uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣 ~時給1800円~ 第8話、第9話

2021-10-23 14:54:55 | 日記
      第8話

 

 今日はいつになく、仕事が早く片付いた。

多少季節外れだが、カナダサミットを目前にして
かねてから約束していた
内輪だけの牡蠣(かき)鍋パーティーをする事にした。

 もちろんそれはサミット壮行会を兼ねてはいたが、
素人外交に大いに不安を残す平助に、
色々レクチャーするためでもあった。
 
 首相官邸の小会議室のテーブルと椅子を
部屋の隅に追いやり、
何処からか用意した炬燵(こたつ)を
2セット並べ真ん中に置く。

 今日のメンバーは1のテーブルに
私、平助の他、いつもの田之上官房長官、
角刈りの杉本、外相の井口
(元『いっぱいしゃべれる英語塾』講師)、
2のテーブルにお目付け役の板倉、
財務省主計局長の佐藤のおばちゃん、
更に何故か、呼んでもいないのに
カエデとエリカが紛れ込んでいた。

 それぞれのテーブルには
グツグツ煮え立った鍋と
缶ビールやレモン酎ハイやらが
賑やかに並んでいる。


 酒も入り、縁もたけなわの頃、
カエデや佐藤のおばちゃんが絡んできた。

 カエデ「こら、平助!
最近我々庶民に対する態度がなっていないぞ!
私に対する感謝も足りないし。」

(カエデ・・・、目が座っているぞ!
飲み過ぎじゃないか?)

間髪入れず佐藤のおばちゃんが、
「そうだ、そうだ!!
たまにはスーパー≪激安≫にも顔を出しなさい。
総理になった途端、お高く留まって
買い物もできなくなったのかい?
他のレジ仲間も
最近全然平助の顔を見てないと
苦情の申告があったぞ。」


 何だか不満のはけ口の標的が
自分に向いているようだ。


 平助はおもむろに
胡坐(あぐら)から正座になり
襟を正した。

 そこに調子に乗ったエリカが
臨時の議長を申し出る。



 ここからネット政変以前の
国会答弁を真似た
擬似質疑応答が始まった。



 エリカ議長「内閣総理大臣 竹藪平助 君」

 平助が手をあげる。

「エー、その件に関しましては
内閣官房局と日程の調整等
すり合わせをいたしまして、
国民の皆様のご期待に応えるべく、
鋭意努力する所存でございます。」

 佐藤局長「議長!」
 エリカ議長「財務省主計局長 
       佐藤鯖江(さばえ) 君」

「総理は鋭意努力するって毎回言っているけど、
全く進展していないのはどういう訳ですか?
国民はその点に大いなる不満を持っているのです。
今回の総理はキャバクラ
カラオケだのにうつつを抜かし、
国民生活に全く目を向けていないじゃないか?
との疑念をもっている現状を直視すべきでしょう。
ちゃんと責任を取るべきではないですか?」


 平助 (あんたは官僚代表だろ?
    政府側の人間じゃん!
    何で野党側に立った追及してんねん。
    腹立つ!)


 平助「議長!」
 エリカ議長「竹藪平助君」

「え〜、キャバクラやカラオケの件は
私の不徳の致すところとして
誠に遺憾に思っております。
国民の皆様に対し、
謹んで心よりお詫び申し上げます。

 目下内閣の閣僚及び、
各省庁の主だった官僚が総力を挙げ、
国民生活の実情の厳しさに鑑みた
政策に取り組むべく、
新たな要望アンケートの策定に
取り組んでいる最中である事を
ご報告申し上げます。」




 井口外相「総理!総理!!」


 エリカ議長「外務大臣 井口竹蔵 君」


 「オゥ〜!
遺憾に思うって毎回毎回言ってるけど
その新たな要望アンケートって
いつ出来るのかタイムスケジュールを
国民の前で明示すべきでしょ!
 大体、総理個人の不徳の件で追及してんのに
何故に要望アンケートが出てくんの?
 この、イケズ!」



 平助 (外相の井口まで
    何でワザと英語訛りで裏切るねん!
           しかも何かオネエっぽいし)


