中華人民共和国で今年九月、教育学会会長の顧明遠氏が「学業、体育、人徳のすべてで抜群な児童生徒を小中学校、高校、当局が表彰する『三好学生』制度の廃止論を唱え、今も収まらない論争に発展している」(11月18日付『讀賣新聞』第7面〈国際〉、教室の写真を転写)という。
昭和二十八年に、毛沢東が提唱した「三好学生」制度は、社会主義の学校教育の象徴だったが、今や、児童生徒の個性や想像力欠如・教育現場の腐敗を生み出す欠陥制度に堕しているのだろう。
この新聞記事を読んで、昭和二十年代に私が学んだ小中学校で行われていた<優等生制度>のことを久しぶりに思い出した。評価の対象となる項目は、学業成績・児童生徒会活動・校内外の生活態度などで、毎年、各学級(五十数人)から五人くらいが優等生に選ばれ、終業式に壇上で校長先生から賞状を戴いた。
私は三年生から六年生まで優等生に選ばれ、優等生総代として、賞状と副賞を手に晴れがましく小学校を卒業した。優等生の選考については、良くも悪くもいろんな噂が聚落に流れた。この制度は、民主教育の精神にそぐわないとして、昭和三十年に赴任した、北教組網走支部の役員を務める(当時は管理職も組合活動ができた)新校長の決断で廃止された。職員室の先生方も、聚落の親たちも、教室の子供たちも、さぞかし、すっきりしたことだろう。
すべての児童生徒に等しく優れた教育を、というのが社会主義の理想のはずだが、なぜ毛沢東が差別的制度を提唱したのか、ま、建国後間もない国内事情から分からないでもないが、それにしても、幼い児童に「人徳」を求めてどうする。
弊害が目立つ硬直した制度なら論争の余地はあるまい。即刻廃止すればよい。中華人民共和国は、今や社会主義国ではない。一党独裁の変則資本主義国である。毛沢東思想に義理立てすることはない。
最近の「学芸文化」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事