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もの言うタレント松尾貴史氏 政治をタブー視する風潮危惧 2017.7.3
「なぜ政治に対して意思表示してはならないのか」と疑問を投げかける(C)日刊ゲンダイ拡大する
心根も作法も悪い安倍政権
議論を拒み、「中間報告」という禁じ手で「共謀罪」法を成立させた安倍政権に対し、ツイッターで〈悪辣、卑怯、狡猾、下品、姑息〉といった激しい言葉を羅列して批判した。皮肉を効かせた風刺を身上とするタレント
心根も作法も悪い安倍政権
議論を拒み、「中間報告」という禁じ手で「共謀罪」法を成立させた安倍政権に対し、ツイッターで〈悪辣、卑怯、狡猾、下品、姑息〉といった激しい言葉を羅列して批判した。皮肉を効かせた風刺を身上とするタレントの松尾貴史氏(57)には珍しいストレートな物言いだ。ものを言わない芸能人が多い中、堂々と自らの主張を発信するのはなぜか。その思いとは――。
――共謀罪の法案審議中、頻繁にツイッターで発信していました。感情をむき出しに言葉を並べていましたね。
安倍政権は心根も作法も悪い。世の中には、発する言葉は上品だけれど志が低い人もいれば、表現は下品だけれど、志は高いという人もいる。そんな中で救いようがないのは、言葉も表現も下品で志も低い人。今の政権の国会運営がまさにそれだと感じました。怒りが強すぎたんでしょうね。抑えられませんでした。この怒りの矛先は自分自身にも向いていて、日本が暗黒の道に進む確率の高い法律を作ってしまうことを止められなかった自分にも腹が立ちます
――下品で志が低い。どんな場面でそう感じましたか。
一番強くて偉い立場の人が、ヤジを飛ばしたり、関係のないことをだらだらと話して、答弁をしているふりをしたり。おまけに、「人を指ささない方がいいですよ」って言いながら、ご自身はしょっちゅう人を指さしている。なぜ、ご自身だけは特別扱いなのか。国会や委員会は神聖な場所であるという意識が少しでもあれば、そうした品のない振る舞いにはならないはずです。隣の国の3代目と似たところもあるかな、とすら思ってしまう。本当にめちゃくちゃですね。
――ツイッターでは、〈「他に支持するところがない」というのは自死に向かう思考停止だ。強力な悪人と微力な凡人を比べて前者を選ぶという愚か〉とも嘆いていました。
一度法律ができてしまうと、その廃止を公約に掲げた政権に交代しない限り、永久に残るんです。共謀罪法の成立で、僕らの子供や孫たちが生きる時代が、陰惨で残酷な世の中になる確率が格段に高まったと思います。もちろん僕自身に何かを変えられる力はありません。それでも、国民の多くが自分で判断することを避け、思考停止している現状はまずい。政治に興味を持ったり、政治的な発言をすることが、行儀の悪いことであるかのように思う風潮も違うと思います。
――刺激的な発言をしたことで、嫌がらせも多かったようですが。
攻撃してくる人は、ほとんどが匿名なので相手にしないようにしています。ただ、いい気持ちはしないので、すぐにブロックします。先日、確認したら、1100人ぐらいブロックしていました。もっとも、同一人物が別のアカウントを作って攻撃を繰り返してくるので、実際は十数人程度でしょう。ネットって、正確な数は隠れてしまうんです。炎上騒ぎといっても、ごく一部の人がお祭りにしているだけ。本当に炎上に関わったことのある人はネット人口の1%にも満たないと思います。テレビ局などが炎上や苦情を大騒ぎしたりしますが、そんなものを何かの判断基準にするのはバカバカしい。
――嫌な思いをして、発言をやめようとは思いませんか。
確かに、芸能人が思想信条を語るとネットサポーターやネトウヨが大挙して攻撃してきます。でも、芸人も俳優も歌手も、みんな税金を払って生活しているわけです。なぜ政治に対して意思表示してはならないのか。米国では、アーティストやアクターがエージェントを雇うスタイル。みな個人事業主なので自由に発言しています。一方、日本の芸能人は芸能事務所に雇用されているので、事務所に迷惑をかけないように穏便な表現を使う人が多い。社会性を重んじる文化もあり、周りに迷惑をかけたくないという美徳もあります。まあ、僕は行儀が悪いんですよ。
――刺激的な発言をしたことで、嫌がらせも多かったようですが。
攻撃してくる人は、ほとんどが匿名なので相手にしないようにしています。ただ、いい気持ちはしないので、すぐにブロックします。先日、確認したら、1100人ぐらいブロックしていました。もっとも、同一人物が別のアカウントを作って攻撃を繰り返してくるので、実際は十数人程度でしょう。ネットって、正確な数は隠れてしまうんです。炎上騒ぎといっても、ごく一部の人がお祭りにしているだけ。本当に炎上に関わったことのある人はネット人口の1%にも満たないと思います。テレビ局などが炎上や苦情を大騒ぎしたりしますが、そんなものを何かの判断基準にするのはバカバカしい。
