で注意することは、自己申告制なので年収が低く出ている可能性があることである。他の統計と突き合わせるとその疑問がわいてくる。ここでは一つの指標という扱いにする。

  1. 女性の100万円未満、100万円台の婚姻率が高いのは専業主婦の就労調整の結果であろう。もったいないことである。
  2. 四分の三を絶対過半数という。それにならえば、男性の絶対過半数が婚姻しているのは年収500万円以上である。
  3. 2012年から5年ごとのデータが記載されている。男性は全ての所得階級で、年々、婚姻率が下がっている。
  4. 一方、女性はわずかではあるが上がっている。とくに年収600万以上では2012年からの10年間で6ポイントも上がっているのには注目すべきである。結婚・出産後の就労継続の条件が整いつつあることの現れである可能性が高い。取り組めば結果は出る。さらに言えば、年収200万円台以上で年収と婚姻率には弱いが無視できない正の相関がある。年収が高い企業ほど就労継続の条件が整っているということであろう。
  5. この女性年収600万円以上に注目すると、男性の年収のほうが高い場合が多いであろうから、世帯年収は少なくとも1200万円を大きく超えていると思われる。これは4.で挙げた事情とあいまって世帯間の格差を広げる働きを持つだろう。
  6. ともかくも男性の年収と婚姻率には相当強い正の相関があることが分かる。

 この強い相関は、前回指摘した「この価値観」(男性生計中心者-専業主婦モデル)はまだ強固に生きていることの証拠でもある。男性はそのような価値観にとらわれ、あるいは、そのような価値観が支配する環境に置かれている。がゆえに婚姻率が年々下がっているのではないだろうか。

 結婚については未婚・既婚に価値中立で分析を進めているが、男性年収800万円台で82.7%が婚姻状態にあることを考えれば、8割強の男性は条件が許せば結婚したいと考えている、と見ていいのではないか。

 女性では年収200万円台から400万円台以下の層の二人に一人弱が婚姻状態になく、さらには母子家庭の存在もここに含まれていることが推測されるので、女性の貧困は危機的な状況にあるといってもいいかもしれない。

 次回は「男性生計中心者-専業主婦モデル」が成立する前提を分析する。
 とっくにこの前提は崩壊しているのだが

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