ソプラノ和泉聰子の『おんがくのいずみ』~うたの心をあなたに~

ソプラノ歌手・ボイストレーナーの和泉聰子のブログ。HPは http://lulu-hikichan.jimdo.com

作曲家 古曽志洋子先生と歌曲集 『心のふるさと』について

2019-05-09 20:00:14 | 稽古日記
今日は午前は日舞のお稽古へ。
8/25の浴衣ざらいの曲が
 
あやめ浴衣
 
に決まったので
ひたすらそのお稽古です。
まだ始まったばかりなので
一通り終わるまでまだまだ。。。
 
 
粋な芸者に見えたいわぁ。。
 
 
夕方は来週の水曜日の本番
 
第23回JFCアンデパンダン
 
のお稽古で古曽志洋子先生のお宅へ。
 
 
良い感じにまとまってきました。
 
 
今回、本番で歌うのは
3回目です。
昨年の3月、9月と歌って
9月は暗譜で歌っているので
およそは身体に入っているけれど
やはり暗譜で歌う事って
何があるかわからないので
緊張します。
 
 
しかも今回は
作曲家の作品展で
嘘を歌っちゃうようではねえ。。
 
 
とにかく頑張ります❣️
 
*********
 
さて、日本歌曲って
新しい作品が生まれ続けているので
歌謡曲同様、有名な作曲家の曲でなければ
みんなが気づかないうちに
埋もれていくような気がします。
 
 
古曽志洋子さん、という作曲家も
洗足学園大学で教えているから
 
歴代のお弟子さん、
受験で習った人
 
など知っている人も
いるかもしれないけれど
知らない人も多いと思います。
 
 
歌の作品はものすごく多いわけでは無いけれど
私が知っている限り
 
金子みすゞの詩による歌曲が9曲
母の句による四季の詩 6曲
 
そしてこの
心のふるさと 全6曲
 
ピアノ曲は出版されているけれど
歌曲は出版されていません。
 
 
芸大作曲科卒業後
フランスで学んだので
フランス和声の響きが特徴的です。
 
そしてとてもシンプル。
ピアノパートに音が少ない曲も多いので
音色そのもの、
僅かなタッチの違い、
繊細な表現力を求められたりします。
 
*********
一曲目 ついとう
 
が自分の中では一番難しい。。
 
ピアノがオクターブでcisを
静かに叩いているだけの中に
 
‘花咲く前に 逝ってしまった
逝ってしまった多くのみたまに’
 
と入る第一声が
 
かたくなったり、
小さすぎて不安定になったり
大きく立派になりすぎたり
呼吸がかたくなって
心地よい声が出ない。
 
 
もっとピアノと一体になった
心地よいところがあるはずなんだけどなあ。
 
 
 
第2曲 いつもと同じ
 
これは歌詞の
 
黄色い花が、
 
がどのくらい黄色い花が
目に見えるような響きのある声で
歌い出せることを目指している。
 
そうすれば自然な流れで後半の
みんな逃げてだあれもいない春野で
お地蔵さんがいつもと同じに
じっと手を合わせている姿に
しみじみ、胸にグッとくるものが
声で、呼吸で表せるから。
 
会場の豊洲シビックセンターホールは
よく響くので言葉がわからなくならないよう
子音ははっきりと言うようにしている。
 
特に hanaのhがとんで ana にならないよう。
 
 
 
三曲目の 地震ともぐら
 
5拍子、7拍子と変拍子が続き
暗譜の不安が歌詞の不安な世界と
ぴったりマッチするという💦
とても特殊な曲。
 
いやなんだ、いやなんだ、いやなんだ、
 
何回連呼するのだ⁉️
の果てにでてくる歌詞が
 
いやなんだ、原発が。
 
 
地震が地団駄踏み続け
 
わかったよ、わかったよ、
もうわかったから
 
ともぐらがなだめてる、という詩。
 
古曽志先生にしては
激しくダイナミックな音楽がついている。
 
 
歌の歌詞に原発が出て
とても驚いたけれど
この詩集が東日本大地震の後に
震災をテーマに書かれているので
 
実は4曲目の 安心したいクマ にも
 
 
春の野の花溢れる中で
原発、あら、なくなりました
 
という形で原発が出てくる。
 
三曲目のとは正反対の、
冬眠中のクマはの
優しい子守唄のような音楽に
原発がなくなる夢が
本当に嬉しそう。
 
 
五曲目 苗床作り で初めて人間が出てくる。
 
津波に肩まで浸かって
助け出されたばっちゃの
力強く生きる決意が
コラールのようなメロディ、
ピアノパートから
神の救いの光が見えてくるよう。
 
古曽志先生はこの曲は
突然異質なものが出てきたみたい、
と仰っていたけれど
私の大好きな曲。
 
 
そして終曲、
小鳥旅立ち
 
傷ついた者たちが
力強く生きていく姿、
地球上の命あるものを支える
天の光
 
古曽志洋子先生の歌曲の中で
一番劇的で力強く、温かい。
ダイナミクスの幅も
一曲目のついとうから
どんどん動きが出てきて
終曲らしい堂々とした終わり方。
 
 
初演時に演奏しながら
間奏を追加したり
伸ばす音価を増やしたりと、
初稿から変えていった曲。
 
こういう風に作曲の現場に
立ち会えることに
とても興奮していた。
 
そして今も。
 
 
私自身が成長過程の中で
このように歌いたいというものが
変わってきていても
古曽志先生が聴いて
 
それもいいね
 
とか
 
前より良いね
 
といってくださると
とても嬉しい。
 
 
もっとこの曲集は
いろんな人に広まっていい作品だと思います。
 
 
東日本大地震の事を書いている詩は
和合亮一さんの詩が有名だけど、
ほかの詩はあまり出てきていません。
 
摩利按世さんの詩は
震災後の野山の様子、
動物の言葉をかりて
原発のことまで言及しているけれど
美しい色彩と清々しさを持っています。
 
 
歌われることによって
震災を風化させない、
という事が出来ると思う😊
 
 
そしてフランス和声をベースに
作曲された音楽であることが
古曽志洋子先生の音楽語法。
 
透明な悲しみ、春野のお地蔵さん、
地震ともぐら、すやすや眠るクマ、
灰色のばっちゃ、光に向かってとんでいく小鳥
詩画集のような色彩豊かな音楽がついている。
 
 
それぞれの曲にあらわれているから
だんだんクセになってくるのです。
 
 
だから、
一度聴きに来てほしいのです
 
心のふるさと を‼️
 
そして、歌ってほしいです。
是非是非に💖
 
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