八柏龍紀の「歴史と哲学」茶論~歴史は思考する!  

歴史や哲学、世の中のささやかな風景をすくい上げ、暖かい眼差しで眺める。そんなトポス(場)の「茶論」でありたい。

☆☆☆「あざみ野講座」最終講です!☆☆☆

2020-02-26 10:27:15 | 思うこと、考えること!
 横浜「あざみ野」での日本現代史の連続講座も、2月29日(土)をもって全五講の最終講となりました。
 
 最終講では、日本とアメリカ合衆国との関係をお話しながら、いまの「この国」を覆っている問題についてみなさんとの質疑を中心に対話させていただければと考えています。

 いまの「この国」をめぐる問題といってもあまりにも曖昧ですが、戦後長く続いた「冷戦構造」のなかで、あるいはポスト「冷戦」の時代という時代のなかで、日本という島嶼国家はいかに過ごしてきたのか。
 沖縄問題、米軍基地問題、農産物を中心課題とするTPPの問題、そして改憲や政権を握っている勢力とその抵抗勢力との関係性など、さまざな局面や状況のなかで、一見それは対立構造のように見えながら、そのじつは相互補完、戦後の功利主義的経済欲求を維持するための〝延命〟装置であったのではないか。
 そしてその背後には、強引さと偏見に満ち、杜撰で機会主義的な圧力を行使してきた「USA」という国家権力がみえてくるように思います。
 日本という島嶼国家が、いま直面していて抜けきれない状況を、いかに転換していくのか。もしかして、それはわたしたち自身の生活のありようを問い直す問題でもあるのかなと思わざるをえません。
 「じつはこうだった!」式の暴露的謀略史観的な立ち位置ではなく、はたしていまわたしたちが享受している環境は、そのままでいいのだろうかという問題に立ち向かう「精神=心構えattitude」にまでに至る。そうしたお話しができればと考えています。



 
 

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☆☆☆「池ビズ」講座夏学季〝開講のお知らせ!〟のお知らせ☆☆☆

2020-02-22 11:43:39 | 思うこと、考えること!
  2020年度の講座についてお知らせいたします。

 今年度も昨年度同様に講座を開講します。
 今年度は京都商工会議所の「京都学」講座がオリンピックの都合等で回数が減ったため、その分を講座で補おうと、「二講座」を予定しています。

 概要は、下記のフライヤーflyerをご覧いただければと存じますが、一つは〝時代に杭を打つ partⅢ〟として、今回はおもに丸山眞男から高橋和巳、むのたけじ、鶴見俊輔など戦後の思想家・文学者の歴史意識やその哲学的立ち位置についてお話ししていきたいと思っております。
 「人はなぜ生きようとするのか?」という疑問から、すべての哲学は出発しています。ふつうその疑問は、人びとに意識的に止揚されることはありませんが、道を急ぐなかでのふとした光景や仕事に疲れた空隙のなかで、他者とのさりげない会話のなかから、あたかも井戸から水が漏れ出してくるように人びとの心に浸みてくることがあるかと思います。その意味で、世に称される哲学者や思想家といった人びとと市井を生きる生活人には、なんらの垣根はありません。その疑問に、知識的な処理もまた階級もありません。誰でも平等に、わたしたちはわたしたちの生きていることへの想いを持っているかと思います。
 そうした誰でもが抱く哲学や思想の姿を、歴史のなかでどのように彼ら思想家・文学者は発言し表現したのか。そのことについて、時代性をふくめて丹念にお話しできればと考えています。
 
 もう一つの講座は、〝哀しみの系譜〟という講座です。
 わたしはおもに現代史と日本人の精神史にいろいろアプローチを重ねてきましたが、とりわけ〝抒情〟について、それは日本人の好む情緒である〝侘び寂び幽玄〟のありようとも深く結びつくものですけど、その歴史的な変遷と意味について考えてきました。
 人はなぜ〝悲哀〟という感情を持つのか。それを西欧の哲学が説く〝catharsis〟として捉えきれるのか。また〝浄化〟という心情は、なぜ人びとに「哀しみ」を溢れさせるのか。そうしたことを世阿弥や兼好法師、松尾芭蕉や良寛の〝生き方〟とその芸術哲学から見届けていきたい。
 ほんらい、この講座はこれまで長いあいだ京都商工会議所の講座でお話ししてきましたが、先の事情から果たし得ず、今回はその集大成として真剣に取り組みたいと考えました。
 じつはこの企画は、書籍化の話しが進んでいたのですが、昨今の出版事情の劣化からお蔵入りになり、そこで講座を通じてお話しできればと考えたしだいです。夏学季に一部を秋学季には二部を予定しています。

 二つの講座とも、見栄えは悪く、また難しそうといった印象を持たれるかも知れませんが、文章にすれば難しいこともお話しとしてお聞きいただき、それぞれ疑問点や感想も含めて互いに対話していけば、難しいものにはならないかと思います。現代史も古典もいわばわたしたちの日ごろ思っていることや感情が現れ出たものに過ぎませんし、人びとのありようや生き方に深く通底するものがあるかと思います。

 日時は、おもに日曜日の午前中になっております。初夏に向かうもっともいい季節のなかで、知識を得るということだけではなく、思索のなかで自身を見いだす時間作りができればと思っているしだいです。

 まずは軽やかに、真剣に、そして満ち足りた時間を生きるために、と考えています。
 楽しい講座にしていきたいと思っています。


 

