河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑――なななな

2023年07月07日 | 菜園日誌

今日は彦星と織姫が天の川を渡って一年に一度の逢瀬をする日だという。
だが、我が家ではそんなことは関係ない。
「7月7日=なななな=菜菜菜菜=野菜がいっぱい」という豊年祈願の日なのである。

朝、いちばんに里芋の畝に行く。
そして、里芋の葉の上にたまった朝露を紙コップに移して飲みほす。
里芋の葉は、天の川から下りてきた雫(しずく)を受け取る傘である。
ゆえに、その葉の上の雫=朝露は天からもたらされた神様の水「天水」なのである。
加えて、里芋は正月のおせちに使われるように子孫繁栄を象徴しているのだ。

夕方、暑さがやわらぐと、河原へ笹(ささ)をとりに行く。
笹は、古くは「細小竹(ささたけ)」と言った。
「ささ」は「ささ濁り」「「さざ波」の「ささ」である。
「ささ竹」から「竹」を省略したのが笹である。笹は小ぶりだが、イネ科の植物で農家には縁起が良い。
加えて、成長の早い若竹には家内繁栄の意味がある。

夜、採ってきた笹を生ける。正月の門松同様に神様を迎える請願成就の目印である。
やがて暗くなってくる。ここからが重要な行事になる。
昔、宮中では「小竹=ささ=さけさけ」として、「ささ」を「酒」の隠語にしていた。
そこで、我が家の奥方が十二単(じゅうにひとえ)に身をかため、茶碗に笹の葉を浮かべて、酒の肴をもって出てくる。
「あーら、我が君様。本年も豊年満作、子孫繁栄、家内繁盛はまちがいなしでございます!」
「おお! さようか、それはめでたい!」
「ささ、ささの椀にささを入れ、ささかまぼこをさかなに、ささとささを召し上がりくださいまーせ」

※絵は『ふるさとの絵本 夏の巻』酒井朝彦 作, 熊谷元一 絵 (国立国会図書館デジタル)

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