それは多分コースがどんなに難しくても、その難しさが「目に見えない」からではないだろうか。我々観客なり視聴者なりが理解できる難しさとは、例えばパターで言うならば「微妙な起伏のあるショートパット」ではなく、オーガスタのような「大きく曲がって外せば出ていってしまうような高速グリーン」での神業のようなタッチである。そういうハッキリとした難しさがあるのかと言えば、フジサンケイではどうしても感じられなかった。フェアウェイが起伏の多い形状というのは自然を活かしたリンクスという括りだから当然だが、池とか小川とかのハザードが殆ど無くて、打ち下ろしや砲台のグリーンが多すぎる作りはむしろ「チマチマした、わざとらしいコース作り」に見えてしょうがない。これは解説者が「やたらと難しい難しいと言い過ぎる」こともあるだろうが、実際は64とかも出ているので「そんなに難攻不落」というコースではないと思う。要は、如何に「難しさを目に見える形で」分かりやすくするか、である。池越えや樹木・ブッシュのハザード、アゴの高いバンカーなどなど、プレーするより「見ているだけで難しそう」なコース設計が求められるのだ。有名なサイプレスポイントの海に突き出たグリーンなど、我々はスペクタクルな景観を攻める「スリリングなゲーム」を期待している。馬の背の1mのパットに四苦八苦するプレイヤーの姿など、あまりに細かすぎて見たくないのだ。
針の穴を通すようなドライバーショットを、しかも350ヤード以上を楽に飛ばすデシャンボーやダスティン・ジョンソンといったPGA屈指の飛ばし屋ほどではないにしても、女子ツアーも近年は飛距離が急激に伸びていて、昔ながらの飛ばない選手はもう「小技とパターだけでは」勝負にならなくなっている。今は飛んで曲がらない選手が、セカンドをショートアイアンでピンそばにビタビタ打ってくる時代なのではなかろうか。私はゴルフはグリーンに乗せるまでが勝負だと思っている(ごく一部の意見であるが)。160ヤードある池越えの凄い難しいホールを見事にワンオンさせたのに、その後の1mのパターが「どうにも入らない」ような最低のつまらないコースには、見たくもないのは勿論だが行きたいとは全然思わないだろう。成功と失敗が「最後に一緒くたになっちゃう」ようでは、とても良いコースとは言えないと思う。勿論ミスをスーパーショットで取り返すことも必要だろうが、それには奇跡のような執念と気迫が求められるのではないだろうか。だからフェアウェイに打ったのにそれが「うねうねしている」のでグリーンが狙いづらい、というのでは、もう「フェアウェイではない」と思う。勿論全英オープンで名高いリンクスなどの荒れ果てた自然そのままのコースでは「グリーンにたどり着くまで」が超しんどいのが売りだ。だからパターはそれなりに入ってくれる。そういうバランスが大事だ。グリーンに乗せるのが比較的易しいホールは、今度は「乗せる場所」がピンポイントに狭くなるのである。このあたりの難しさを解説者が的確に狙い所など教えてくれると、良いショットと悪いショットが分かってきて楽しめる。これが一般視聴者が試合観戦する時の大事なポイントなのだ。
ところがフジテレビはどういう訳か戸張捷や森口祐子または村口史子といった「全然視聴者目線じゃない」解説者を使っていて、ちっとも面白くない。戸張捷はペラペラといかにも訳知り顔をして、ゴルフを知らない素人の視聴者に「細かい裏話を説明してます感」が全開で「マジウザい」。一言言うなら「うっせえわ!」である。戸張捷はコースの設計に興味の中心があるようだ(トーナメントディレクターをやっているらしい)。要するに、コースや試合を「作る側」の人間だ。私のような「スイング命のオタク」には、ただ煩いだけで得るものは全く無い。例えて言うならば、いつもフランス料理に極上ワインを楽しんでいる「金持ちグルメ」を相手している「レストランの経営者」である。戸張にとっては相手がグルメ客なので、細かいウンチクが大事なのであろう。そこがテレビ解説者に向かない一番の原因であろう。最終日は森口祐子が解説していたが、こちも何を言っているのかピントが外れていて「一つも試合が盛り上がらなった」のは大失敗である。せっかくお金かけて放送してるんだから、もう少し「選手の緊迫感を伝えられる」解説者を用意して欲しいものだ。
まあ文句言うのはここまでにして、選手の印象を書いておく。
1、稲見萌寧
今年に入って8戦4勝、破竹の勢いはもはや「一昨年の鈴木愛」と同じレベルである(一方の鈴木愛はどうも調子が出ないみたいだ)。この流れは笹生優花が戻ってくるまで、しばらく終わらないような気がする(むむむ)。彼女の強みは飛んで曲がらないショットで、パーオン率が現在2位(73.82)、平均パット数7位(1.787)、パーセーブ率1位(89.92)、そして何とリカバリー率が断トツの1位(71.58)である。しっかりとパーオンして、もし外してもリカバリーがきちんと出来ていれば、これはスコアだっていいに決まっている。普通は調子に波があって、凄い調子が良い週には上位に来るがダメな週にはずっと下位というのが大体の選手だ。だから優勝者も毎回違う。しかし実力が飛び抜けていると「調子が悪くても、それなりにスコアがいい」ので、毎回優勝に絡んでくるわけである。彼女の場合は全てのスタッツがオールラウンダーでトップクラスだから、成績が出ているのも当然だろう。ちょっと弱かったのが飛距離だけで、今のところ全体の36位(235.64)と余り高くない。