最近の東京は、外国人旅行者が本当によく増えた。大きなバックパックを担いだ旅行者がガイドブックを広げ右往左往する姿は今でこそ日常的な景色だが、ひと昔前では偉く目立ったものだった。事実、2016年に東京都を訪れた外国人旅行者は約1,189万人と前年(2015年)と比べて34%も増えている。また、東京オリンピックを4年後に控え、今後、益々増加するだろう。もはや東京は“TOKYO”であり「飯」、「文化」、「歴史」「思想」どの観点から見てもムーヴメントの風が吹きまくっているのである。
そんなウナギ登りの観光事業に乗っかろうと? ちゃっかり、あの伝説の6つ子も動き出していた。そう! おそ松さんである。日本語と英語の2ヶ国語で楽しめる東京ガイドブック『おそ松さん 英語で東京案内』(KADOKAWA)が紙版電子版ともに8月10日(水)発売されたのだ。
◆何より、東京の“ノリ”が分かるガイドブック!
念のため説明しておくと、「おそ松さん」とはギャグ漫画の王様・赤塚不二夫の傑作漫画「おそ松くん」の未来を描いたTVアニメ。大人になっても自立できず、実家にパラサイトする6つ子ニートの日常を描いた本作は放送が終了した今なお「松ロス」という言葉も飛び出すほどの爆発的な人気を誇っている。
とはいえ、本書はあくまで東京ガイドブック(しかも、英語の学習本としての側面もある)。心の中では「お前らみたいなクソニートに東京の何がわかるんだ!(ましてや英語なんて喋れんのかよ)」とツッコミを入れたくなってしまうのが正直なところだ。ところがどっこい、読んでみたら、「流石、おそ松さん」と言った普通のガイド本とは一線を画する角度で、東京の名所が紹介されていてなかなか趣深かった。
例えば、東京駅周辺エリアでは、「東京駅丸の内駅舎」や「日本橋」など定番スポットの他、「丸の内OL」などなんとも言えないディープな見所も取り上げられる。また、皇居周辺エリアでは、アニメでも度々舞台となった釣り堀が紹介され、追加情報として釣り堀の反対側に「おそ松さん」でもネタになっていた怪談「番町皿屋敷」の舞台があることなど、内容に則した情報もふんだんに盛り込まれている。
文体も「おそ松さん」のラフな口語体を用いられているため、フレンドリーな印象があり、いわゆるな名所ばかりをフューチャーする肩肘の張ったガイド本とは違う、リアルな“東京”が浮き彫りになっている。この一冊を外国人旅行者に渡しておけば、東京という街が醸す“ノリ”がわかってもらえるはずだ。
◆おい、クソニート!お前らと東京で会えて本当に良かった!
もちろん、本書は「おそ松さん」ファンも楽しめる一冊となっている。個人的に感動したのは、東京というリアルワールドを紹介するおそ松さんの姿だ。AR(拡張現実)とでもいうのか、リアルとフィクションが融合したような感慨にこの上ない喜びを感じられる。
東京競技場のカツサンドを紹介するおそ松、夜の新宿を“不夜城”と言い切るカラ松、中野のショーケースでアイドルのレアグッズを探すチョロ松、谷中商店街の見所に“猫”を挙げる一松、なぜか原宿エリアを紹介する十四松、やっぱりあんたは表参道のカフェだよねのトド松。
それぞれが好きそうな街を自由奔放に紹介する姿にしみじみと感動してしまうのだ。紙版に特典としてついてくる「おそ松さん付箋」も、微妙に使いづらい感じが非常に愛おしい。おそ松ファンは勿論、ガイドブックとしても等身大の東京が見えてくる本書、絶対、買いダヨーン!※引用しました!