雪の夜
観念の戸を叩くものあり
忘却の果てより現れるは
蝋燭に照る 二人の水子の里帰り
・・・・忘れただろう
・・・・忘れぬいただろうね
どこからとなく響く声
正気は狂気に変わる
・・・・オイラは 十八
・・・・アタイは 十六
・・・・オイラの父はヒモなのさ
・・・・アタイの父は美人局
どちらも同じアホウドリ
葬られた兄妹 母の背に寄生する
想念界を跋扈し 居着く魂を探ねる
それは病んだ者 化膿した者を好む
故に 一は十となる
知るや否やの戯れ言を
目を伏せりゃあいい執念を
化け物見たさの業の淵
救いなき怨念よ
三途の川も渡れまい
一命題
解いてはならね命題
それは 一秒の死
わかったら文学者
太宰の二代目
一言居士たる憂愁を
見ゆるではないか
青と慄とが
虚になりうる美
実になりうる虚
黄昏て知る 虚実折衷の世界が
見ゆるではないか
日傾き 晩鐘響く
祈りの十字はきられる
ボードレールの愛する雲
光輝く 斜陽の天上がり
我はゆく
ロンバルディア平原をただ一人
見果てぬ夢
真の美を追い
ポー川を下る
向こうから誰か来る
童顔のラファエロ来る
跪き乞う
風は通りすぎる
放蕩児くじける
往来に伏す
地に嘆く
耽美的ドンファンの叫びを
美の呪縛よ
ああ 懊悩よ
妖精たちが飛んでいるんです
たくさんいるんです
私には見えるんです
私を包んでいるんです
本当なんです
それは粒子たちなんです
あなたは信じないです
でも 私にはわかるんです
いつか 粒子になるのがわかるんです
消えれなくて 切ないんです
粒子になって永遠に生きるなんて
とても嫌なんです
見てはならないものを 見たようです
トランキライザーが切れました
もう もういいです・・・・
捨てられた言葉
唾を吐かれた言葉
呪い抜かれた言葉
それらを拾うには
捨てられた人がいい
一つの真珠は
貝を痛めて出来る
一つの詩は
心の涙で出来る
一つの真実は
出来たつもりで出来ない 永遠の命題
何か聞こえる・・・・
・・・・売文じゃないよ 駄文だよ
・・・・常態じゃないよ 醜態だよ ってね
くすんだ目で育つ子
見下す目に慣れるころ
明かり消えるように
一つの命が消えた
北の冬
春遠い雪国
鉛の空
果敢なき終焉
憎悪の巣に
みなし児と老婆
捨てゆく我に
声無き叫び
守ってくれた命
見捨てられた命
三月早々 きえた
秋風吹く
恋い焦がれ 泣く女
いと想う
連れに連れない 恋心
葉は揺れるさ
・・・・ゆらるらと
葉は染まるさ
・・・・おいおいと
葉は揺れるさ
・・・・ゆらゆらと
葉は染まるさ
・・・・おいおいと
すぎる台風一過と 空と月
生まれ持った薄幸
流れるしかない定め
行き着くしかない隘路
差さぬ光 見えぬ行く末
娼婦の涙
ソーニャとの違い
不純 夢想 盲目
ソーニャとの同一
唯一の同一
ただ 絶望の微笑
堕落の正当性を証明せよ
狩人でいるより、奴隷でいよ
仮構ゆえに虚無でいよ
刹那ゆえに、刹那で
心の奥に何かいる
もう一人の自己がいる
世間は分裂という
いいじゃないか
哀れなむ
すべては客観化される
哲理の超越
芥川と酒でも飲もう
そう、アフォリズムの世界で
詩人は消えても 永遠を得る
想念に漂うは媚薬
喰わずにいれぬ性
毒に憑かれた文人
それが詩人
それが宿命
早熟児の打算
小ランボーの呵責
失せる愛人
我が子のむくろ
慄 慄 慄
中也の死
中也の不死
生きゆくを知らずして
消えゆくと信ずる
虚である現象
永久の命を知らずして
刹那な栄華を夢見
作るは空中楼閣
付録としての幸福
付録の現実を知らずして
虚妄に溺れ
自虐の淵に浸る
自己の為の現象
目的の絶対性を知らずして
逃げゆく 幸福への逃避
物憂い影
望みを夢見た右側
恨み疲れた左側
歪みゆく必然
止まぬ相剋
止む渇望
偽り切れぬ過程
偽る自我
偽ろうとする蒼き夢
仮面の真相
自縛を知ってる想念
隠す胸中
見え透く打算
見えなかった自己
見えてたエゴ
秋 暮れなずむ
細る身の厭わしさ
せめてもの願い
祈る思いの
稚児 見たさ
冬 しんしん
雪降る夜の虚しさよ
隠せようか
母となれぬ身の苛立ちを
春 しらじら
情けなき無情
はや 四十路すぎ
落ちる切なさ
うまずめの 涙
皆 夭折
仮構の仮面
虚構の現実
虚無の実在
暗黒界での醜態
前途無き終焉
崖への一歩
止揚しえぬ真理
負の正への豹変
寄生された精神
虚構と化す現実
現実と化す虚構
すべて アイロニー