uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣 ~時給1800円~ 第6話、第7話

2021-10-18 05:41:54 | 日記
     第6話



 平助の所信表明演説の後、
カエデと秘書のエリカの平助に対する
言葉遣いに変化が見られた。

 カエデが平助を呼ぶとき
「サルマタヒコ」から「平助君」に戻ったし、
エリカは目を見て話すようになった。

 また先日は晩御飯のおかずが一品増えたし、
何と!あのカエデが化粧をしている!!

更にふたりとも話すときの物腰が
柔らかくなったような気がする。

 今日は官邸での執務の合間、
3時のおやつに『午後3時の紅茶ミルクティー』と
『大正の超特大プリン』が出された。

 どうやら私の嗜好を
カエデからエリカに伝えられているらしい。

 でも出来れば、せめて紅茶は
ペットボトルのまま無造作にもってくるのではなく、
ティーカップも持ってきてくれると嬉しい。

 甲斐甲斐しい物腰で
「プリンと紅茶でございます」
と出しながら言い、ワザワザ
「ホントはお出しするのは
秘書である私の仕事ではありませんが。」
と付け加える。

 「あ、ありがとう。」

 どういう風の吹き回しだろうと
警戒気味に応える。

 「ところで総理、貴方は顔に似合わず
演説が上手いのですね。
 私からプラス3点の評価をあげます。」
と云う。

「プラス3点ってなんね?
エリカから3点貰ったら何かいい事があるんか?」
「100点貯めると私から超豪華景品が進呈されます。」
「超豪華景品?
それはなんね?」
「それはまだ秘密です。」

 また平助の悪い癖、
大人の妄想にドップリ浸かるような
意味深なエリカ様のお言葉を頂き、
ご満悦な平助であった。


 「デヘ、デヘ・・・。」
閣僚会議の間中、
頬の筋肉が緩みっぱなしの平助に
官房長官の田之上が
「何かいい事あった?」
と小声で聞いてくる。
「これからいい事がやって来るんですヨ。
俄然仕事を頑張ろうと気力が湧いてね。」
「え?それって何かあったな?
狡いぞ!ボクも一枚かませて!」
「シッ!皆睨んでいるよ !」
何食わぬ顔で会議を続行する平助。
それ以上話題に触れぬよう、煙にまいた。

しかしその日の夜は居酒屋『はしご酒』で
田之上とSPの角刈りの杉本という
いつものメンバーで次の会議が開催される。

 この日の議題は
杉本のヘアースタイルが
何故角刈りなのか?だった。

 彼は語る。
「自分が角刈りなのは
尊敬する先輩師匠が角刈りだったから。
 その人は凄い人で
伝説の身辺警護人(SP)だったな。

 その人はクイーンの専属で、
来日コンサートの度に警護を担当したんだ。

 クイーンって知っとるけ?


日清 カップヌードル CM 「フレディマーキュリー(クイーン)」篇



 その先輩の仕事ぶりや
所作や考え方にフレディが共感して
チリチリの長髪から同じ髪型にしたって
有名な逸話があるんだ。

 そんな先輩だから
自分も憧れてね。
 この世界に入ったのも、角刈りなのも
その人の影響なのさ。」

「へえ!」

二人から『へえ』が3回押された。


 影響を受け易い平助と田之上は
翌日、髪形を角刈りに変えた。

 その顔を見るなり、
カエデが『プッ!』と吹き出し
涙目で笑いながら
「よく似合ってるよ!平助。」
と云った。

 何か馬鹿にされてるなぁ。
そんなに似合ってない?
 自分じゃかっこ良いつもりなんだけどな。





        第7話



 遡(さかのぼ)ること数年前。
202X年は激動の年だった。

 あの国で開催された冬季オリンピックは
コロナパンデミックの傷も癒えぬのに
蔓延させた責任も取らず
厚顔を貫き開催が強硬された。
世界的なブーイングのまま幕を閉じ
禍根を残す。

 更にあの国は
オリンピックが終了した途端、
台湾と尖閣諸島に突然軍事進攻してきた。

 しかしそれは自衛隊、台湾軍、
アメリカ軍の実力阻止に会い、
目的を達せぬまま断念する。

 その結末の波紋は大きく、
当然日本との関係は悪化する。

 


