図書館本。
3編収録、表題の「生きる」は直木賞受賞作。
初読みの作家さんでしたが、読み易かった。
もっと楽に生きられたかもしれないのに、
武士としての矜持に苦しむ。
「生きる」
家老より追腹禁止令を順守するよう密約を受け、藩主亡き後生きることを続ける老武士。
生きていればいたで世間からは臆病者と蔑まれ、苦悶する日々を送るが
気丈に生きていく中で、常に胸を張り堂々と白眼を見返すことで、
生きていることを恥じと思わないようになる。
人間の値打ちとは、そんな事ではないのだ。
「安穏河原」
安穏な暮らしにありながら、武士としての信念を貫いた結果、家族は零落した。
武士は食わねど高楊枝、、それではとても生きてはいけない。
妻は病臥し追い詰められて、娘を遊郭に売った父の悔恨。
しかし娘はその父の教えを守り、遊女に落ちぶれても凛として生きる。
父は娘の様子を聞くために、仕事で知り合った若い浪人に金を工面しては娘のもとに通わせるのだ。
自分で娘を売っておきながら、、
結局、娘を救い出すには自分の命と引き換えにするしかなかった。
「早梅記」
出世の為に献身的な側女を捨てた。
重職にまで上り高禄を得、望みを果たした今、
隠居の身になり、残ったものを見た時、これでよかったのか・・と
我が人生を振りかえり、犠牲にしたものに思いを馳せる。
都合よく捨てておいて、勝手だ。
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