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☆☆☆京都で文化史の講演会を行います!☆☆☆

2020-02-06 00:11:55 | 思うこと、考えること!
   緊急のお知らせです。

 京都で2020年、つまり今月の2月15日に講演会をします。

 テーマは、みなさん高校生だったとき古典の授業でおなじみの、
兼好法師と『徒然草』についてのお話しです。

 とはいっても、兼好法師の生きていた時代の〝歴史〟のお話しです。
 そんな大昔、興味がないとおっしゃる方も多いかと思いますが、『徒然草』がなぜ古典の教科書のメインになったか、ほんとは兼好法師は、京都の人じゃないってこと。
 その他諸々のお話しを、現代風に、しかも人の「生き死に」への透徹した哲学として、お話しいたします。
 〝聞かないという 選択肢はないやろ!〟って感じでやります。

 日時は2月15日午後13時半から約2時間。主催は京都商工会議所です。
場所は京都商工会議所会議室(京都市下京区四条通室町東入 京都経済センター7階)です。市営地下鉄の烏丸線「四条駅」下車26番出口直結だそうです。

 申し込みは、教材その他の都合があり、申し訳ありませんが2月12日(水)まで京都商工会議所検定担当にお電話かファックスでお申し込みください。でも最悪、前日までお電話していただければ、なんとかなるのかな・・・。 
tel:075-341-9765(平日9時~17時) fax:075-341-9795


下記にフライヤーを張っておきます!



 


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歴史は思考する!

2020-02-01 13:45:13 | 思うこと、考えること!
 コロナウィルスの恐怖というか、感染のニュースで何となく気が滅入ってしまう日々になりました。
 この流行病を思うにつけ、14世紀半ば以降、数度起こったヨーロッパでの激発的なペストの流行の歴史を思い起こしています。
 ペストでパニックとなった人びとは、その理性をすべてをひっくり返し、「外」からくる脅威に逆毛を立てて逃れようとしました。余所者への過剰極まる疑心、嫌悪、排除・・・。それらは危機意識の異常な興奮とドロドロに溶け合い、罹患者への過激な差別と嫌悪ばかりでなく、東欧からペスト菌がやって来たというデマが飛ぶと、東側の人間をすべて排除する事態を生むまでになりました。
 それはちょうど数年前の戦禍から逃れてきたシリア難民を〝テロリスト〟だと決めつけ、恐怖から排除しようとした東ヨーロッパの国々の姿にも重なり合うのですが、その際のゼノフォビア(xenophobia)の反知性的ありようも、疑心、嫌悪、排除という「内」なる脅威によってもたらされたものでした。

 黒人解放運動で知られるキング牧師(Martin Luther King,Jr)は、人びとが抱く恐怖について、心理学者フロイド(Sigmund Freud )の説を引いて、「アフリカのジャングルの真ん中で蛇を怖れる」人間と「街中の自分のアパートの絨毯の下に蛇がいるのではないかと怖れる」人間の違いを、前者を正常な恐怖、後者を異常な恐怖と分けて、「正常な恐怖はわれわれを保護してくれるが、異常な恐怖はわれわれを麻痺させてしまう」と述べています(『汝の敵を愛せよ』新教出版社)。
 正常な恐怖は、わたしたちにその対策を考える知恵を与えるけど、異常な恐怖は、わたしたちの「内面」を毒し歪めるものとなるということです。その毒し歪めるものこそが、根拠のない疑心、嫌悪、排除といったものになって現れてくる。

 今回のコロナウィルスの流行は、まずもって中国武漢市の当局者が、十分な対応を怠り、それに加えて中国政府も後手に回り、併せて春節の時期であり、日本政府の対応も腰が引けたようになったことが瑕疵となりました。
 だからといってパニックになってもしかたないでしょう。厄介なのは、中国への差別や嫌中といった「内」なる脅威です。キング牧師の言葉を借りれば、「異常な恐怖」といかに距離を置くかということなのだと思います。

 中世ヨーロッパで起こったペストは、ヨーロッパの全人口の30%~60%が死亡したとまでいわれていますが、結局解決策は、その原因を突き止め、いかに対処すべきかを合理的に導き出したことで、それ以降の流行を押さえつけるかによりました。一番問題なのは、根拠のない恐怖に陥らないことだろうと思います。

 そんなことを考えながら、2月になってしまいました。さてと、ここでわたしもそろそろ冬眠から覚めていかなければなりません。今年は暖冬ですから、少し早めの目覚めにしようかな、そんなふうに思っています。
 そこで2020年度の夏学季の講座ですが、こちらの方は、
現代史である「時代に杭を打つ!PartⅢ」と日本の美意識探訪の「哀しみの系譜PartⅠ」の日程と会場がほぼ決まりました。
 会場はいつもの「池ビズ」(JR池袋駅南口3分)となります。初講日は「時代に杭を打つ!」は4月19日(日午前10時~)、「哀しみの系譜」は4月26日(日午前10時~)です。内容は、このつぎにアップします。

 ところで、つい最近、
朝日新聞出版から出ている会報誌『一冊の本』にわずかながらエッセイを書きました。この本はふつうの書店でカウンター近くに置いている冊子です。一冊消費税込みで110円です。もしよろしければご覧頂ければ、幸いです。
 下に表紙と目次を張っておきます。ご高覧いただければと思います。

 
 
 
 

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