自律的労使関係制度の確立に向けて
2011.12.21
東日本大震災からの復旧復興を進めるための第3次補正予算案などを審議・成立させた第179回臨時国会が12月9日に閉会しましたが、郵政改革法案や派遣法改正案などの重要法案、国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案(以下、「給与特例法案」という。)と国家公務員制度改革関連4法案(以下、「改革関連4法案」という。)の両法案の取り扱いについては、来年の通常国会に先送りされました。
私たちは、本年5月、政府から提案のあった平均7.8%にも及ぶ月例給の引き下げと一時金10%一律削減を主な内容とする給与の削減について、極めて厳しい内容の提案であるものの、東日本大震災の発災により甚大な被害を受けた「被災者・被災地と共に歩む」との決意を胸に、当該提案を受け入れることを表明し、5月23日に政府と合意しました。
これは、現行法制度を越えた極めて異例な措置であるものの、自律的労使関係制度(=労働協約締結権付与)を先取りすると政府自らが表明して、労働組合に対して給与削減を提案、その労使合意に基づき法案を提出し成立を図ることを約束したものです。
現状、私たち公務員労働者には、憲法上保障されている協約締結権を含む労働基本権が大きく制約されており、その代償機能としての人事院勧告制度が措置されていますが、今回の政府提案はこれを乗り越え、労使合意(=実質的な労働協約)に基づき労働条件にかかわる法案を提出し、成立を期すことによって労働条件を決定する仕組みに移行することが提案され、合意されたものであり、来るべき自律的労使関係制度の試金石になるものと確信したからに他なりません。
これにより、政府は6月3日に給与特例法案と改革関連4法案を閣議決定し、先の通常国会に提出したものであり、政府が自ら提案し労使で合意した以上、両法案を一体で処理することは政府の責任であり、論理的にも切り離すことは考えられません。
第177回通常国会や第178回臨時国会では、残念ながら両法案とも継続審議となり、第179回臨時国会において、給与特例法案の先行処理や人事院勧告(▲0.23%)を実施した上で給与特例法案も処理する等の動きもありましたが、これまでの経過を踏まえれば、労働基本権の代償機能たる人事院勧告をも越えて、労使の合意によって労働条件が実質的に決定される枠組みに労使とも一歩踏み出したわけですから、政府与党が両法案の一体処理を期すべく国会に臨むことは当然であり、私たちが両法案の一体処理を求める理由もここにあります。この点については、組合員のみなさんとの共通認識、意思統一を改めてお願いします。
なお、両法案の処理が越年となり、改革関連4法案に自民・公明などが反対している参議院での「ねじれ状態」を踏まえると、その処理の行く末は不透明でありますが、政府与党に対しては次期通常国会で両法案が成立するよう強く求めるとともに、連合、公務員連絡会に結集し、国公産別としての国公連合の主体的役割の強化、野党対策を含めた政治・国会対策をより強固に進めていくことが重要となります。
何よりも給与特例法案のみが処理されることがないよう取組みを強化するとともに、震災復旧復興に向けた「被災者・被災地と共に歩む」として、厳しい給与削減に理解をいただいた組合員の尊い思いを大切にしながら運動を進める必要があります。
今、マスコミや心ない国会議員からは、これらの経過や組合員の尊い思いとは別に、あたかも「社会保障と税の一体改革の露払い」とばかりに、増税のため国家公務員給与をスケープゴートにしようとする論調や宿舎問題に代表される公務員バッシングが横行していますが、本質を見極めない表層的な論議には、組合として毅然とした対応をとる必要があります。
このことを改めて組合員のみなさんと共有しながら、仮に改革関連4法案の成立が見込めない事態となれば、5月の労使合意は破棄されたものと看做せることから、私たちとしては両法案とも廃案にする、そして現行制度を越えて行った政府提案が実現できないのであれば、一度これをリセットし、改めて自律的労使関係制度の措置について労使交渉による合意を目指すこととし、合意に少なからず時間を要するのであれば、当面の措置として、現行制度に基づいて労働条件を決定しておく、といった選択肢も視野に戦略を検討していく必要があると考えます。
いずれにしても、来年早々に開かれる通常国会での審議が、両法案の帰趨を決める重要なターニングポイントとなることは言うまでもありません。本年5月の厳しい判断、「被災者・被災地と共に歩む」とした組合員の尊い思いをしっかり受け止め、中長期的には組合員の皆さんの利益につながるとの強い信念、確信の下、両法案が同時成立するよう中央本部としてナショナルセンター、産別に結集しつつ、みなさんの先頭に立って運動を進めたいと考えます。
情勢は時々刻々と変化しますが、タイムリーな情報伝達と共有に努めつつ、あらゆる変化にも対応できるよう各級機関における運動態勢の構築をお願いするとともに、引き続きの意思統一と運動への結集をお願いし、本年を締め括るにあたって、自律的労使関係制度の構築に向けた中間的総括とさせていただきます。
全財務労働組合
中央執行委員長 大 谷 貞 徳