私が、この会に入会したきっかけは、ズバリ「滝」だった。
志水哲也氏の写真集「日本の幻の滝」に衝撃を受け
自らの足で現場へ行き、その目で見てみたいということで、
山など全く知らない素人でありながら、本当に勢いで山岳会へ入会した。
件の「日本の幻の滝」にて「秘瀑」として紹介されている「剱沢大滝」は、
この写真集の中においても一際特別な存在であり、
また実際にも日本一の幻の滝にふさわしい存在だと思う。
そんな滝への思いはあったが、自分にとっては程遠い存在で
一生かかっても叶えられない夢であると思っていたのに、
まさか入会3年目で、こんなチャンスに巡り合えたことには、
今回同行してくれた(というよりは自分を支えてくれた)
武さん、沼ッチには、本当に感謝しています。
<日時および行程>
10月8日 扇沢駅→(トローリーバス)→黒部ダム→日電歩道→十字峡平
10月9日 十字峡平→踏み跡より剱沢右岸尾根→剱沢入渓→剱沢大滝(I滝)→十字峡平
10月10日 十字峡平→黒部ダム→扇沢
<メンバー>
SL:沼ッチ、CL:武さん、カメラマン:スダッち
前日深夜に扇沢駅に到着する。上の舗装の駐車場は満杯で、テントを張る隙もないので
スノーシェッド脇の砂利の駐車場へ車を駐車しテントを張って軽く一杯飲み就寝したが
一晩中出入りする車の音でよく眠れなかった。
10月8日
4:30まだ日が昇らないのに沼ッチにたたき起こされる。
眠い目をこすりつつテントの外を見てみれば、テントの張ったスペース以外は
満員御礼の込み様で、慌ててテントを撤収する。
扇沢の始発は6:30分なのでのんびり準備・・・と思っていたが、
こんな時間から戦闘態勢の登山者が駅に向かっている。
急いで朝食を済ませ、準備するが、なんせ今回は、あの剱沢ということもあり
装備も、ロープ50m×4本を筆頭にガチャ類も先日の谷川岳より多いくらい持っていく。
そんな訳でパッキング等々で5:30分扇沢駅に向かうと既に券売り場は長蛇の列であった。
何とか始発の都心の満員電車のようなトローリーバスに乗り黒部ダムへ到着。
到着するなり黒部川へ向かう出口付近で駅員と登山者が何か話している。
どうも、10月5日に起きた地震とその後の余震で十字峡手前で登山道の
大崩落があり通過出来ないとのこと
また、負傷者が2名おり未確認ながらうち1名は亡くなったようだと・・・
当然、駅員からは危険ですので・・・云々言われたが、
正直ここまで来ていてすんなり引き返すことなどできず
とりあえずその大崩落とやらの現場を見て判断することを告げ
本当に自己責任のもと旧日電歩道へ向かった。
※後に知ったことだが、上記の情報の通り
1名死亡、1名重症とのことであった。
ご冥福をお祈りするとともにお見舞い申し上げます。
日電歩道へ降り立つとまだ真新しい落石がゴロゴロしていた。
それも普段は落石など起こりそうにないような樹林帯の中などにもあった。
地震により至る所が落石の巣になっているようで全く気が休まらない。
内蔵助谷手前の旧日電歩道対岸の崩落現場。
崩落した土砂が堰止湖を作っていた。
内蔵助谷出合。丸山東壁
ここで、一休みし、もし大崩落の現場が通過できそうになかったら、
「ここでも登攀するべ」という話になる。
背中の重荷と落石の恐怖から来る緊張感で、
結構体力を消耗するので一つ一つの休憩の時間も長くなってしまう。
やっとのことで、十字峡手前の崩落現場へ到着。
そこには、完全に道という物はなく、
高さ100m、幅20mにわたって斜面が崩落していた。
上部からの巻きを考えるが、
上部は急なスラブ帯となっており登っても
トラバースは絶望的。
下に降りれば、落石のリスクはあるが
登り返せる場所を見つければ可能性はある。
ただ、懸垂トラバースで向こう側の登山道へ行ければ登り返しの労力もないだろうということで
武さんが懸垂トラバースを試みたが、これは失敗。
約50m下の黒部川の河原に降りて登り返せるポイントを探ることに。
武さんが下っている間、轟音とともに岩が落ちてくる音が谷中に響き渡っていた。
すぐ下流のルンゼで岩雪崩があったらしい。
2番目に私が懸垂下降しラストの沼ッチを待つ。
この間、だいぶ体力も回復してきたので、登山道へ戻るルートを探しに行くと
崩壊地すぐ下流の先程岩雪崩が起きた滝になっているルンゼ以外は、どこも登れそうになく、
意を決して、ルンゼの右側に空身で取りつく。
(この間2人は、ロープの回収やらでかまってもらえなかったのでフリーソロで登った。汗・・・)
↓はFIXロープを登る武さん。
ここを登り返すと、十字峡平はすぐだった。
剱沢平の予定だったが、ここに来る登山者は皆無だろうということで、
“緊急ビバーク”とさせていただいた。
続く・・・
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