岩波新書「新自由主義と教育改革〜大阪から問う〜」を読了しました。久しぶりに真面目な本をしっかり読んだ気がします。筆者は大阪大学教授の高田一宏氏です。
新自由主義の教育とは、欧米を中心に1980年代以降台頭した教育改革です。競争原理や成果主義を主軸とするこの改革は、海外でも「公教育の衰退」など様々な弊害を生んできました。日本国内でも見直しも進むなか、大阪におけるこの改革は勢いを増します。2008年に就任したの橋本知事が「教育非常事態宣言」を発出して教育改革に取みはじめ、主犯を「ダメ教員」と名指ししたことや、維新の会と教育委員会の抗争など、ボクの記憶にも当時のことが残っています。
その後、知事が代わっても継続されてきた大阪の教育改革は、学力による子ども・学校の選別、教員への管理強化などの政策を進めてきました。これがもたらした問題を丹念に検証し、改めて教育の意味を問う…というのが本書です。著者は批判的な立場で、データに基づいて大阪の教育改革を評価しています。
本書は大阪の事例を取り上げていますが、事例報告に終始しているわけではありません。全国的に程度の差こそあれ見受けられている問題が、本書の中では示唆されていると思います。教育界における「選択」や「競争」の強化の中で、何か釈然としないこと、「気になる話題」、「心に刺さる話題」について論述されています。多くの人が読んでみるべき内容が含まれていると思いました。