”湊かなえ”の「人間標本」(角川書店)を読了しました。”湊かなえ”の小説は今までにも何冊も読んでいますが、今回の「人間標本」にはビックリしましたね。今までの彼女の作品とは全く異なる作風で、ちょっと(いや、かなり?)ボク的には違和感がありました。終盤での「どんでん返し」には、さすがだなぁ…とは思いましたけどね。ストーリーはこんな感じです。
物語は手記から始まる。高名な画家の息子ながら画才に恵まれず、蝶(ちょう)の研究の道に進んだ男が亡父のアトリエに集った5人の画家の卵を前に思う。〈美しい姿を永遠のものにしたい〉。手記の中身は、美少年を蝶に見立てて標本にしたうえ、最後は息子に手をかけた犯罪者の告白だった。
おどろおどろしい題名そのままに、美少年が次々と標本にされていく物語です。途中は読むのがきつい描写がたくさんあって、読み進めるのが少々しんどかったけど、続きが気になって気づいたら読み終えていました。そこらあたりは「さすが”湊かなえ”だ!」なんですが、やっぱり「人間の標本を作る」というその猟奇的な内容や描写には嫌悪感を感じ、「こんな小説をまた読みたいか?」と尋ねられればボクは「No」と答えるでしょう。
まぁでも「イヤミス小説(※)」っていうジャンルもあるそうですから、そういう意味では「”湊かなえ”の策略にまんまと嵌められた」ということなのかもしれませんね。
(※)イヤミスとは、ミステリー小説の一種で、読んだ後に「嫌な気分」になる小説のことをいいます。殺人などの事件が起こっても、最後には事件解決! 読者がスッキリと満足感を得るのが今までのミステリー小説に多かった傾向でした。しかしイヤミス小説は、事件のことだけではない人間の奥に潜む心理などを描写し、見たくないと思いながらも読み進めてしまう、嫌な汗がたっぷり出るような後味の悪い小説のことを指します。