――嫌な思いをして、発言をやめようとは思いませんか。
確かに、芸能人が思想信条を語るとネットサポーターやネトウヨが大挙して攻撃してきます。でも、芸人も俳優も歌手も、みんな税金を払って生活しているわけです。なぜ政治に対して意思表示してはならないのか。米国では、アーティストやアクターがエージェントを雇うスタイル。みな個人事業主なので自由に発言しています。一方、日本の芸能人は芸能事務所に雇用されているので、事務所に迷惑をかけないように穏便な表現を使う人が多い。社会性を重んじる文化もあり、周りに迷惑をかけたくないという美徳もあります。まあ、僕は行儀が悪いんですよ。
松尾さん自身、何かしら圧力を感じることはありますか。
それはありません。情報番組のコメンテーターは久しくやっていませんが、これは僕の論調の問題ではないと思います。もっと激しく発言している人も出演していますから。
――できるだけ議論しないで衝突を避ける空気が日本中に蔓延している気がします。
僕は公正中立なんていうものは存在しないと思っています。だから、マスコミもむしろスタンスをしっかり出していただきたい。その意味では、(政権批判をする)日刊ゲンダイはマスコミとして正しい姿勢であり、(政権に近い)読売新聞もまた正しいんです。テレビもそうあって欲しいですが、放送法のややこしい規定など縛りがある。それでも、当番組はこれに賛成とか反対とか、きちんと示せばいいんじゃないかなって思います。
――日本では政治や宗教の話は避けますよね。そういうことも関係しているのかもしれません。
政治や宗教をタブー視するのはおかしいですよ。宗教は生き方ですし、政治はすべての人の命や生活に関わること。僕には支持政党がありません。選挙はいつも政党ではなく人物で選びます。そもそも、政党政治があまり好きではないし、党議拘束が日本をダメにしていると思っているんです。政治家はさまざまな考えを持っているはずなのに、政党に入ったら全ての政策で同じ意見を言わなければならない、というのが気持ち悪い。長い目で見ると、日本にとってマイナスだと思います。
――人物で選ぶとすると、どなたか期待する政治家はいますか?
それがねえ、いないんです。今の僕は、安倍さんが推す人じゃない人を選びます。これは思考停止ではありません。考え抜いた末の結論。安倍政権に対抗できる少しでも当選しそうな人に投票する、という選択肢しかないかなと思っています。「反対」の意思表示は非常に大事です。
――白票も反対の意思表示だという人もいますが。
白票は何の役にも立ちません。(安倍政権は)「白票が増えたねえ。批判票が多いんだねえ。じゃあ、襟を正すか」なんて人たちではないでしょう? 日本人は優しいですよね。お友達を優遇したり、政治を私物化していても、大して怒らない。支持率が下がったとはいえ、一桁になるようなことはないでしょう。本当に人がいい。“美しい国”ですよね。
■日本の本当の美しさとは
――安倍首相の言う「美しい国」と松尾さんの考える日本の美しさは違う?
僕は、日本の本当の美しさって、伝統を大事にして、花鳥風月や春夏秋冬を大切に扱うことだけでなく、ものを無駄にしないとか、弱い立場の人も尊重して、コミュニティーを平穏に保つ知恵を絞るとかだと思うんです。本来は、こうした美しさを愛することこそが「愛国心」なのではないでしょうか。ところが、今の政権は、「美しい国」を標榜しながら、裏腹に、こうした美しさをどんどん壊しています。そして、時の政権に従うことが「愛国者」だと錯覚している人が多いなという気がしています。
(聞き手=本紙・小川泰加)
▽まつお・たかし 1960年、神戸市生まれ。大阪芸術大芸術学部卒業。北新地でDJやスプーン曲げのショーに出演しているところをスカウトされ、芸能界入り。テレビ、ラジオ、舞台、映画、作家、カレー店の主人など多彩な活動を続け、「キッチュ」の別芸名でも知られる。新著に街歩きエッセー「東京くねくね」(東京新聞)を上梓。
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♬ 松尾貴史の話は、本当によくわかりますね。物を言う芸能人ですが、本当に政治に対しての自分の意見なのか、首を傾げたくなる人もいます。
わからないとか、本当にそう思うのかは、別です。様々な意見があっていのですから。
私が友人と話ていて、「この言い方、私も以前してたわ。」という時もあります。つまり真実を知らないと、そういう意見もあると、わかるのです。
そういう時は、無理に説き伏せることはできません。すればするほど、相手は用心深くなるからです。
「やがて、彼女にもわかる時がくるはず」そう思っているのです。