タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ 還 暦 の 祝 い ≫

P1010344 父は三男で、分家だった上に、本家との付き合いもあまり親密ではなかったので、両親は、本家での慶弔の習慣を話題にしたことがあまりなかったし、母方との親戚づきあいも同様だった。したがって、長命の家系にもかかわらず、私たち子供四人は、親族の還暦・古稀・喜寿・傘寿・米寿・卒寿などの祝い事を経験した覚えは全くない。90歳を超えた両親についても、還暦から卒寿まで、祝い事は特にやっていない。両親自ら、祝いは不要と断るのが常だった。
 私が還暦を迎えたときは、女房の、「何か欲しいものを・・・」という言葉に甘えて、「昭和の流行歌CD20枚セット」を買ってもらい、生寿司と剣菱でささやかな食事を楽しんだだけである。それで十分だった。四年前のことである。
 還暦を迎えても、私はまだ現職だったので、特別な感慨もなかったし、赤い帽子に赤いチャンチャンコなど、考えもしなかった。知人で、釧路ではいっぱしの文化人で通っているK氏が、流行歌・演歌が大嫌いで、祝い事に拘ることを知っていたので、彼の前では、還暦の話は一切持ち出さないように心がけた。私は、クラシック音楽も好きで鑑賞するし、曲がりなりにも、クラシックギターやピアノを演奏することもできる。しかし、芯から心が和むのは、日本人歌手の流行歌である。
 三橋美智也・三波春夫・都はるみ・石原裕次郎・布施明・青江美奈・水原弘・西田佐知子・森進一・内山田洋・・・みんな素晴らしい歌手ではないか。流行歌のどこがよくないのか。あからさまな侮蔑の言葉は、当人の品性を下げるだけである。他人の趣味・好みに口を差し挟まないでもらいたい。ジャズが好きなら好きで、自分だけで楽しむがよかろう。

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