    以下省略



此処(ここ)での不毛な答弁は、
一旦切り上げたい。

(はぁ、(*´Д`)・・・)


 




     第9話  サミット(先進国首脳会議)




 平助は成田空港に居た。

 たくさんのマスコミに囲まれ
意気込みを聞かれる。

平助は神妙な顔で、

「私、竹藪平助は、
一般人の国民代表として恥ずかしくないような
外交を成し遂げる事をここにお約束いたします。」


 様々な懸案に対する質問もあったが、
ここも省略。

 国際線北ウイング758便の
一般搭乗口から入っていった。

 「またエコノミー?

国際線のエコノミーは搭乗時間が長い分、
身体が痛くなるんだよね~、
何とかならないの?」

「ならね。」

冷たく一言にて言い放つ。
最近板倉は私に対し、敬語を使わない。

「チッ!」
心の中で舌打ちした。


飛行機の中では、
覚えなければならない議題や懸案が
たくさんある。
狭い空間で書類を広げて読むのは
疲れるし、窮屈なんだよね〜。

しかし、
せめて最低限の知識を持たなければ
各国の首脳たちに馬鹿にされる。
読んでおかない訳にはいかないし。


 日本における国際紛争の
安全保障問題はともかく、
地球環境問題と難民問題は
繊細で微妙な問題であり、
下手な事は決して言えないのだ。
(以前国際環境会議で
二度も日本🇯🇵を名指しで
「化石国」と揶揄した理不尽で
無礼な国際勢力があった。)
 
 3度乗り継ぎ首脳会場の
カナダ南東部、プリンスエドワード島
シャーロットタウン空港に降り立った。

 そこは平助にとって
一度は行ってみたかった場所である。


 今回は観光ではなく、
国家を背負った重要な仕事で来たのだから
浮かれている場合ではなかったが。

 厳しいチェックを終え会場内に入る。
そこでまず、
首脳たちが一堂に会する機会に遭遇した。

 平助に緊張が走る。

 平助は勿論(もちろん)英語を解せない。
ハンディAI翻訳機『喋(しゃべ)れるクン』
だけが頼りである。

 でもこの機械、結構優れもので
こんなシチュエーションでも大いに役に立った。

外国語が飛び交う中、
機械が会話を拾ってくれる。

 「あ~!解る、解る!
凄いぞ!これ!!
他の首脳たちが何を喋っているのか
瞬時に翻訳されてやんの!!
これは使えるぞ!!

どれどれ・・・。」

まず、近くにいたカナダ首相が
フランス大統領と話す内容にピントを合わせた。

 カナダのペンス首相が平助をチラチラ見ながら
「あの日本の首相はさえない顔してるね。
ついこの前までただの一般庶民だし、
多分全然政治の事など分からないだろう。
 今回も対日政策交渉はちょろいね。」
フランスのルイ・シャルル大統領も軽く頷く。
「そうだな、今回も地球環境対策の拠出金を
沢山巻き上げてやるさ。」

 平助は悔しく、泣きたい気持ちになった。
怒りを押し殺し、二人に近づく。
 「やあ、お初にお目にかかります。
今回の会議、どうぞお手柔らかにお願いします。
 ところでこの会場となったプリンスエドワード島って
とても良いところですね。
 私はすっかり気に入りました。」
翻訳を通した平助の言葉を聞いたペンス首相は、
何食わぬ顔で
「我がカナダの誇るプリンスエドワード島へようこそ!
私達の『アン』も
貴方を歓迎していますよ。」
と応えた。
(フン、この無知な日本人には
この意味が分からないだろうよ)

※ アン  言わずと知れた『赤毛のアン』の舞台。
    プリンスエドワード島は世界中からの
    観光客でにぎわう、物語の聖地である。  


 しかし平助は偶然にも、
熱烈な赤毛のアンの愛読者だった。
 小学校時代、友達が少なかった平助は
ろくに宿題や勉強もせず、
小学校や児童会館の図書室で
『名探偵シャーロックホームズ』シリーズや
『怪盗ルパン』シリーズ、『海底二万里』、
『アルプスの少女』など、
世界の名作を読み漁っていたのだった。

