
読みさしの本を
脇机に 重ねて
今夜は 読むぞ と
入れたての珈琲の
かおり漂う時間の贅沢をたのしみ
手にした本のページは
一向に先へ進まないけれど
本に向かうこの時間の
自分のことが好きで
ページの間から
青春の声が聞こえてくるから
いつになく若やいだ気分になり
世の中の 闇や苦難の事など
気にする事のなかった頃
夢だけは 次々とくり広げられた
あの頃の世界に もぐりこむ
ひたすら本を読む
私の姿を 確認するかのように
時々 顔を上げて
声かけもせず
また、手元の編み棒を動かしていた母
翌朝には
私の好きな赤色のベストが
出来上がっていて
私は プリンセスになった様な
満ち足りた気持ちで
鏡の前で ポーズをとった
夕暮れの田畑の間の細道を
思い浮かぶ 好きなページを
暗唱しながら ゆっくりと
物思いながら 歩く時間が
好きだった少女の私は
母の手編みのベストを
ブラウスの上に重ね着していた
夕暮れの 肌寒さは
感じないで
ススキの白い穂と
迫り来る夕闇と
白いブラウスに 赤いベストの少女は
私から離れて
一枚の絵になって いま
鮮やかに 此処(胸)にある。
脇机に 重ねて
今夜は 読むぞ と
入れたての珈琲の
かおり漂う時間の贅沢をたのしみ
手にした本のページは
一向に先へ進まないけれど
本に向かうこの時間の
自分のことが好きで
ページの間から
青春の声が聞こえてくるから
いつになく若やいだ気分になり
世の中の 闇や苦難の事など
気にする事のなかった頃
夢だけは 次々とくり広げられた
あの頃の世界に もぐりこむ
ひたすら本を読む
私の姿を 確認するかのように
時々 顔を上げて
声かけもせず
また、手元の編み棒を動かしていた母
翌朝には
私の好きな赤色のベストが
出来上がっていて
私は プリンセスになった様な
満ち足りた気持ちで
鏡の前で ポーズをとった
夕暮れの田畑の間の細道を
思い浮かぶ 好きなページを
暗唱しながら ゆっくりと
物思いながら 歩く時間が
好きだった少女の私は
母の手編みのベストを
ブラウスの上に重ね着していた
夕暮れの 肌寒さは
感じないで
ススキの白い穂と
迫り来る夕闇と
白いブラウスに 赤いベストの少女は
私から離れて
一枚の絵になって いま
鮮やかに 此処(胸)にある。
