子どもの本がおもしろい㊵ チバニアン誕生 ―方位磁針のN極が南をさす時代へー
ポプラ社ノンフィクション(39)
チバニアン誕生
方位磁針のN極が南をさす時代へ
著/岡田 誠
出版社 ポプラ社
地質学者がとなえる説は「トンデモ本」に掲載されてもよい話がある。
たとえば、ドイツ人気象・地球物理学者ウェゲナーの大陸移動説。
発表当時は大陸が移動するなど非常識扱いされました。また、ウェゲナーは地質学者ではなかったので最初に提唱されてから40年ほどの間、学界で受け入れられることはなかった。
1960年代初めにイギリスの古地磁気研究グループの研究が発端となって大陸移動説が復活した。
日本ではその古地磁気研究から大発見をした人がいる。過去に地球の磁場が現在とは逆向きの時代があったことを、世界で初めて提唱したのが、日本の京都帝國大学教授松山基範博士。
この話も、発表当時地磁気逆転現象は、否定的に扱われため、その後、博士自身もこのことを強く主張されることもなく、岩石地磁気の研究もされなかったといいます。その発見した場所が兵庫県の玄武洞です。
1960年代になって地磁気逆転が明らかになり77万年前の逆転境界をブルン・松山地磁気逆転境界と博士の名前が付いた。
そして「チバニアン」
ジュラ紀や白亜紀といった地質年代の名称があるが、約77万4千年前~12万9千年前の地質時代に、「チバニアン」という名称ついたのだ。
このチバニアンが世界に認められるまでの研究者たちの活動がこの本。
発売年月 2021年6月
ISBN 978-4-591-17034-2
書籍の内容
新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでのノンフィクション。千葉県市原市にある地層「千葉セクション」に、およそ77万年前に地球の磁場が逆転したことを示す手がかりが残されていた!地層に刻まれた痕跡から太古の地球のすがたを考える地質学の魅力に迫るとともに、「千葉セクション」の日本初GSSP(国際境界模式地)決定に至るまでのドラマを紙上体験する一冊。著者は、千葉セクションGSSP提案チーム代表の岡田誠・茨城大教授。
<もくじ>
・はじめに
・第1章 日本の地名がはじめて地質年代に
・第2章 77万年前の地球を地層から解きあかす
・第3章 僕はこうして、地質学者になった
・第4章 めざせ、チバニアン承認。国際レースにいどむ
・第5章 科学の発見とは、今見えている世界を広げること
地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか (講談社ブルーバックス) 2020/3/18
という本もおすすめ。
GSSP(国際境界模式地)決定の条件に「行きやすい場所にあり、世界中のだれもがその地層を使って研究することができる」というのがあり、地権者とのいろいろなできごとがあったようで、そのあたりはブルーバックスの方がおもしろい、
最近までの日本の地学の教科書で日本列島の成立は地向斜説があり、小松左京の「日本沈没」が発表されたとき、日本を沈めるのに小松左京はプレート運動をとりあげて小説を面白く説明していたが、そのころ日本ではまだプレートテクトニクス説は認められていなかった。いまでは、ほとんどの人(小中学校の理科の教科書に掲載さてている)はそちらが主流であるが、まだまだ地向斜説は健在だったというのがわかったのは収穫だった。
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