子どもの本がおもしろい㊷ 黄砂にいどむ
黄砂にいどむ―緑の高原をめざして 高橋秀雄著 新日本出版社 (2016/2/23)
『黄砂にいどむ』は、砂漠の緑化運動をわかりやすくまとめた本
黄土高原の砂漠化を食い止めようと努力している研究者一前宣正氏の活動を中心に話がすすむ。
黄土高原は中国北西部の海抜1000~1500m、日本の総面積の1.5倍という広大な高原。
今は砂漠だが、2000年前は緑豊かな地域であったといわれる。
春、日本に飛来する黄砂の発生地である。
黄砂は、ゴビ(中国・モンゴルの砂礫砂漠)、黄土高原、河西回廊などの半乾燥地では冬季に降雨が少ないことと冬から早春まで植生がないことで、黄砂が舞い上がる。
黄土高原に住む人々のくらしはきびしく、いまなおヤオトン(横穴住居)に住む人が何千万人もいるという。
ふつうは緑化というと植林活動を考えるが
砂漠化を食い止める方法は
一前宣正氏は「雑草を植えることで緑化」し「黄砂を抑えよう」と考えた。
なぜ、植林ではなく雑草かは本書を読んでもらうとわかる
植生回復の最初の段階を担ってくれる雑草探しから活動が始まる。
世界中から2万種以上を集め選抜試験を重ねた。
その結果イネ科のスイッチグラスが最も適していることを見つけた。
スイッチグラスとは
注目されている植物という。理由はバイオマスに利用しているトウモロコシより優れているから。
スイッチグラスは北米原産の植物。
北緯55度からメキシコの奥深くまで、主にプレーリーグラスとして自然に発生する。北米では、土壌保全や飼料作物として長い間使用されている。
アメリカとヨーロッパでは観賞用植物としても利用されている。
1990年代初頭から、この作物は米国とカナダでエタノールと電力生産のためのモデル草本エネルギー作物として注目されている。
この本は
活動はまだ始まったばかり、これからも活動を続ける必要があることで終わる。
黄砂についてのメモ
黄砂の始まりは
中国黄土高原では約 250 万年前からであり、その多くが約 200 万年前から始まった第四紀に入ってからである。チベット高原の隆起によって熱帯との大気循環が遮断され、中国内陸部が乾燥するようになったからであろうと推定されている。(成瀬 1996)(https://www.env.go.jp/環境省のホームページより)
日本への影響
日本への黄砂はタクラマカン沙漠とゴビ沙漠、および黄土高原から補給されて輸送され、やがて落下して、九州では黄砂の堆積は数メートルになったとされる。また、沖縄でも赤土の多くは黄砂由来であるとも推定されている。(略)
黄砂の記録は、さすが中国では紀元前からあり、雨土、雨砂、黄霧等の用語がある。韓国では中国に近いためか2世紀からあり、雨土が多い。日本では8世紀からあり、赤雪、紅雪が多く、黄砂の用語は 1906 年からである(岩坂ら、2009)(https://www.scj.go.jp/ 日本学術会議のホームページより)
中国の黄砂は日本上空を通過して、はるか太平洋上のハワイを越え、さらに太平洋を越えてアメリカ合衆国、カナダへと輸送される。そしてまた、大西洋を越えてヨーロッパへと輸送され、やがて中央アジアを経て中国・日本に還ってくる地球一周の循環を認識する必要がある。最近、その一周の期間は 12~13 日であるとのシミュレーション結果が報告されている(鵜野、2009)。(https://www.scj.go.jp/ 日本学術会議のホームページより)
日本での黄砂の研究
空飛ぶ納豆菌(PHPサイエンス・ワールド新書2012)
出版社からの説明より
「地球を半周して飛来する黄砂は、微生物たちの格好の乗り物だった! 中国奥地のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風によって日本の上空に飛来してくる黄砂に、カビや細菌類が付着していることがわかってきた。黄砂が含む水分やミネラルが、長距離を移動する微生物たちにとってとても具合がよかったのである。黄砂からどのような微生物たちが見つかったか。微生物たちが長距離を移動する間に起きる化学的・生理学的変化とは何か。黄砂が落ちる場所で微生物たちがもたらす生態系、農業、人間や家畜の健康への影響とは何か。「黄砂に乗る微生物」をめぐり、科学者たちの探求が始まった。☆ 黄砂が飛んでくると、微生物の量が5倍にふえる☆敦煌の上空を飛ぶ黄砂の10%にカビや細菌が付着☆金沢や能登の上空の黄砂でも、微生物を採集☆標高3000mの立山の積雪から、黄砂と微生物を採集☆生態系、健康への影響はこれからの研究課題」
黄砂にいろいろなものがくっついているのを初めて知った
この研究成果、金沢大学では、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠から舞い上がった黄砂を珠洲市の上空3,000m 付近で採取し、付着する菌で納豆を作り”そらなっとう“として売り出しています。
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