富山湾に面する「海王丸パーク」は広大な公園になっていて、帆船「海王丸」が保存され公開されている。
ここを訪れた日は、誰もが「今日はいい天気ですね~」と言葉を交わすほど気持ちがいい一日であった。
晴れ男に任ずる私も、面目を保てたというところである。
海を跨ぐ「新湊大橋」は海王丸を見下ろす位置にあり、車道と歩道が二層になった構造をしている。
エレベータで海上47mの2階まで登り、歩いて対岸に渡ることができる。
何回か富山を訪れているが、こんなにきれいに立山連峰を見ることができたのは今回が初めてである。
海王丸は、昭和5(1930)年2月14日に進水した大型の練習船で、その美しい姿から「海の貴婦人」とも称されている。
11月7日(日)は、海王丸の今年最後となる総帆展帆(そうはんてんぱん)の予定日であった。
総帆展帆は今年10回予定されていたが、多くが中止になったようである。
もちろん、29枚の帆が全部広がったあの貴婦人の姿を見たかった。
今回は、10枚ほどであったが帆が開き、90歳を超す彼女の美しい姿を見ることができた。
全長97mの船体は、甲板に立つと船の大きさがわかる。
最後尾にある舵輪はとても大きなもので、2人、あるいは4人で廻すという。
メインマストは海面から47mある。
帆を張るためのロープが絡み合うことはないのだろうか。
順路に従い船内を見学していると、時折「キンコーンカーン」と鐘の音が聴こえた。
もともとこの鐘で時刻を知らせたもので、建造当時の鐘が下げられているという。
「海王丸」が進水した日はバレンタインデイの2月14日に当たり、それにちなんでか恋人たちが愛の鐘を鳴らすらしい。
結婚後50年、我々が鳴らした鐘の音も「金婚」(キンコン)と、甲板を吹く風に乗って流れて行った。
控えめに、小さな音で。