ソプラノ和泉聰子の『おんがくのいずみ』~うたの心をあなたに~

ソプラノ歌手・ボイストレーナーの和泉聰子のブログ。HPは http://lulu-hikichan.jimdo.com

ある水筒の物語@グランシップ

2019-06-03 10:01:22 | 演奏会レビュー
先週の金曜日
『ある水筒の物語』
という新作初演の日本オペラを観ました。
先日のコンサートで大変お世話になり、
素敵な曲をかいていらっしゃる
伊藤康英先生作曲のオペラです。
東静岡駅近くのグランシップ。
新幹線乗って観に行きました。
 
 
 
第二次世界大戦、
静岡空襲の時に大勢の人が亡くなり
同時に爆撃を仕掛けた米軍機も墜落、
地面には真っ黒な、
水筒を握りしめた手形の残った水筒が。
 
その事実をもとに
高木達先生が素晴らしい台本を。
 
 
 
 
一幕は、空襲前夜までの様々な人間模様と空襲
 
幼い子供を寝かしつけ、
食糧が尽きた事を嘆くまあちゃんの母
 
戦地にいる夫に想いを馳せる身重の妻
 
戦地に向かった大学生を思う
二人の女学生の恋の戦争
 
竜から姫を守る!と勇ましい少年
幸せそうな家族の団欒
 
 
戦地に倒れゆく青年の亡霊をみた
老夫婦
 
 
爆撃命令を受けた
米軍爆撃手の両親に宛てた手紙
 
そして空襲。。。
 
 
舞台には黒焦げの水筒が残り
一幕が静かに終わります。
 
 
二幕はその残された水筒を前に
 
 
戦争で亡くなった市民だけでなく
真っ黒な水筒を残して亡くなった米兵も一緒に
追悼し、慰霊祭をしようとする僧侶と医師。
家族を殺され怒り狂う市民に
 
怨みに怨みで報いたら
怨みが止むことはない
怨まないことで怨みは止む
怨まずに皆で慰霊を
 
と呼びかけます。
 
そして何十年が経ち
アメリカからも
亡くなった兵士の家族を呼んでの慰霊祭。
 
 
私は二幕に
物凄く心を動かされました。
 
 
 
敵味方なく慰霊する、なんて
世の中綺麗事で、
出来ないから戦争や殺人が起こるのかと
諦めてしまうところを
 
このオペラを観て
この音楽、歌詞を聴いて
 
死んだ人を悼む、
 
だけではない何かを。
 
 
実際にこのオペラは
事実としてその活動をされてきた
菅野先生という医師の実話を元に
書かれています。
 
 
それがドラマとして
死者の魂が出てきたりもしますが
赦すということが
どれほど平和に繋がるか
 
亡くなった人に想いを馳せて
愛を注ぐことが慰霊なんだと
全身を包む温かい音楽とともに
真の平和に繋がる希望を感じました。
 
 
 
 
上手く書けないので
静岡だけでなく
大きな団体で上演して欲しいなあ。
 
 
 
お気に入りの作曲家の作品だから
褒めているわけではないのです。
 
 
そして慰霊、平和に感動したわけでもないです。
 
 
強いて言えば
いろんな愛に包まれるオペラだから
 
 
 
愛が溢れるところで
涙が溢れました。
 
 
 
残念に思ったことは
言葉のこと。
 
 
一幕はいろんな場面が描かれていますが
冒頭の合唱の歌詞が意外と聞き取れませんでした。
 
 
 
メロディは先日のコンサートで
アンコールに会場のみなさんと歌った、
 
そこにあなたがいてくださることは
 
 
のメロディが使われており
作曲家の強い想いが重ねられていました。
 
 
でも歌詞が聞き取れないから
元の歌詞の世界しか浮かんでこない。
高木先生の台本だから
これから始まるオペラの世界が
きちんと言葉になっているはずなんだけど。。
 
 
ちょっともどかしさも。
 
 
最初の二つの場面は
舞台奥での歌唱だったこともあり、
こちらも声の響きが綺麗でも
何を言っているのか聞き取れず
イマイチ物語に入れず。。
 
 
最近は字幕が出るのですが
今回は外国人のお客さんのために
字幕は英語!
 
英語歌詞、パーリー語の時に
日本語が出る、という事でしたので
意味をとるために英語を読むことに。
 
 
 
勉強しておいてよかった!😆
 
 
 
。。。ではなく。
 
 
 
オーケストラ伴奏の上を
日本語が分かるように
声を飛ばすことは
本当に難しいですね。
 
 
録音音源はスピーカーから
鳴らじていたので
聴こえにくい場所での歌唱、
また聴こえにくいところは
部分的にマイクでひろうとか、
立ち位置を考慮するとか
 
日本語が聴こえるようだったら良かったなと
 
自分への自戒を込めて
強く心に思いました。
 
 
個人的には
少年役の中島さんの
明るくて全て言葉が聴き取れる
綺麗な響きの声と自然な演技
私が泣いたのは、ほぼ少年がらみ。
心が洗われました
 
 
 
爆撃手ジム役の梅原さんの
英語ではなく、
僅かに日本語で歌ったところの
日本語を、的確に伝える言葉さばきの見事さ
 
 
僧侶の大石さん、医師の村上さん
オーケストラがフルに鳴っているなかでも
声を豊かに鳴らして歌いあっても
それぞれの言葉がしっかり聴こえて
これぞオペラの醍醐味!でした。
 
 
 
伊藤先生もロビーでお見かけしましたが
皆さんに囲まれて人気者でしたので
ご挨拶せずに新幹線に乗りました。
 
Facebookなどみると
結構写真を撮ってもらっている人がいたので
悔やまれましたが〜😢
 
 
 
このオペラに関わる多くの方々の
熱い想い、使命感、そして愛が
公演を成功に導き、
これからも再演されますよう。
そして、ご当地オペラではなく
世界に発信するものになりますよう
心からお祈り申し上げます
 
 
帰りは新幹線でアイス食べて帰りました。
美味しかった💖
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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