理想を求めて
男は想った
このようになれば
素晴らしいと
人形はぎこちない動きながらも動き始めた
男は人形の髪を直し
飾りを施し
そしてその足に
小さな花飾りのついている靴を履かせた
動きが早いためまだまだ披露するには難しいと悩みながらも
小刻みに揺れるオートマタの動きを
少しでも滑らかにするために
男は苦労を続けているのでした。
「美しく、滑らかに。そう、優雅に。」
おるごーるは鳴っていますが
オートマタの動きを完成しなくては
人目に大っぴらに触れさせることは出来ないからです
時々硬い動きになり止まりそうになる人形を見て
どのような所作でどのような歌を歌わせようかとワクワクしてもいるのでした。
夜更け
オートマタは1人
工房の中に置いておかれました
彼は仕事を終えると屋敷の中で
楽しそうに食事をしたり話したりしていました。
彼には人として信頼できる存在があり、共に語り笑い行動することができるからです。
オートマタはその楽しそうな声やあたたかそうな灯りを見つめておりました
彼女は想いました
「この制限された動きの歯車たちのひとつひとつをはずせないかしら?重いわ。少し自由に動いてみたいものね。あのようなあたたかな灯りの下で、私も声を出して話したいわ。笑ってみたい。」
けれども彼女は彼がゼンマイで歯車を巻かない限りは動くことはできないのですから。
ピノキオのように
人間になりたいものだと
彼女は密かに想っているのかもしれませんね。
オートマタはツーっと一筋
涙を流しました