 だからプリンスエドワード島に来るのを
楽しみにしていたのである。



「とても嬉しく思います。
『e』付きのアンだけでなく、
ギルバートやマリラ、
ゴク、マゴクや、シャーロッタ4世、
夢の家やジム・ボイド船長、スーザンベイカーや
美人のレスリー・ムーアに会えるような気がします。
イングルサイド(炉辺荘)のモデルの家って
実在するのでしょうか?
それから私もウォルター兄さんみたいに
アンの娘リラに「リラ・マイ・リラ」
と呼びかけてみたいですね。」

と、平助は目を輝かせて言う。


※ どれも物語に登場する人物や物。
但し、あの有名な赤毛のアン第一話のみではなく、
第10シリーズまで読み込まないと
咄嗟に出てこないセリフである。


 ペンス首相は言葉に詰まった。

まさかこの短足のさえない
パンピー(一般ピープル)日本人が
我がカナダの誇るアンの物語について
ここまでの知識があるとは思っていなかったのだ。

 (油断した。こいつは迂闊(うかつ)に
侮った態度はとれないかも?)

 ペンスもルイ・シャルルも身構えた。

 

 今回のサミットでは一般討議の前、
平助にも演説の機会が与えられた。

 平助は日本の政府から託された
政策を一通り披露した後、
 自分の言葉でこう締めくくった。



 「我が国にも数年前、
国際紛争による戦禍が押し寄せました。
 その時の尖閣諸島問題は
一応の解決を見ましたが、
双方の国民に不満はくすぶり続けています。

 領土問題は国家の一大事項。
そう簡単に解決できる筈はありません。

 もちろん私たち日本の民にとって
彼の国の主張は看過できません。

 正当性は我にあります。

 その双方の立場を踏まえた上、
彼の国の反発を覚悟で
敢えて私は彼の国の国民に訴えたい。


 貴方達に問う!

 国の幸せ、
国民ひとりひとりの幸せとは何か?


人を騙し、押しのけ、強引に奪い、
よりたくさんのお金を、
得る事が幸せなのか?
より広い領土を
力ずくで奪う事が幸せなのか?

今一度考えていただきたい。

他人の幸せを踏みにじり不幸にし、
自分の幸せを追求する事が
果たして本当の幸せを得る
結果に繋がるのか?




 私はつい最近、
南米のある国を訪問しました。

 その国の元大統領は清貧の人でした。

自分の報酬を貧しく困窮した民に施し、
誰もが幸せに暮らせるよう
常に努力を惜しまない
偉大な政治家だと思いました。


 彼曰く、
「人生は短い。そして
すぐ目の前を通り過ぎてしまう。
命より高価なものなど存在しない。」

「貧乏な人とは
少ししか物を持たない人ではなく、
無限の欲に溺れ、
いくら得ても満足しない人の事だ。」

 「人は物を買うとき、
お金で物を買っているのではない。
そのお金を貯めるための
人生を割いた時間で買っているのだ。」

 「私たちは進歩し発展させるために
生まれてきたわけではない。
 幸せになるために
この世に生を受けたのだ。」





 ※ 2016年4月7日の私のblog
     ウルグアイ元大統領 ホセ・ムヒカ氏を紹介した
   『世界で一番貧しい大統領来日「幸せとは」』より



 「ご承知の通り、私の国日本でも
そんな理想的な境地に
達しているわけではありません。

 自分たちも出来ていないくせに
そんな偉そうに語るな!

