uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣 ~時給1800円~ 第10話、第11話

2021-10-30 06:25:19 | 日記
     第10話  ネット言論統制




 数年前の尖閣諸島争奪紛争は、
日本の奪還作戦成功による一応の既決をみた。
 しかしその後の処理が捗(はかど)らず、
未だ平和条約は結ばれていない。

 と言っても本来、彼の国とは1978年に
平和友好条約を結んでいたハズなのに
彼の国の突然の尖閣武力侵攻をきっかけとして、
一方的に廃棄された経緯がある。

 そんな国との間に新たな条約を結べるほど
信頼関係を構築できるわけがない。

 だから双方の国民には
互いの国との平和を訴える機運など全くなく、
国交は断絶したままだった。


 そこにきての平助のサミットでの演説は
彼の国に大きな論争を引き起こす。

 曰く、あの生意気な小日本を
再び武力で鉄槌を下し、
今度こそ息の根を止めるべきとか、

 核ミサイルでもぶち込んでやるべきとか、
かなり感情的で、極端で物騒な意見が台頭した。


 当初彼の国のSNSでは
そのような怒りのコメントが
画面を賑わしていたが、
まず彼の国SNS大手の代表格
We〇hat(ウー〇ャット/微信)が、
次にWei〇o(ウェイ〇ー/微博)、
Bai〇u(バイ〇ゥ/百度)のチャンネルで
変化が現れる。

 それまでは日本の宰相を
貶(おとし)める目的の
平助のスナップ写真が多くUPされていた。

 即ち、就任当初の軽自動車の前席に、
窮屈そうに大人3人で乗っている写真や、
その後のママチャリで通勤する写真。
 更に大衆居酒屋で、他の一般客と
楽し気に乾杯するシーンや、鼻をほじるシーン、
ほろ酔い加減でネクタイのねじり鉢巻きをし、
カラオケを歌うシーンなど。
(如何にも下手で音程を外していそう)

 そのうち、(カエデなどの追求を受け)
スーパーで買い物をするスナップ、
 商店街の通りかかりのおばちゃんと
満面の笑顔で談笑するシーン、
どこかの小学校の運動会で
借り物競争や障害物競走で疾走するシーン、
運動会に参加したどこかの知らない一家に紛れ、
楽し気に一緒に弁当を頬張るシーンなど、
おおよそ一国家の宰相の日常とは思えない
一般人と変わらない写真が登場した。


 多分それらの写真は、
日本国内に潜入した彼の国の
工作員の諜報活動による
スキャンダル盗撮写真の一環が
故意に流出されたものだろう。

 しかし、彼らはやり過ぎた。


 あまりに屈託のない平助の表情や、
まったく緊張感のない笑顔だらけの
周囲の雰囲気は、無警戒で無防備過ぎる。

 更に平助のリラックスし呆(ほう)けた顔は、
彼の国のネット民を呆(あき)れさせた。


 翻(ひるがえ)って彼の国の主はどうか?

 どこに行こうにも、
最強の軍管区の屈強な
一個師団の護衛に守られ移動する国家主席。
(少々大げさかな?)
いつも厳(いか)つい顔で
権威を保とうとするその姿。


 どこもかしこも厳重警戒。
重装備の兵士の立哨と監視カメラ網。
そうしなければテロから
身を守れないくらい
多くの民に憎まれた元首って、
悲しくないか?

 言論を極度に統制し、
国中の隅々まで監視し、密告を奨励し、
国の指導に反する者は、
どんな些細な違反でも
容赦なく処罰される。


 一例をあげる。

 ある女子高生がショッピングの最中、
赤信号を無視して交差点を渡る
街頭監視カメラが写したと思われるシーンが
翌日のニュース等で大々的にテレビ放映去された。
その様子は 各階層から追及され、
その娘はたったそれだけのことで
学校に居られなくなったと云う。

 たったそれだけ?

 国民は良い行いをしなければならない。
少なくとも公共の場では
道徳的な行動をとるべきである。
 信号無視など以ての外。

 人間失格の烙印を押されたのだ。

 自由を奪われた監視社会。

 国民は一刻(いっとき)も油断できない
息がつまる想いの中、暮らしていた。

 しかしその反面、
一部の権力者や資本家は
信じられない程の力を持っている。
金と権力でやりたい放題、
この世を謳歌していた。

 ことに彼の国が数年前開催した
オリンピック前夜、
有力だった巨大企業『恒〇集団』が
未曾有の巨額負債を残し倒産した時は、
多数の国民が被害を受けた。
 それに加え、都市部と田舎の
構造的な経済収入格差。

都市部の戸籍を持つものは
エリートの暮らしが約束され、
農村部の戸籍出身者は
一生劣悪な低賃金労働者の生活に
甘んじなければならない。

『恒〇集団』倒産が招いたバブル崩壊は
貧しい者たちを更なる貧しさに放り投げられた。

 一方、特権階級は優遇され
手厚く守られる国家経済体制。



 その上、彼の国はひた隠しにしているが、
少数民族に対する差別や弾圧・残虐行為は、
被差別民族の反発、反抗を招いた。


 その国に住む多くの国民の不満は
頂点に達していたのだ。


 そんな背景もあり
平助の呼びかけはジワリジワリと
ボディブローのように効いてきた。





 小日本の宰相、竹藪平助への蔑みが
やがて自国への批判に変質した時、
彼の国の言論監視機関
『中央ネット監視統括処』が動いた。



 自国の政治体制批判につながる
コメントは次々に削除され、
ついには日本の政治や
竹藪平助に関するニュースや
情報までも遮断された。

 過敏すぎる反応により
完全な政治批判と
言論の封じ込めにより
彼の国の自由は完全に圧殺された。



 『天安門』の時のように。


 だが彼の国の一般庶民たちは
あの時とは違った。


 弾圧はもうたくさんだ!

