よほど旅慣れた人なのであろうか。
釧路から根室に向かう「花咲線」のなかでのこと。
何カ所かで、おもむろに立ち上がったと思うと、電車の先頭に行って運転席のわきから写真を撮る。
また、「厚岸」駅では停車寸前でデッキの方に向かったかと思うと、名物「かきめし弁当」を手に戻ってきた。
どこに撮影ポイントがあるのか、厚岸の駅弁を買うのはどうするのか、などについてすべてご存じの方のようにお見受けした。
花咲線に乗るのは初めてである。
一両編成のディーゼルカーの両側は、湿原・原野・広葉樹が色ずく森林・海辺など目まぐるしく変化する。
二時間半弱の乗車の時間、車窓の景色に飽きることはなかった。
「根室駅」の一つ手前、「東根室駅」は日本で一番東にある駅である。
ホームには、それを示すポールが立っている。
さらにもうひと区間で、終着「根室駅」に到着する。
こちらも負けてはいない。
ここは、「人のいる駅」としては日本で一番東になるのだそうだ。
根室駅が花咲線の終点であり、ここまで走ってきた列車は折り返して釧路行きとなる。
駅を出たところにある根室市観光インフォメーションセンターでは、「最東端駅 東根室 到着証明書」を無料でもらえる。
きれいな写真入りの、ほぼハガキ二枚分ほどの大きさのものであり、うれしい記念になる。
鉄道ファンは、乗り鉄・撮り鉄・録り鉄・飲み鉄などいろいろであるが、私はそのどれでもない。
私にとって鉄道は移動の足でしかないが、この「花咲線」は想い出に残る路線であった。