ウチの困ったちゃん

父が帰って来るなり不機嫌である。
帰りに地元の商店街の中華料理チェーン店で餃子を２パック買って帰ってきたのだが、「タレを３つつけてくれる？」と言ったら、店員が「本当はいけないんですけど…」と言ったんだと。それがもう気に入らない。店員さんは、言うには言ったけど、ちゃんとつけてくれたんですよタレ３つ。それでも父の怒りはおさまらない。
「余計なこと言わずに黙って付けろっての。もう二度とあの店じゃ買わない！」
父は頑固なので、金輪際そこで買うことはないだろう。
私にしてみれば「そりゃケチかも知れんけど、向こうにだって事情ってもんがあるんだろうし、その程度でそこまでいきり立つのも大人げないんじゃねーの」と思うのだが、言ったら「お前まで余計なこと言ってんじゃねーよ！」と怒りの矛先がこっちに向くのは火を見るよりも明らかなので、黙っておいた。家族が注意しないから余計歯止めが利かないんじゃ…という話もあるのだが、言えば言うほど意固地になるのが父の性格であり、もう我々も諦めの境地なのである。
父の「沸点」は異常に低くて、「そんなくだらないことで何でそこまで腹が立てられるのか」と呆れてしまうぐらい、ちょっとしたことですぐへそを曲げる。
だいぶ昔の話だが、ある雨の日、同じ商店街の某洋菓子屋でのこと。ケーキを買いに店に入った父は傘を持ったままだったのだが、店員から「傘は表の傘立てにお願いします」と言われて、それだけで何も買わずに店を飛び出し
「もう二度とあそこでは買わない！」。
実際、それ以来父はその店には一度も行っていない。店員にしてみれば、床が水浸しになったら滑ったりして危ないからわざわざ表に傘立てを置いてあるのであって、父へのお願いは至極当然のものだ。しかし、それが父は「客に文句言うなんてけしからん！」としか受け取れないのだ。父は普段は結構気配りのできる人間なのだが、その反動なのか、店員とかの態度にはいちいちうるさいんだよね。「そこ、そんなに怒るとこじゃないでしょうよ」ということまでギャーギャー言う。私も接客業でいろいろとイヤな客を見てきたが、
父みたいなタイプは非常に始末が悪い(爆)。

家でも同じような調子で、ちょっとしたことですぐムキになって我々を困らせる。普通、人間って年を取ると角が徐々に取れて丸くなるっていうじゃないですか。ウチの父の場合、三角形→四角形→五角形…丸に近付いているけど角の「数」は段々増えてるという感じで、昔より怒りっぽくなったような気が…って言うとまた「そんなことねぇよっ！」ってやっぱり怒ってるんだよね(笑)。

そんな父もいよいよ今月で定年。一応、契約延長で会社には数年残ることになるのだが、家にいる時間は今より増える。「どうなるのこれから…」今から戦々恐々としている母と私なのだった。