◇U-20女子W杯1次リーグA組 日本2-2ニュージーランド(2012年8月22日 宮城ス)
U―20女子日本代表“ヤングなでしこ”はニュージーランドと2―2で引き分けた。立ち上がりにいきなり2点を失う苦しい展開だったが、姉貴分のなでしこジャパンにも負けない粘りを発揮。司令塔のMF田中陽子(19=INAC神戸)が1ゴール1アシストの活躍を見せて勝ち点1を確保した。1勝1分けの日本は、26日の1次リーグ最終戦(国立)でスイスと対戦する。
ゴールネットを揺らすことで思いを伝えたかった。前半11分、仲田のクリアミスがオウンゴールになり、4分後には速攻から追加点を奪われ、2点のビハインドを背負った。窮地に追い込まれたヤングなでしこを救ったのが大黒柱の田中陽だ。
前半37分、右サイドを突破した西川のクロスは相手DFにカットされたが、これを奪い返して右足を振り抜いた。シュートはDFに当たりコースが変わってゴールに突き刺さった。「気持ちのゴールです」と2戦連発弾を振り返った。直後に紺色のヘアバンドを外しキスをした。この世代の中心選手でありながら5月に左膝前十字じん帯断裂などの重傷を負い、今大会に出られなかったINAC神戸の同僚・京川舞に託されたものだった。田中陽は「(京川に)見てもらいたかった」と照れくさそうに笑った。
さらに後半26分には左CKから正確な左足のキックで道上の頭に合わせ同点弾をアシスト。前日「ゴールもアシストも決めたい」と宣言していた通り、有言実行で日本に勝ち点1をもたらした。
東北の人たちに恩返ししたかった。田中陽は日本協会が設立したエリート養成機関「JFAアカデミー福島」の1期生。福島・富岡高に在学しながらJヴィレッジでサッカーに打ち込んだ。しかし昨年3月11日、東日本大震災で生活は一変した。原発事故の影響でアカデミーは静岡県に移転。高校の同級生とは離れ離れになり、その後は卒業式など数回しか会っていない。その友人たちが観客席に応援に駆けつけた。「(友人の)顔も見えた。元気でプレーする姿を見せるのがお世話になった人たちや東北への恩返しになる。気持ちは伝わったと思う」
スイス戦は引き分け以上なら自力で8強入りが決まる。「勝ち進んでいけば(テレビなどで)応援してもらう回数も増える。優勝して(東北の人たちに)喜んでもらうのが一番なので」。舞台はまだ一度もプレーしたことがない憧れの国立競技場だ。「一度は国立でプレーしたかったので、楽しんでやれそう。特別な場所で1次リーグ突破を決めたい」。聖地でファンタジスタが輝きを増す。
◆田中 陽子(たなか・ようこ)1993年(平5)7月30日、山口県山口市生まれの19歳。FCレオーネ―JFAアカデミー福島から今春INAC神戸に入団。U―16から年代別の日本代表に選出され、08年U―17W杯には15歳で飛び級招集。10年U―17W杯では6試合4得点で準優勝に貢献。目標の選手はスペイン代表MFイニエスタ。趣味は服集め。好きな歌手は西野カナ。1メートル57、47キロ。利き足は右。
※ 引用しました。