 と仰(おっしゃ)りたい気持ちも分かります。

でも、それができなければ、
人類にとって未来は無いのです。
 地球環境も難民問題も
解決できない原因は、
人類の強欲にあります。

 私たちの国は
政治の実権を国民の手に取り戻しました。
 今まで国民主権と云いつつ、
その実権は国民の代表に過ぎないはずの代議員と、
国民の公僕であるはずの官僚が握っておりました。

 その実権を彼らから取り戻し、
自ら国権の主権者として間接民主制を取りやめ、
直接民主制を敷いたのです。

 もう我々は自分たちの願いから乖離した
政策はとりません。
自らの責任で自ら希求する
理想の政治を実現する力を得たからです。


 これからは政策の実行者による
不正を許しません。
 今までの政治がはからずも許してきた
弱者の人格と生活権を不当に堕としむ
理不尽な社会の仕組みを許しません。


 私は見ての通り
ただの普通の庶民です。
私の国日本国はそんな私のような
何の力も能力も持たない一般人が
首相になり、この壇上に立っても、
こうして一国の代表者として
その責務を全うできる仕組みを
確立する事ができました。

 次に私たちがするべきことは
不正と理不尽を正した後、
国民全員が幸せを求め、
獲得できる自由を勝ち取る事です。

 それは煩悩や欲望を貪る
鬼畜のような生活を意味するではなく、
自分を高め、他人を尊び、
共に幸せを実現できる社会を
実現してみせる事です。

 流した汗の正当な成果を実感し、
幸せを達成できる社会です。


 私は彼の国だけではなく、
全世界に向け、
この理念を発信したい。
実現に向け、共に立ち上がる人たちと
手を取りあいたい。

 格差も戦争も環境破壊も
解決できるのは人類の英知だけです。

 今日私はそのために
この会議に参加しこの壇上に立ちました。

ひとりでも多くの賛同を得られる事を
期待します。

 以上。

 日本国内閣総理大臣 竹藪平助。
 


 
  
 この発言は全世界に流れた。

そして彼の国は当然のように
この発言に対し反発し
炎上した。

 


余談だが、平助総理は帰国後、
余計な発言で国益を損ねたとの理由で
『お前の母ちゃん出ベソ』
20時間浴びせかけられる刑に処せられた。

 時々処刑室から「ギョエ~!!」
との奇声が聞かれた。



 可哀そうに・・・。



 しかしその後、
彼の国にも冷静に平助の発言を評価し、
自国の人権侵害と閉鎖的、
強権的権力集中主義の政治体制に
批判的な勢力が芽生え始めた。


あの平助でも一国のトップになれるんだ。

彼の国は憲法より党の指導が上位にある。

党の指導って何だ?
ろくな政治もできなかったくせに
党の指導?

国民を馬鹿にするにも程がある!!




 見た目さえない平助でも、
彼の国に変革の種を撒くことができたのだった。



    つづく


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4 コメント

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Unknown (桂蓮アップルバウム)
2021-10-29 02:46:46
じーわりと面白いです。
噛めば噛むほど味がでるみたいなー
返信する
Unknown (uparupapapa)
2021-10-29 03:41:04
桂蓮アップルバウム様

コメント📝ありがとうございます😊

『噛めば噛むほど味がでる』
最高のお褒めの言葉だと思います。

物語の設定や状況説明が
どうしても硬い内容と表現になってしまうので
せめて登場人物や、やってる事に
面白みを持たせられたらとの思いで毎回苦心しています。

今後の展開も面白いと思っていただけるよう
頑張って描いていくつもりですので
これからもどうぞよろしくお願いいたします😊
返信する
Unknown (桂蓮アップルバウム)
2021-10-29 06:53:26
苦心なさっていたとは!
一筆書きみたいな勢いがあるので、
川のように自然に流れている、と思っていました。
全然、苦心の感じがなく
楽心の感じです。
皮肉とか逆説とかのフランスコース料理みたいです。
和食でいえば、出汁を丁寧にとって
誤魔化ししないシェフみないな感じですかね。
読みながら、理解できる知識があることとに安堵、あるいはありがたーく思ったりします。
返信する
Unknown (uparupapapa)
2021-10-29 07:16:00
物語の大本の流れは確かにそうですが、
合間に一息ついた話など、
読んでいただく方々に楽しく、
面白く思ってくださるようできるだけ
工夫しています。
でも毎回UPした直後から、
不安と作品の出来に対する
後悔に苛まされています。
もっと会話等のセンスを磨き、面白いと思っていただける作品をたくさん発表できるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
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