 公設ネットアンケートは
その怒りから炎上した。


 当然日本は断交を決断、貿易を遮断した。
もちろん経済は大きく混乱したが、
この期に及んで経済的損失や
他からの調達困難資源の問題などで躊躇してはいられない。
日本は攻撃を受けたのだ。


 尖閣侵攻の時は国防に関わる非常時なので
先代内閣は一時政務凍結され、
非常時用に常に待機していた
緊急事態シャドーキャビネット(影の内閣)
が発動された。

 侵攻による軍事行動が終息すると
直ちに当時首相職等を担っていた
数代前の内閣が復権。
 政務に戻る。

 でもこれからが大変。
戦後処理に莫大なエネルギーが費やされた。

 頻繁にネットアンケートが開催され、
次々と今後の対応策が発表される。


 半導体やディスプレイ製造など
断交により不足した基本産業分野を補うため、
国内産業強化策が策定される。

 ・町工場復興育成施策。
 ・派遣労働改正法による
  製造業労働者の再正規社員化と
  職場環境安定化と産業体質改善策。
 ・台湾プラスTPPとの更なる連携強化策の推進による
  あの国の侵略阻止包囲網の形成。
 
などが次々と実施された。


 そうした歴代の内閣が引き継いだ状況を踏襲した
平助の内閣も多忙を極める。
その後竹藪平助内閣がどうにか軌道にのり始め、
ひと段落ついたところで
外遊話が持ち上がった。

 2か月後にはカナダでサミットが開催される。

 もちろん主要議題はあの侵略主義国への対処。

平助にそんな交渉の大任を任せるには
あまりに外交経験不足。

 それ故まず外遊経験を積ませ
外国人との会話と外交術を体験させる事となった。

 それには相応しい国を選定する必要がある。
 平助が目指すべき政治スタンスに鑑み、
南米のある国が選ばれた。

 その国の元大統領は
世界一の貧乏元首と呼ばれていた。

 彼は自らの報酬を
貧しい国民に分け与え、
自分は自らの農場から得る僅かな収入で生計を立て
清貧生活を続けながら政務に邁進した人物。
 そんな国に行って
慎ましさと国務に対する誠実さを
学んでこいという訳だった。

 彼から学んだ事は
「私たちは多くの富、科学、技術が発展した時代に居るが
『私たちは幸せか?』」との問いかけや、
「周りの人たちと愛情を育む事などに人生を使ってほしい」
と呼びかけだった。

その国は日本と比べると貧しいのかもしれない。
でも日本の国民たちは彼らの国より
幸せに暮らせていると胸を張って言えるのか?

平助は政治が人を幸せにする万能の方策とは思わない。
でも誰もが幸せを掴みとるための機会は
平等にあるべきであり、そのための社会制度は
整備されるべきであると常々思っていた。

 彼の国の元大統領は
「幸せとは富や物質に執着する事ではない」
と云った。

 大切な事は他にある。

 それはそうであろう。
でも平助は思った。
 理不尽な貧困は悪であるとも。
 不正義な悪が社会に蔓延し
それが原因で人々から希望や
努力しようとする意欲を奪ってはならない。
幸せとは富や物質ではないとしても、
国民の生活意欲が後ろ向きでは
果たして幸せと云えるのか?

 お金だけに目を奪われず、
国民が皆、笑顔で暮らせる社会制度を作ろう。

 日本に向かう帰路、
エコノミークラスの狭い座席の上で
平助は新たなプランを練っていた。


 一月後はサミットに臨む。
外交と内政に心を新たにした平助だった。


 そんな平助に
カエデから思わぬプレゼントがあった。

 それは高度な翻訳機能がついた
最先端AIハンディ通訳機
「喋れる君」だった。

 これでサミットの間中、
英語やフランス語、ドイツ語などを
話せないという理由で
メンバーから孤立する懸念は無くなった。


 「ありがとう~!カエデ!!」
と喜び勇んで抱き着こうとした平助を
ピシャリ!と平手打ちを喰らわせるカエデであった。



     つづく





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