1976年の夏、私はユースホステルを利用して旅をしていた。永平寺に行くため京福電鉄を待つ、ほんの数時間、福井駅の周辺を歩いているうち、小暗い通りに本屋を見つけた。「百合香書房」の看板を掲げ、三島由紀夫、花田清輝の本が置いてある。そこに大学生らしき客が店主としゃべっていた。その話し方と本の種類から、文学好きだった大学時代の福井出身の友人を思い出した。
かれは私より2歳年下で、高校をサボっては町の図 . . . 本文を読む
31歳でYHつまりユースホステルを初めて体験し、それからしばらくは夢中になった。日記を見ると、最初の1ヵ月足らずの間に6回もYHの旅をしている。
大阪(長居)鹿児島(えびの)宮崎(日南)山口(山口)福井(永平寺)東京(御嶽と市ヶ谷)東北(毛越寺・福島)
と、東奔西走もいいところだ。住居は東京にあったが、当時の私は仕事もなく、学校にも行かず、未婚で、糸の切れた凧のように空中に浮んでいたから出来た . . . 本文を読む
数ヶ月来の規則的な日々にうんざりして、衝動的にひとり旅に出た。準備に2日しかなくて、JRの切符を買うやら、ホテルを予約するやら慌しいこと。目的地は島根県の西方、益田と津和野。益田は昨春、石見美術館の「モダンガールズあらわる」のポスターを見てから、素敵な近代的な町のように想像し、いつかはと思っていた。
着いてすぐ、暑い盛りに日傘をさしてグラントワ(県立石見美術館)へ。今は6月の中尾彰展と7月の黒田 . . . 本文を読む
阿国の墓は、大社から5分ほど、この石段の上にありますが、
水谷八重子とか演劇関係者が、敬意を表して訪れているようです。
近くに「連歌庵」もあります。阿国は晩年、連歌を楽しんだとか。
刀を差して、大きな髷を結い、陣羽織のようなものを着た、
一見、天草四郎かと思わせる若衆のレリーフが手前にありました。
「オヤ、これは誰だろう?」と思ったら、なんと、阿国なんですね。
16世紀の末から17世紀にかけて . . . 本文を読む
3ヶ日も終り、すこし閑散となった5日に初詣。
イエ、信仰心などからではありません。
(クリスマスについてああ書いた手前・・・)
出雲大社へ行くのはこれが3回目です。
1回目は、1980年5月、義父と3人で一畑電車に乗って。
2回目は、1988年8月、夫の兄弟や姪と総員5名が1台の車に乗って。
3回目の 2009年1月は2人だけ、自家用車に夫の運転です。
義父も長兄も亡くなり、18歳だった姪は . . . 本文を読む
神在月(旧暦10月)も終りに近づきました。2008年は10月29日~11月27日。
新暦10月の中旬には、松江市内の老舗菓子店によるお汁粉の
無料提供などもありましたが、神事はやはり旧暦で行われます。
出雲大社で会議を終えた神々は、次に松江市鹿島町にある佐太神社へ。
これは8世紀創立の「出雲国風土記」にも載っている神社です。
ここでねぎらいの宴会が盛大に開かれて、順々に
神立(かんだち)橋から全 . . . 本文を読む
大山(だいせん)は松江から東へ50kmで、距離と親近感で
東京都における高尾山に似ているが、ただ違うのは
こちらは富士山のような形で、標高1700m以上ある点だ。
また神奈川県の大山(おおやま)とは、信仰の山という共通点がある。
山にも成長と衰退期があるらしい。これは後者それも末期の崩れつつある山で
見るからに稜線が柔らかい。今のうちだと、老母と3人、お天気の日に出かけた。
前面がコビトカバを . . . 本文を読む
ユネスコ世界遺産
登録年:2004年
場所:メキシコシティ
建築年:1947年
建築設計者:ルイス・バラガン
「旅」のカテゴリーに入れましたが、これはまだ行ったことのない、
これから行くかどうかもハッキリしない旅です。
建築家ルイス・バラガン(1902-1988)につきまとう
「孤独・静謐・郷愁」という言葉に、共鳴しました。
と言っても、そもそも、彼の名を知ったのが、今夕のNHKBS放 . . . 本文を読む
近鉄奈良線の河内小阪(かわちこさか)駅の南東12分のところにある司馬遼太郎記念館。いつか行かねばと思っていたが、ようやく、梅雨晴れの一日、その望みがかなった。 近鉄奈良線は私にとって、40年以上前の学生時代、お世話になった路線だ。今では難波までのびているが、当時は奈良ー上本町間で、東の終点・奈良に住み、西の終点・上本町にある(偶然にも、司馬さんと同じ)学校に通っていた。 車窓に見るだけで降りたこ . . . 本文を読む
宿毛(すくも)は高知県の西端の小さな町。
1971年今井正監督、岩下志麻主演で映画化された、大原富枝の
「婉(えん)という女」に描かれている、野中兼山一族の幽閉の地である。
江戸時代の信じがたい人権無視、家老として失脚した本人の死後に、
妻子が(乳幼児にいたるまで)幽閉され、それは最後の男子が死ぬまで、
40年間続いた。4歳だった婉は44歳になって初めて世間に出る・・・
病弱のため、蟄居を余儀な . . . 本文を読む
北海道へは3回行ったが、いつも1人旅だ。
1981年~83年、30代の後半に、毎年出かけている。
時期はベストシーズン以外を選び、真冬(1月末ー2月半)とか
春先(4月下旬ー5月上旬)とか秋(9月ー10月初め)とか。
へそまがりなのと、混雑を避けるための両方の理由から。
各回とも、10日から20日位かけて、道南以外の北海道をくまなく
廻ったことになる。
釧路、根室、川湯、網走、帯広、摩周湖、小 . . . 本文を読む
20年あまり前、40歳を目前にして、欧州を一人で旅したことがある。
格安券でパリに飛び、北駅を起点にして、ユーレイルパス(15日券)で
ドイツ~北欧を一回りしてまたパリに帰った。
電車を最初に降りたのは北ドイツのリュベック。ハンザ同盟の盟主で、
今や世界遺産としても有名だが、当時の私にとっては、単に小ぢんまり
した美しい町に過ぎなかった。と言うのも、昔読んだトーマス・マンの
「トニオ・クレーゲル」 . . . 本文を読む