 自由を奪い、国民を家畜のように
力で飼いならす党と政府。

 いつまでも思いのままにはさせない。


 抵抗。

 
 昔、『造反有理』という言葉を吐き
この国を変えた一派が居たが、
今こそ本当の意味での
『造反有理』を叫び、
立ち上がる時ではないのか?

※ 造反有理  

   1966年~76年まで続いたクーデター。
  社会の仕組みに反抗するのは理由があるとの意。
  貧しい農村青年が、試験の答案用紙に
  理不尽な社会制度を批判したコメントを残した。
  それがクーデター一派に利用され、
  スローガンとして国中に広がった。


 全国の一般ネットが一斉に動いた。
 新技術を駆使し、
削除された抗議のコメントを次々に復活させる。



 政府がネットの言論統制システムを行使するなら、
それを掻い潜りシステムを無力化するシステムを
庶民の一般技術者たちの手で開発し、
対抗したのだった。

 今や彼の国は日本やアメリカを抜いた
世界一の技術大国を自認している。
 皮肉にもその技術は
自らの首を絞める結果にも繋がったのだ。

 いくら言論を遮断しても、
自由を圧殺しても、雨後の竹の子のように
政府批判の嵐は止まない。

 彼の国4000年の歴史をみると分かるが、
ひとたび王朝や政府への
不満が爆発し反乱が起きると、
手を付けられない程の力を持つ。

 そうして歴代の王朝は滅びて来た。

 そして気の毒な事に、
国民を指導してきたあの党は
御多分に漏れず瓦解し、
党と政府は断末魔の叫びをあげた。

 その後暫く彼の国は
混とんとした勢力争いに終始する事になる。

 しかし、一度庶民が手にした自由を
再び失うのはまっぴら御免だ。

 名も無きネット民たちが主体的に動いた。

 小日本のように
国民が主権を持つ
直接民主制を打ち立ててはどうか?

 自分たちの国は自分たちで作る。

 とうとう実力者たちではなく、
名も無き庶民が実権を握った。


 彼の国でも人口17億の壮大な実験が
始まろうとしている。






    第11話 カエデの恋?




 カエデはジャ〇ーズに首ったけである。

スマホの待ち受けはもちろん拓哉。

 時々スマホを見ながら
平助の顔と見比べる。
そして平助に対し、
顔をしかめ、口をななめに尖らす。

 渋い顔。

「おい!何 見比べてんだよ!!
僕の顔に何か文句あっか?」

「別に、何も。」
「何か感じ悪いな。
言いたいことがあるなら云えよ!」

「平助に云ったって
何も変わらないじゃん?
平助が突然白馬の王子様になれる訳も無いし。」
「何を言ってる?
白馬の王子様?
この僕がカエデの白馬の王子様?
何で?
それに内閣総理大臣じゃダメか?」
「時給1800円以下の大臣じゃ、
ボロアパートの引っ越しもできないじゃん?
しかも午前中は時給1030円だし。」
「残念でした。
先月から東京都の最低賃金も引き上げられて、
午前中の時給は1041円に上がったんだぞ!
 どうだ!凄いべ⁈」

「フッ!」

「フッ?今、鼻で笑ったな?
この前のサミットの功績で
毎月300円の年金もついたんだぞ!
どんなもんだい!」
「え?あの時の演説は
国益を著しく損なったと
ペナルティを受けたハズじゃ?」

「ところがゴッコイ、
その後あの国に政変が起きた事で、
緊張する国境警備に罹(かか)る
費用が削減されたから
一転して手当が出るようになったのさ。
いうなれば僕は
この国を救ったヒーローなのさ。」
「へぇ、何と冴えない顔したヒーローだ事。
テレビで見るヒーローって
もっと颯爽とした姿で、足も長くて
キリリとした顔をしているものよ。」
「へぇ、でもこの前、
カエデったら僕の演説をテレビで見ながら
ウルウルした目で
うっとりした顔してたの知ってるぞ。
デレ~としてたって報告があったぞ
ホントはボクの事好きなくせに。」
「何、自分に都合の良いように
あり得ない事をでっち上げてんのよ!
この嘘つき!!
私が平助を好きになる訳ないじゃん!
勘違いにも程があるわ!!」
「なに顔を真っ赤にしてムキになってる?
何なら試しにチューしてみっか?
とろけるような気持ちになるぞ。

ん?ん?・・・。」

ワザとに顔をカエデに近づける。

思い切り力を込めて突き飛ばし、
「このセクハラスケベオヤジ!!」
明らかに狼狽(うろた)えるカエデであった。


 しかし次の日の昼食用の弁当は
珍しくカエデの手作りで、
蓋を開けるとご飯の上に
「桜でんぶ」が大きなハートマーク状に
ちりばめられていた。

弁当の箱の上に二つ折りのメモが添えられて
「罰として今度の休日に
海にでも連れて行きなさい。
このスケベオヤジ!」
と書かれていた。


 にやける平助。

その表情をエリカは見逃さなかった。



   つづく



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