・・・・持って生まれたは性分
咲くに咲かれぬ姥桜
好い奴いたら咲けるのに
色里には陽はなく、闇ばかり
幾夜くれど、取るは歳ばかり
夢に見るは、玉の輿
夢に見ぬは、傷の跡・・・・
・・・・ああ、咲けたなら、咲けたなら
百年に一度、咲けたなら
どうせ咲くなら狂い咲き
どうせ死ぬなら狂い死に
お笑い草の種のこし
後は野となれ山となれ
わたしゃ知らぬ存ぜぬ構いません
ああ、咲けたなら・・・・
やっと咲くは竹の花
おリョウは、咲いて枯れて闇のなか
月が森を照らす夜
木の精は 踊り出て
水の精は はしゃり出る
月の精は 微笑んで見守り
闇の精は 沈黙を守る
星は合図をする
踊りは輪となる
しばし時の花盛り
十色十色の艶模様
ニンフは踊る
軽やかに
ニンフは踊る
消えるまで
ヤンバルカナテナガコガネは知っている
・・・・人間はちっぽけなもんさ
そして大バカさ
何にもわかんないのを得意にして
いい気になっているのさ
そんなもんさ 人間なんて
夏の陽ざしは南海を照らし、眩く輝き黄金に染める
・・・・島は天国さ
我らの楽園なのさ
そう 人間が来るまではそうだった
森が光ってるのを知ってるかい
光る一方なんだ
それが涙だとは 誰も知らない
ジャネルの言うは非情なり
ブルクトフの言うは無常なり
二人の心は同一なり
遊び慣れし、オースターの城は崩れゆく
月日は薄情となり離別を促す
ラムダの門は閉ざされた、過ぎし日は幻となる
追われゆく身の哀れさは、落石のよう
・・・・「ジャネルよ、すまなかった」
ブルクトフの声は細く、闇にさらわれた
ただ、月だけは知っている
夜風は凍っている
雪深い越の国の話じゃ
ある雪の夜
尻軽が子を産んだそうな
男種は間男
体液の中で睨んだそうな、そして喋ったそうな
「業とは何ぞや」・・・・
あまりの驚きに、親は死んだそうな
・・・・ねんねんころり、ねんころり
雪の中で生まれた子は、やがて大きくなり嫁をもらった
遊里から来た嫁は夜叉子と言った
そして、おなごが産まれた
名前は鵺子とついた
・・・・ままごと、赤すぎる帯、竹の花
やがて女親に、じいじ、ばあばのことを聞いた
「なして、いねえの?」
「おらが、ばあばだ」と、夜叉子は言った
雪はしんしん、降りしきる・・・・
ライン川の流れるアルザスは
古代から人の欲の檜舞台だった
悠久の中で眠っていたのはローレライ
それを目覚ましてしまう、黒い血が流された
妖しいその美貌に多くの男が吸い寄せられ
川の中へと消えて行った
媚薬を与えられた色欲
魔女との性の饗宴に誘われ
今日も一人、また一人と吸い込まれてゆく
男を飲み込むごとに
ラインとローレライは、妖しさを深める
本当の美しさは
どこか、影がある
一つの栄光の為に
暗い国からやって来て
暗い国へ帰って行った
絶大な賞賛の裏に
踏みに踏まれた過去がある
幼い頃からの不遇な日々
家庭を知らずに育った
一人の女
逆境が美しさを作った
だが、あまりにも薄い美を
つかみかけた幸せが
使われ過ぎて壊れちまった
プカプカプカ・・・・
遥か遠い国から、ある国目指して
今は南海の大海原
運命の海流に乗り、いずこへ行くやら
思えばずいぶん流されて来た
生まれたての、あの頃
何かのはずみで地に落ち、コロコロ転がり
気が付いて見たなら海の上
透き通る空と海、これから何が待っているのやら
明日のある国か
明日のない国か
流れに聞くしかない
画家になるつもりだった
才能の欠如が運命を変えた
時の流れは私を翻弄した
ウィーンの街、放浪、絶望、ユダヤ人
虚無の中で見えて来た希望に私は震えた
宿命としての自己の運命を悟った
ある言葉に意識は占領され降伏した
そして慄然し偽善が生まれた
社会が進む為には犠牲を要求する
流された血は反省を促す
理想への渇望の念を強化させる
すなわち社会の義務なのだ
選ばれたことに対する不安と狂喜を抱え
神ならぬ人類の為に進もう
いずれ歴史は私を救うだろう
今日を振り捨て、明日を求め
ただ、暗闇を突っ走る
行き先は不明、それを決めるは詩人しだい
闇の中では誰もが盲目
手の鳴る方へ惹かれるは人情
歩くは自由、転ぶは勝手、耳を塞ぐは反逆
怒りの矢は近付くばかり
・・・・せめて、手がなければ
闇は何も答えない
どこまでも行くんだってね
走るしかないんだってね
・・・・疲れてるくせに
転びそうなのは、足の長さが違うだけ
よろけるのは、片目のため
ただ、それだけなんだよな
疲れて息が止まったっていいんだ
走らなければ、走らなければ、生きていかれないんだ
ちょっとでも遅れると、昔が追いついて来る
だから、走るんだ
余裕なんてない
道に倒れちまったなら、空を見上げて、そっと呟けばいい
すべては過ぎてゆく・・・・
あとは、時がごまかしてくれる
理恵子を大切に
かけがえのない人だから
自分よりも大切に
愛しい者を 愛しもう
あんな綺麗な心はない
私は幸せだ
理恵子にめぐりあえた
この喜びを 嬉しさを
伝えなければならない
みんなに向かって
理恵子がいて
理恵子がいて
私がいる
イェーツにケルトを見る
原始の血が駆け巡る
青葉の活性
一つ一つのあらましが
純粋な国は そこにある
人はそれぞれ手を繋ぐ
踊り出す
音は誕生する
妖精たちはやって来る
水の精は淑やかに
淑やかに 誘い込む
燃ゆるもの
ああ それは火の精
妖しく輪舞する
彼は言う
誰かに伝えようとしている
宛て所もなく言う
声にならない声で
聞き耳を立ててみる
すると わかるような気がする
とぎれとぎれの合間から
ようやく 言葉が
・・・・老いぼれました
いつかの犬 私ともども
笑う こいつまでも
・・・・わかっていました
初めから そう
とうとう こいつと
彼は知らなければならなかった
予言の鳥が、最後に言った言葉を
聞かなければよかった、それを
クララ、クララはもういない
憩える胸はもうない
優しい顔は消えかかる
ただ、音だけは
鳥よ彼を運べ
光と音の世界へ
クララのいる世界へ
永遠の
慈しみの
美のもとへ