小さかったころ、夏休みにはセミやトンボなどの昆虫を捕るのが楽しみだった。
今も昔もそれは変わらないようだ。
公園や遊歩道では、朝から、虫捕り網をもった子たちの声が聞こえる。
私の子供の頃は「物」のない時代で、昆虫採集用の網など買ってもらえる子は少なかった。
母親が「古くなった蚊帳」を裁断して網を縫ってくれた。
円形にした太めの針金にその網を括り付け、竹竿の先にセットすれば捕虫網の完成だ。
そんな手製の捕虫網でも手にしたことはうれしかった。
仲間たちと、そんな網を振って走り回ったものである。
ただお盆の間だけは、大人たちからは「虫を捕ってはいけない!」と言われていた。
子供たちはその通りにしていた。
「ご先祖様が戻ってきているお盆には、殺生はいけない」ということだったように思う。
暑い毎日、アタマの上からは、うるさいほどのセミの声が降ってくる。
思わぬところで、脱皮したばかりのセミの殻が見つかることもある。
セミの一生は、地上に出てきてからは一か月あるかないからしい。
このセミも体全体を使って、大きな声で鳴いているものと信じよう。