金魚cafe

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テーラー伊三郎

2018-09-09 13:47:39 | 読んだ本
川瀬七緒著 角川書店

川瀬七緒センセーの作品はあるジャンルを深く掘り下げていて登場人物が世間でそれで評価されるよりも好きなことを続けることを大事としてる人が多いなあと思います。

昆虫(特にウジ)だったり高齢の方からのその人たちの暮らしてきた記憶を集める民俗学の研究者だったりと。

今回舞台は震災後の福島県のとあるさびれた商店街で紳士服の仕立てを生業とするテーラー鈴木伊三郎80歳。
そして成人指定の18禁漫画を描いている母と2人暮らしの津田海色(アクアマリン)17歳高校生。

海色と書いてアクアマリンと読ますなんてキラキラネーム過ぎる~~と思いつつ彼の年代はもっとすごいキラキラネームもあったから驚きはいたしませんが、シャッター通りになってしまった小さな町ではかなり目立つかなと。


なので彼はできるだけ目立たず無難な人生を送ろうと17歳で達観してしまったようです。

アクアはある朝、通学途中にシャッター通りを通ると閉まっていたテーラー伊三郎に中世ヨーロッパの貴族が身につけるようなレースをふんだんにつかった洗練されたコルセットショーウインドーに飾ってありました。

町内で伊三郎さんとうとう認知症が出た~~など大騒ぎになりますが、母の漫画の手伝いをしているアクアは中世ヨーロッパの衣服の知識があり、これは認知症になった人間ではこのようなクオリティの高いものは作れないと興味をもちます。

お互いにシンパシーを感じた二人にアクアの同級生でスチームパンクに身を包んだ明日香とともにこのコルセットをちゃんと販売し広げていこうではないかと結束します。

ところが小さな町閉鎖的な考えをもつ人もいてなかなかきびしいものがあります。

この3人がなぜお互いシンパシーを感じたのか、それはお互い活動するのにあれだめ、これだめと制約が多くてそれにうんざりしているからではないかと思いました。

伊三郎さんはオトナなのに高齢でもう年なんだからとか認知症起こしたんじゃないかとかアクアと明日香は高校生なので校則というものに縛られています。

そんなあれだめ、これだめ言われたもの同士がなんかやってやろうではないかと思うのは当然なのかもしれません。

前に川瀬七緒センセーの「フォークロアの鍵」というのを読ませていただきました。

こちらも高齢者がどうすれば自分らしく生きていけるかという問題を投げかけておられました。

それはお互いの話をよく聞いてあ~~そうなんだだからそうなのねと気持ちを共有することから始めていければいいのかなと思いました。

なんでこんなに服に関して詳しいのかと川瀬七緒センセーのプロフィールを拝見しますと服飾関係のお仕事をされていたそうです。

中世ヨーロッパのことに興味ある方は面白いと思われるかもしれません。





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