あなたは、なぜ好きでもない男と二十歳の若さで結ばれたのですか。
8才年上の農家の男の所へ嫁ぎ、浮気に明け暮れましたね。
祖父に現場を見られ、弱みを握れて、それから悪戯をされる羽目にと。
私の後に生まれた子は、間男の子供でしたね。親に似ない色の白い子でした。
あなたは、さぞや驚愕した事でしょう。産まれてはいけない子が産まれたのだから。
1年後、その弟がはいはいをしている6月2日の夜、鬼が笑った。
弟は、不慮の事故で悲惨極まる最期を迎えました。言語に絶する最期を。
あなたは、夜叉になったのです。笑ったのは、あなたなのです。
そして直ぐ、離縁となり私を捨てましたね。
祖父は浮気相手の男と一緒になるんじゃねえか、と言っていましたよ。
でもあなたは、故郷を出て茨城の地で再婚し暮らす事にと。
あなたは、この家庭に「滅びの調べ」を奏でたのです。
私との3年間はプロローグです、その後にやって来た後妻に家庭は壊されました。
あなたよりも非道なあの女は、第一子誕生の病院で、まんまと赤子をすりかえた。
病院でよその親御さんが抱いている子を、大きくて元気だからと、手を出した。
後妻「こっちが家の子だて、家の子だて、危うくかえられるとこだったいや」
当時、7才だった私はしかと記憶している。
また、父は、こう言っていた。
父「(血液型が合わなくて)不思議だ、不思議だ……」
そう、B型とB型とでは、AB型の子は産まれないのだから。
この話は、何回も出て来た。あの後妻の仕業です。文字通り、滅茶苦茶にした。
私は父の後妻に10年半、苦しまされた。違う人生を生きている感があります。
あの後妻は、私の家系を壊したばかりか、「第一子」の家系も壊したのです。
家族が連なる家系とは、未来永劫のものです。親類一同も巻き添えにと。
私の「生母」は滅びのプロローグ、やって来た「後妻」はカタストロフィー。
では、エピローグは何でしょう?
旧家の家系が滅びようとする時、今際の際にぱっと光るもの、そう……です。
実を結ばない花は、散る間際に一瞬、光るのです。
あだ花は、すべてを黙し、やっと本当の眠りにつくのです……