だが、今回優勝争いを演じた相手の申ジエや山下美夢有や田辺ひかりや高橋彩香なども似たようなものだから、優勝するには飛距離は関係ないのかも。まあ1位の勝みなみが257ヤードだから、大体20ヤードは置いていかれる計算にはなる。これが勝負にどれほど影響するかと言えば「周りが思うほど」には影響はないらしい。実際は試合では毎回マン振りしているわけではないし、申ジエよりアイアンの番手は短かったから、普通よりは若干飛ぶと考えてもいいだろう。彼女はクラブが身体に近く、巻きつくようにスイングするのが特徴だが、これはフェード打ちだからかもしれない。まあ9番アイアンと8番アイアンの違いなど、プロのレベルではそれ程大して違わないとも言える。勿論6番アイアンの距離を3番ウッドで打つのでは全然違うが、それはグリーンに乗っても「止まるか止まらないか」という差である。我々が考えるような「当たるか当たらないか」という差ではない(そりゃそうだよねぇ)。彼女の実力は女子ツアーではトップテンに入っているのは間違いないのだが、選手としての華があるかというと「ちょっと職人気質で取っ付きにくい」のが弱点のような気がする。もう少し普段から弾けるような「明るい笑顔、特に口元」が見られれば「人気も出よう」と思うのだが、まあ無い物ねだりは止めておこう。今回のフジサンケイは稲見にとっては「余裕の勝利だった」と言っておく。
2、古江彩佳
スイング軸が微動だにしない安定感は、女子ツアー界でもピカイチだと思う。特にアドレスからフィニッシュまで、何かで勢いをつけるようなこともなく「同じ強さ・スピード」で自然に振っていく正確性は「いつ見ても凄いな〜」というレベルの再現性の高さである。去年3勝してから少し調子を崩していたが、最近復調してまた優勝争いに絡めるようになってきた。今回も最終日には「7バーディ」と爆発して稲見を猛追したが、「終盤に息切れしたのか」足踏みして5アンダーで終わってしまった。今回は復調したということで満足し、これからの試合で本領を発揮して貰いたいものである。
3、小祝さくら
彼女にしてみれば、珍しく予選落ちしそうな位パターの調子が落ちていたらしい。それが最終日に「鬱憤ばらし」の8バーディ1ボギーを叩き出した!。さすが小祝、なにか「やってくれそうな」スター性というか、大物感が漂ってきたような気がする。まだ気は早いが「令和の不動裕理」という可能性は「大」じゃないか、と密かに思ったりしてもいる。スタッツを見ると、平均ストローク1位(70.21)、パーオン率5位(73.38)、平均パット数4位(1.780)、平均バーディ数2位(3.68)、そして何より「飛距離」10位(243.36)というのが凄すぎる。もうツアーでも「飛ばし屋」なのだ!(カッコ良すぎるぜ!)。ただフェアウェイキープ率が60位(62.16)と低いんである(惜しい!)。これは、言わば飛ばし屋の宿命だ。笹生優花も葭葉ルミも渡邉彩香も穴井詩も、小祝より順位は下である。ちなみにLPGA公式ホームページのランキング最下位はなんと「勝みなみ」で47.23である。やっぱ飛ぶ人は曲がりも大きいってことか・・・。飛ばし屋が勝てないのは、この辺が原因かも(飛ばなくて曲がる人は論外ということか。ガチョーン!)。とにかく彼女が毎週トップ10入りしてるっていうのは「びっくりするぐらい凄いこと」だと思う。小祝さくら、恐るべし!
4、高橋彩香・田辺ひかり
何かこれほど毎回惜しい負け方をしているのを見ていると、ちょっと勝たせてあげたくなるのが人情というものである。彼女たちがもし優勝すれば、まずワンワン泣くのは間違いないだろう。これも女子ツアーではお約束である。どちらも優勝するのには「いま一歩」の感じだが、何かが一つ吹っ切れたら「すんなり勝ってくれそう」な気がする。まあそれにしても余り遠くないうちに勝って欲しいな。あんまり時間がかかると悲壮感が漂ってきて、本来は実力あっても勝てなくなっちゃうから・・・。
5、セキ・ユウティン
ここのところ体調悪くて予選落ち・棄権と心配していたが、今週は復活して25位Tに入る活躍を見せてくれた。まあレギュラーで毎回上位に入るというのはまだ難しいが、少しでも予選通過して賞金を稼ぎ、あわよくば「シード」なんか取っちゃってくれたらバンザイなんだけど、まあQTが調子いいから良しとしよう。もう少し上で戦ってくれるとテレビに映るんだが、来年にでもコロナが収まったら「試合を観に行くので」、今のまま頑張ってくれれば一応OKである。CSの放送なら全員写してくれるので良かったんだけど、この先の放送予定に期待したい。
6、植竹希望
何と8位T、5アンダーで回ってきたのには驚きの一言である。植竹は去年ステップアップツアーで活躍していて、ここのところ出ていないからどうしたのかと思っていたら、「レギュラーでベストテン・フィニッシュ」していたなんて「ビックリ」である。彼女はスイングが「シャロー」で今風なので、毎回参考にしている選手だ。ステップからの叩き上げだから華はないが、その分実力は間違いなくある。現在、獲得賞金額は62位だからリランキングは行けると思うので、是非来年のシードを目指して頑張って貰いたい。見た目は面白顔だがガタイがいいので迫力ある試合ぶりを期待したい。
以上、フジサンケイの結果速報でした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます