明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

日々の話題を解決(9)ロケット打ち上げは、失敗?それとも中止?

2023-02-21 21:13:00 | 今日の話題

どうやら失敗と云いたかった記者がバッシングにあっているようである。ホリエモンもひろゆき氏もJAXAの味方のようだ。JAXAは悪くない、頑張っているのにあの記者の態度は何だ?という雰囲気である。こういう時のネットの意見と言うのは、いつも必ず「弱い者を叩く側」になるのだ。今回の場合で言えば、失敗をなじる立場で記事を書こうとしている記者をよってたかって叩いた。この可哀そうな記者はもはや、ネットの世界では「恰好のターゲット」である。では今回のロケット打ち上げに関しては、本当はどうだったのか?

結論から言えば、これはJAXAが会見の冒頭で「失敗でした」って言ってれば済んでた話である。

ところがJAXAの担当者は違っていた。記者の質問が「失敗ですね?」としつこく食い下がったのに、あくまで失敗という単語を使わず、最後まで中止だったと言い続けたのである。これで記者が切れて「はいはい、分かりました!」とやったもんだから、ネットで大騒ぎになったのである。ここで関係ないホリエモンなどが、記者を「低能呼ばわり」して更に油を注いだので更に盛り上がった。ひろゆき氏などもJAXAの肩を持った意見を投稿しているようである。とにかく私が思うに、これらの件は「JAXA側の説明」の仕方がとにかく悪かったので、すべての「責任はJAXAにある」と結論した。記者がつまらないことにこだわった一番の原因は、失敗を「素直に認めなかった」JAXA担当者の姿勢にある(私は会見の模様をテレビで見ていないので、あくまでニュース記事からの想像です)。打ち上げを失敗したのは紛れもない事実なので、素直に認めて話題を原因の究明の方に移った方が良かったと思う。それに失敗だと認めたとしても、誰もJAXAを責めようとは思っていなかったのではないか?。今まで2回も延期しているわけだし、また今度延期になったとしても「やっぱロケット打ち上げって難しいんだな」で済んだと思う。

勿論、JAXA内部の事情で失敗を認めると、事業として今後の計画に支障が出る可能性とか、まあ「色々有るだろう」というのは分からないでもない。それでも最初に失敗を認めてから、その後で細かい説明をして「徐々に印象を良い方に持っていく」テクニックは、会見担当者であれば持っていても良かったのではと思う。それなら質問した記者も、もっと「内容のある記事」が書けたんじゃないだろか。

この問題を日本語の正しい使用法という立場で解説するなら、「打ち上げは・・・」と切り出した段階で、答えは「成功か失敗か」のどちらかにならざるをえないのである。これは「予定通り」打ち上がらなかったのだから、JAXAの報告としては「失敗」の一択にならざるを得ないのである(まさか成功とは言えないから当然だ)。それさえ認めていれば・・・、何と言うことは無かったのである。多分、記事の大半は「メインエンジンの点火失敗」で延期、原因はJAXAが調査中、ということになるだけだろう。だが、後の祭りはいつでも「惨め〜!」な結果に終わる。

繰り返す。JAXAが軽く認めていれば、何の問題もなく会見は終了していた。ところが担当者は頑として失敗ではなかったと「言い張った」のである!

これがすべての問題の発端だ。争点はJAXAの言う「中止」だが、少なくともロケットが打ち上げ動作に入ってからそれが正常に行かなくて「仕方なく」途中でブログラムを止めたのだから、失敗ではなくて中止だと言うのは「詭弁」としかいいようがない。贔屓目に見ても、少なくとも「途中で失敗したから自ら中止した」、というのが正確な表現だろう。日本語を正確に使用するなら、「飛ばそうと思えば飛ばせた」のに止めたというのを中止というのであって、「飛ばせないことが分かったので止めた」というのは中止とは言わずに「失敗」という。その点で質問した記者の方が「正しい」。

繰り返しになるがもう一度詳しく説明すると、中止というのは「途中で止める」と書く。JAXAが言うように失敗でなく「中止」だと言い張るなら、じゃあ中止しなかったら「飛んだのか?」と言われれば答えに窮するであろう。これは誰が見ても明らかなように「飛ばせなかった」のである。これが真実だ。だから誰が何といおうと「失敗」なのである。まあ、もうちょっとJAXAの担当者の心情によりそった言い方をすれば、「打ち上げは失敗」だったがその後の進行を「中止できた」ので、ロケット本体に損害が出るような大事には至らなかった、となるだろうか。そう云う「常識的な説明」がきちんと出来ていれば、むしろ「JAXAの対応は称賛されていた」かも知れない(それは分からないが)。とにかく担当者が失敗という事実を「何とかして隠そう」という気持ちが真っ先に表に出てしまったために、逆に会見での「イメージが悪くなった」というのが真実ではないだろうか。私はJAXAは、日本の宇宙産業の最先端だという誇りと自信を持つべきだと思う。だから失敗しても事実は事実として認めて欲しかった。

まあ担当者も人間だから「今度もまた失敗しました」とは言いたくない気持ちは理解できる。ただロケット発射という「厳正な物理的現象」を説明するのに、それでは余りに「人間的な保身の感情」が出まくりであり、会見が言い訳の場になってしまったのは頂けない。これが、宇宙飛行士が月から地球へ帰還するという大事な時に起こったらどうするのか?。担当者が「失敗を中止と言い換え」ても、宇宙飛行士が「帰って来れない」という事実は変わらないのだ。今回の例で言うならば、H3ロケットは発射に失敗した。これが北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの「発射中止」報道であればマスコミもネットも間違いなく、北朝鮮の技術力が低くて発射に失敗した!、と報道しているだろう。北朝鮮がいくら「あれは中止だった」と言い訳しても、彼らの言い分には一顧だにせず「失敗」の烙印を押していること、当に「火を見るより明らか」である。

確かにひろゆき氏の言うように、ロケット発射というのは難しいらしい。だが、そんなに難しいのなら「何故、発射前に言わないのか」と疑問が残るではないか。例えば今回の発射は大変に難しいので「成功の確率は10%です」、とでもアナウンスが事前にあれば、我々も心の準備が出来ていたし、失敗と言われても誰も文句は言わなかった筈である。だが、そんな話は露ほども知らされてなくて、いきなり「エンジンが点火しなかった」のだ。これじゃあ誰だって「何で?」となるのは当たり前である。問題は失敗か中止かの「言葉の選び方」ではない。本当の問題は、3度も延期している「技術力の貧弱さ」なのである。だからJAXAは今回の件で「素直に失敗を認め」た上で、早急に「原因の解明」に全精力を注ぐべきである。

私としては「失敗」で一見落着の簡単な話だが、どうも日本という国は「事実を事実として認める」という、科学者なら当然身に付けていなければならない基本中の基本の態度が出来てないようである。そしてネットもマスコミの低レベルの質問を叩いて優越感を満足させるのではなく、3度も延期せざるを得なかったJAXAび技術力の問題を注視するべきだと私は思う。またJAXAは今回の失敗の原因を速やかに突き止めて、日本お得意の正確性に磨きを掛けて貰いたい。これは、JAXAが自分達の責任問題といった矮小化された問題と捉えるのではなく、体面とか降格とかをかなぐり捨てて「事実を事実として追及する姿勢」で真摯に臨むのであれば、多くのマスコミも含めて、このロケットの成功を見守っている国民の大多数は「盛大な応援を送る」ことに吝かでは無い、と私は信じる。

JAXAよ、あれは「失敗でした」と素直に告白しようじゃないか。それがとりもなおさず、日本宇宙産業の未来への第一歩となる筈である。



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