★追記を行いました。一番下です。
国会で、政府、与党の議員諸君の認識が酷過ぎるため、少し書かせていただきます。というか既にテキストはあります。とある友人に送ったラインから引用します。
以下、引用、一部改変
『軍事上の常識なのですが、もし憲法上許される「敵基地攻撃能力」があると仮定するならば、対北朝鮮ではなく対中国です。何故かを説明する前に、まず、「日本にとっての敵基地攻撃能力」を正確に定義する必要があります。
これは中国からのミサイル第一波が来た直後に、滑走路(長くて広い直線道路も含みます。滑走路として使用可能ですので。偵察衛星により、事前に航空機向けの補給処が確認できた道路は優先目標です)を一時使用不能にするため(俗に言う、嫌がらせ攻撃です)、および発射済み・装填待ちの固定式ミサイル発射装置に向けて攻撃力を投射する能力の事です。未発射の物を事前に察知できていれば言う事なしです。一部は米軍が現段階で捕捉しているはずです。なお、これには膨大な予算が必要で、現実性があるとはとても思えません。
北朝鮮には事実上、航空兵力がなく、ミサイルだけですので、滑走路を一時的に使用不能にする必要性が無いです。更に、固定式ミサイル発射装置もありますが、例の列車移動式やトレーラー移動式のミサイル発射装置を、隠蔽しておき、恐らくは第二波以降の主力にし、更に更に再装填する予備のミサイルの余裕はほぼないと、私は推測しています。列車移動式やトレーラー移動式は、日米の衛星により発射位置を特定した段階で、当然、全てのミサイルを打ち終わっていて、補充のミサイルは基地に戻ってもありませんので、その時点で攻撃しても無意味です。あらかじめ命令を受けた目標に打ち込み、補給もないので任務完了です。
簡単に言うと、北朝鮮は、1発撃って、それでおしまい。補給なしです。
日本からの反撃は、軍事上の理由はなく、政治的理由のみがあります。
以上で、北朝鮮に対する「敵基地攻撃能力」は不要である、とお分かりいただけたと思います。
中国は膨大な航空兵力を持つため、二度目以降の航空出撃を遅らせるために、滑走路を一時使用不能にする事は重要です。位置が判明している固定式ミサイル発射装置を狙うのも有効です。なぜなら、中国は再装填用の大量のミサイルを保有しているからです。
ポイントとしては、「敵基地攻撃能力」を使うタイミングと対象を政府・与党が理解していない事を浮き彫りにすることです。
ちなみに、第一撃を日本から行う、というのは、軍事上の常識としてありません。憲法上、政治上の理由ではなく、軍事上の理由からです。』
引用、ここまで。
最後の「軍事上の理由」について補足すると、まずは戦略目標による、ということを断っておかないといけません。日本が先制攻撃を仕掛ける相手と日本の持つ戦略目標が、どうやっても思いつきません。皆無です。戦略なしに作戦を実行せよという文民統制が働いたとしたら、悲惨です。例の小説にもある通り、もし広大な領土を持つ相手が焦土作戦に出たら、軍としては対応できかねます。もしも、仮に敵基地を先制攻撃したとします。その後はどういう作戦で行くのでしょうか。戦略のない軍部単独や、政権単独での暴走は危険です。実現可能な戦略のない所に作戦はありません。百歩譲って、何か命令されたと仮定します。敵地に陸上兵力を送るのですか。そんなことしたら、もう目茶苦茶で、容認できません。そもそも、自衛隊はそういう思想で装備を調達していません。転用はそこそこ出来る、ってだけです。訓練も定められたドクトリンの元で行っていますので、急に変な事を言われても困ります。
対北朝鮮の敵基地攻撃能力の議論など不毛で、時間と予算の無駄遣いです。予算は困窮者の社会保障に回せと言いたいです。富裕層の所得税を不自然に減らしておいて、何をかいわんやです。ちゃんと累進課税にしてください。
以上の話は北朝鮮の脅威を軽んじているわけではありません。脅威は存在し、いざとなれば、ミサイルは日米の基地を主目標に飛んでくるでしょう。しかし、北朝鮮の戦略目標は何なのか、さっぱりわかりません。攻撃した時点で、北朝鮮の滅亡が決まってしまいます。展望のない攻撃を仕掛ける理由がありません。北朝鮮が核やミサイルを保有していると誇示するのは、外交の道具として使うためだと思います。また、北朝鮮からは、日本の原発その他の重要施設に対して少人数での急襲をかける可能性もあります。これには僅かな抑止力でもって予備的に対処し、報道公開しておけば、北朝鮮は手が出しにくくなります。ハードルを上げれば、それだけ攻撃の可能性も落とせる、という訳です。
今回、露軍が宇国に侵攻した時のニュースで、多数の滑走路がまず攻撃された、と耳にした方も多いと思います。これは、「攻撃的な敵基地攻撃能力」です。日本が「防御的な敵基地攻撃能力」を保有することが憲法上、許容されるのかは、難しいところです。わたしはギリギリセーフだと考えます。私が間違っている可能性もありますが、中国が打たない限り、日本は決して打たないのですから。
★追記です。私見ですが(私見以外に存在しないけど)、敵基地攻撃能力よりも、万が一、中国(ロシアも含めるべき)の航空機が空爆に来た場合の対処の方が重要かと思います。当然、飛んでくるミサイルを途中で撃ち落とす対処も同様です。後者は北朝鮮の外交カードを一枚減らせるので、有効です。実際、これらの能力は自衛隊にかなり備わっています。しかし、いまだ十分とは言えません。中露は恐ろしい程の物量を持っています。つまり、大量のミサイルが同時に飛んできます。これを「飽和攻撃」といいます。聞いた事がある方も多いでしょう。
物事には順番というものがあり、敵基地攻撃能力より先に備えるべき装備をちゃんと揃えましょう。まさか、攻撃的な能力を持つことを欲する政治家がいるのでしょうか。そんなものは要りませんし、そんな政治家も要りません。言質が取れたら、次で落としましょう。防御的な装備が必要なのです。アルテミスの首飾りのように、ヤンにすぐに無力化されては困りますので、そのあたりの対処も含めてお願いしたいものです。
日本は専守防衛です。敵基地『攻撃』能力について、防衛大臣や内閣諸君、与党議員諸君の発言を聞くと、この微妙だが重要な内容を理解していないように思えます。彼らがこの記事を目にすることはありませんが、世界の片隅で、静かに祈っています。