著 者 ジャン=リュック・エニグ
訳 者 尾河 直哉
装 幀 岩瀬 聡
写 真 アルチンボルド「司書」(1965 年)
書 名 『剽窃の弁明』エートル叢書 ⑫
発行所 株式会社現代思潮新社
発行年 2002 年 1 月 31 日(初版第一刷)
訳 者 尾河 直哉
装 幀 岩瀬 聡
写 真 アルチンボルド「司書」(1965 年)
書 名 『剽窃の弁明』エートル叢書 ⑫
発行所 株式会社現代思潮新社
発行年 2002 年 1 月 31 日(初版第一刷)
ジャン=リュック・エニグは、前書きに当たる冒頭の部分を、アルフォンス・ドーデの戯曲『妨害』の山場の場面は己の韻文劇『狂人』の盗作だ、と執拗に咎めるモーリス・モンテギューに苛立つアナトール・フランスからの引用でもって始め、次いで、おびただしい数の引用を、時には出典を明示、また時には意図的に隠し、随所に煌びやかにちりばめて本論を展開する。
本論と言っても、これは理論ではなく実践の書である。味噌も□□も一緒くたにし、引用を泥棒呼ばわりする人にとって、テクストや言葉に完全無垢なオリジナリティーを認めない、一貫した反純血主義は理解できないかもしれない。しかし、剽窃実践だと公言し、ありとあらゆるテクストを渾然一体化するエニグの不道徳の世界は、意外にもエニグ自身のエクリチュールとして、読む人の心を揺する痛快な魅力に満ちていると私は思う。己のテクストにオリジナリティー有り、と自負する貴方に、ぜひ一読を勧めたい。予想もしない喜びとの出逢いを楽しんでもらいたい。